メルカリ&メルペイ、次の一手はSMB営業組織

2018/8/28

月間利用者1075万人、月間流通額300億円超がすでにある強み

メルカリが金融関連の新規事業へ本格参入するために、2017年に立ち上げた新会社メルペイ。掲げるのは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」こと。
キャッシュレス社会の牽引にとどまらず、さらなる金融の社会インフラをアップグレードするのがミッションだ。
その成功を実現させるため、2018年7月に法人利用基盤の拡大を目的として新たに設立した、メルペイの営業部隊となる新会社・メルペイコネクト。全国の小売店や飲食店など小規模事業者にメルペイを導入してもらうための営業活動を実行する。
すでに多くの企業がペイメント事業に参入しているため、メルペイは後発組であることは否めない。
しかし、後発だからこその強みも発揮できると、メルペイとメルペイコネクトの代表取締役である青柳直樹氏は自信をのぞかせる。それを可能にするのが、メルカリの「膨大なユーザー数と流通額」という強み。
「メルカリはすでに国内約7000万ダウンロード、月間利用者数約1075万人という膨大なお客さまを抱えています。しかも、流通額は月300億円超。メルペイコネクトの営業戦略は、こういった利点を軸に展開していくつもりです」(青柳氏)
メルペイコネクトは、全国の地域に根ざした小規模事業者への営業活動を展開する。ともすれば、ドブ板的な営業手法なのではないかと思われがちだ。しかし、すでにメルカリユーザーは全国各地に存在するため、かなり戦略的にできることがわかる。

メルカリの売上はメルペイに。チャージしないで使えるお財布

あらゆるプレーヤーによる「○○ペイ」が数多く登場している今、人は新たな「○○ペイ」を使う明らかなメリット、必然性がなければ、試してみようと思わないのが現実だ。
導入するお店側にとっても、端末が増えてオペレーションの負担が増すだけで、直接売上を伸ばす施策には結びつかない。
営業戦略を統括するメルペイコネクト取締役の山本真人氏は、「キャッシュレスは一度利用すると、その便利さから使い続けるようになります。しかし、最初の“使ってみる”行為そのものが、大きな壁なんです」と語る。
実は、山本氏はNTTドコモやGoogle、Appleなどを渡り歩き、決済サービス事業での経験を積んだキーマン。さらに、Googleでは日本法人立ち上げ期に“営業成績世界ナンバーワン”を獲得した実力の持ち主でもあるのだ。
山本氏は「次にテクノロジーで世の中を変えるなら、金融の領域。決済というコミュニケーションをいかに円滑にするかが鍵だ」とフィンテックの可能性を感じている。
「メルペイは、メルカリでの売上を決済の源泉とすることができるため、近くに使える場所があるなら、とりあえず使ってみようとなるはずです。
他の決済サービスはクレジットカードを含め給料口座とひも付くので、これまで現金で支払っていたものをキャッシュレスに置き換えているわけですが、メルペイの場合は、銀行口座からのチャージだけでなく、メルカリでの売上が自動的に入金されます。
これは、メルカリで売らなければ手に入らなかった臨時ボーナス。すでに毎月300億円以上が流通しているため、お店側にとっても売上を伸ばすことにつながるはずです。これこそ、ほかの決済サービスにはない、メルペイが圧倒的に優位な点。
メルカリのお客さまがたくさんいる地域は、つまりは生み出したお金を使いたい人がたくさんいるということなので、お店側にも非常に大きなメリットと感じてもらえるはずです」(山本氏)
ユーザーからしても、売上の振り込み申請をして銀行口座から引き出すなどの手間をかけることなく、「メルカリで売れたお金がメルペイにあるから、今日のランチはメルペイで払おう」と、少しお得な気分でメルペイを使うことが可能になる。
しかも、小規模店のオーナー自身がメルカリユーザーであるケースも多いため、オーナーが使う側の当事者でもある。それは、メルペイコネクトが事業を展開していく上で強力な後押しとなるだろう。
青柳氏は「メルカリの売上金を使える場所が増えれば、メルカリをもっと利用しようという人が増えると思っています。この好循環の輪を広げていくのが、まさにメルペイコネクトの重要な役割なのです」と話してくれた。

営業×テクノロジーで、よりリアルな価値を

メルペイコネクトはメルカリ初となる営業組織だが、そこはメルカリならではの強力なテクノロジーの専門部隊が後押しする。
テック部門を束ねるメルペイの鈴木伸明氏は、自身が創業したフリマサービスをメルカリに譲渡し、メルペイには2018年にジョインした。
「メルペイコネクトは、お店側に喜ばれるサービスの導入だけでなく、支払いが行われるところまでを想定して、より細かく深くコミットしていきます。
加盟店へのヒアリング、データ活用、メルペイを使うことでの付加価値など、そのロードマップを丁寧につくることが大切。支払い体験を誰にでもわかりやすくして、お店の売上が上がるシステムを営業と一緒に作っていく。それが我々のミッションです」(鈴木氏)
営業統括の山本氏も、「営業とテックがタッグを組んで、スピーディに事業展開できるのは、日本企業だからできること。外資企業だと、お金の支払い方で日本では当たり前のことでも、海外では通用しないケースは多々あり、それが開発を足止めすることがよくあります。しかし、メルカリグループは日本企業であり、日本に適したサービスをスピーディにつくれる強みがあります」と語る。

創業メンバーとして、ゼロから新しい社会をつくってほしい

立ち上げて間もないメルペイコネクトは、メルペイの経営陣が参画しているのみで、社員はまだ0人。これから次期社長や役員候補になる、多くの創業メンバーを採用し、最強の営業チームを作っていく。
とはいえ、営業でキャリアを積んできた人にしてみれば、メルカリが本当に営業組織をつくれるのかと疑いを持つかもしれない。その疑いを晴らすのが、組織づくりのプロとしてメルペイに参画した取締役の横田淳氏だ。
サイバーエージェントで16年間、経営本部長、執行役員、AbemaTVの取締役等を歴任し、組織づくりを一手に担ってきた。
現状のメルカリにはない営業文化と、メルカリが築いてきたテックカンパニーのカルチャーを融合させながら、テクノロジーを活用した本質的で社会的価値の大きな営業組織をつくると意気込む。
いずれ拠点の全国展開も視野に入れているため、組織規模はメルペイをはるかに超えるものにするそうだ。
メルペイは決済サービスの会社で終わるつもりはない。目指すのは、もっと大きな社会インフラの変革。
「メルペイコネクトという新しい会社をゼロから立ち上げ、社会インフラをつくっていく。この創業期を共にドライブしてくれる方を求めています。
ぜひ、営業組織をマネジメントして社会にインパクトを与えてきた方や、長年培った営業スキルを新たな価値創出のために使いたい方、地域に強みを持つ方に来てほしい。
メルペイコネクトを立ち上げ、戦略的に全国の小規模事業者にメルペイを広め、まだ見たことのない世界を一緒につくりあげましょう」(横田氏)
(取材・編集:田村朋美、文:工藤千秋、イラスト:九喜洋介、写真:岡村大輔)
※イベントへの応募は締め切らせて頂きました。