フライ返しも自ら交換、画像認識でハンバーグを焼くAIロボット

2018/9/4

ロボット開発者が注目する理由

ハンバーガーはアメリカ人の常食だが、おいしいハンバーガーほどその場で注文ごとに焼いてくれるものだ。
店内に入ると煙が漂い、ジュージューという音も聞こえる。ファストフードではない、五感に訴えるそうした感触も味わいに重要や役割を果たしている。
だが、これを調理する人々はどうだろうか。
ハンバーガー店で最もつらい仕事は、ハンバーグを焼く係である。まず熱い、煙たい。そしてやっていることが、立ちっぱなしでずっと同じだ。1日の仕事が終わると、自分がハンバーグになったかと思うほど身体に臭いが染み込んでいるだろう。
そういうわけで、ハンバーグのグリル係は数週間も長続きすればいいほうだとも言われる。
そんなハンバーガーは、ロボット開発者が目をつける格好の舞台となっていて、現在サンフランシスコとロサンゼルスでタイプの異なるロボットがハンバーガー作りに挑んでいる。

3D、温度、画像認識の機能を持つ

サンフランシスコのハンバーガーは、ベルトコンベヤー式でハンバーガーの具を載せていくタイプのもの。人間が調理の過程にほとんどタッチしない。一方、ロサンゼルスのハンバーガーはAIを利用して、人間と共同作業をするタイプのものだ。
このロサンゼルスのハンバーガーロボット「フリッピー」は今年3月にデビューし、不具合を調整した後、復帰。そして、今夏からはドジャースタジアムでフライドポテトやフライドチキンも揚げて人気者になっている。
人間の横に立って共同作業をするタイプの厨房なら、今後もいろいろなところに出現するかもしれない。
ハンバーガーチェーンのカリバーガーで最初に導入されたフリッピーは、先にフライ返しがついたロボットアームだ。厨房スタッフは生のハンバーグを鉄板の上に置くだけ。フリッピーには高性能のカメラがついていて、画像からAIが調理状況を判断する。
この料理AI「ミソAI」は、フリッピーを開発したミソ・ロボティクスが独自に開発したものである。3D、温度、画像認識の機能を持ち、キッチンのスタッフに調理の状況を伝える。

AIが高めるロボットの作業の質

例えば、形状からそれがハンバーグなのかチキンなのかを認識。焼き具合を認識して、裏返すタイミングを判断してアームを動作させ、チーズを載せるタイミングを測ってスタッフに知らせる。出来上がったと判断すれば、鉄板からハンバーグを持ち上げ、横に配置された容器に置く。
さらに手が込んでいるのは、生肉と焼きあがったハンバーグのためにはフライ返しを入れ替え、またフライ返しが汚れたら洗ったり、鉄板の上を拭いたりすることだ。
同じことを繰り返しているように見えるが、いい加減な人間のスタッフより正確に根気強く作業を続けてくれ、しかも最も大変な仕事を分担してくれる。
ロボットアームと言えば、工場などの製造現場で延々と続く作業を行う機械という印象が強いが、そうしたロボットによる作業の質もAIによって変化しているということだ。
ミソAIはクラウドから利用できるようになっており、ハンバーガーチェーン傘下の店で一斉に利用していたり、あるいは扱う食品が増えていったりすると、どんどん微妙な判断ができるようになるのかもしれない。
油まみれの厨房も、AIの活躍の舞台になっているのである。
*本連載は毎週火曜日に掲載予定です。
(文:瀧口範子)