[サンフランシスコ 12日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード理事は12日、FRBは経済成長を減速させることなく今後1─2年にわたり金利を引き上げる余地があるとの認識を示した。

理事はデトロイト・エコノミッククラブで行った講演で、経済が底堅く成長し、失業率が3.9%、インフレ率もFRBが目標とする2%の水準にある中、今後1─2年は段階的な追加利上げが適切となる公算が大きいと指摘した。

ブレイナード理事の発言は、8月のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演に同調する内容だが、理事はもう一歩踏み込み、一部の当局者が来年の利上げ打ち止めが適切と考えるのに対し、「向こう1─2年」にわたり利上げ局面が続く可能性があると考える背景に詳しく言及した。

ブレイナード理事は、トランプ政権の減税や政府支出が中立金利の水準を押し上げていると分析した。中立金利が上昇すれば、中銀は景気を減速させることなく利上げを行う余地が広がる。

理事は「財政刺激策の効果が予想され、金融情勢も成長を支える状況の中、短期的な中立金利はさらに幾分上昇する公算が大きく、一定期間は長期的な均衡金利を超える可能性がある」と述べた。

その上で、FRBが四半期ごとに公表し、金融政策に「関係するベンチマーク」となっているのは短期的な中立金利で、長期的な予想ではないと指摘した。

長期的な中立金利に関するFRBの最新の予想は、現在の政策金利を約1%ポイント上回る2.9%。一般的には、金利がこの水準を超えると金融政策が成長を損なう方向に作用するため、これがFRBの利上げの上限になると考えられている。

ブレイナード理事の分析は、現在の利上げ局面が予想より長く続き、利上げが打ち止めとなる金利も予想より高い水準になる可能性があることを示唆している。

一方、セントルイス地区連銀のブラード総裁は、2008年の金融危機後の経済の変化を踏まえると、低失業率や高い経済成長率がインフレ加速につながるとは考えにくいため、FRBは利上げを停止すべきだとの考えを示した。

トランプ政権の法人減税については、生産性の伸びを長期的に押し上げ、米経済の持続可能な成長に寄与する可能性があるとの認識を示した。

ブレイナード理事は対照的に、減税の効果について質問を受けると、生産性の向上や投資拡大につながるかどうか判断するのは時期尚早だと答えた。

FRBが12日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、貿易問題を巡る懸念から一部国内企業が投資の縮小や先送りといった措置を取っていることが示された。

輸入関税の影響はさほど大きくないとしながら、製造業を中心に投入価格が押し上げられているとも分析した。

ブレイナード理事は、貿易摩擦を巡る企業の懸念は今のところ経済に大きな影響を及ぼしていないとの認識を示した。

緩和的な金融状況や労働市場の引き締まりが上向きリスクとなる一方で、貿易問題を巡る不透明感が下向きリスクをもたらすと指摘。ただ現時点で、関税引き上げに伴い物価や信頼感に「目に見える」影響は及んでいないとした。

*内容を追加しました。