【哲学】世界の三ツ星レストランを魅了する「ハーブ農園」

2018/9/13

スターシェフや投資家が訪ねる

パスカル・バルボ、アラン・パサール、ベルトラン・グレボー……。この名前を見て、おお!と思う人は、相当なグルマンだろう。
それぞれ、パリで予約が最も困難なが三ツ星レストラン「アストランス」、1996年から三ツ星を守り続けている「アルページュ」、美食家や料理人の間でも評価の高い一ツ星レストラン「セプティム」のシェフだ。
世界的に名を知られる彼らのようなスターシェフと交流のあるファーマーが、広島にいる。広島空港から車で北に向かって約30分。
山と田んぼに囲まれた日本昔話のような景色が広がるその場所に、そのファーマー、梶谷ユズルが営むハーブ農園がある。
ところで、なぜ農家でも生産者でもなく「ファーマー」という言葉を使っているかというと、梶谷自身が「スーパースターファーマー」と名乗っているからだ。これを聞いただけで、梶谷がいわゆる一般的なイメージの農家、生産者ではないことがわかる。
スーパースターのもとには海外からの来客が絶えない。アラン・パサールやベルトラン・グレボー、ほかに何人ものスターシェフが、梶谷の農園に訪れている。
訪ねてくるのは、シェフだけではない。例えば香港の投資家は、こんなオファーをした。
「君が育てているものを全部売ってくれ」
ニューヨークから来たモルガン・スタンレーの投資家は、こんな提案をした。
「次は食に投資をしたいと思っている。君に投資するから、上場してほしい」
これはジョークではなく、広島の山間地で繰り広げられているリアルな会話だ。
なぜ、多忙なスターシェフたちが日本滞在のわずかな隙間を縫い、梶谷を訪ねるのか。海外の投資家たちは、何にひかれているのか。