【求人掲載】一休CEO榊淳が語る、つらくても楽しいと思えるマインドの源流

2018/8/24
第二創業期を迎えたレストラン・宿泊予約事業のトップ企業、一休。2016年、ヤフーとの買収劇以降、一休のリーダーを任された榊淳氏はどんなトライをし続けているのか。一休の社外取締役でヤフー常務執行役員の小澤隆生氏が#1で「頭脳明晰でデータに強く、ユーザーファーストという想いが非常に強い」と絶賛した榊氏。
その背景にある強いマインドの源流とは? さらに一休の「特別感の醸成」という戦略の裏側、一休が若手でも高難度のチャレンジができる組織である理由を伺った。

ヤフー買収劇から2年。第二創業期を迎えて

ヤフーのM&Aから約2年が経ちましたが、スタッフも今では300人を超え、一休は第二創業期を迎えています。
そもそも私が一休に関わったのは、森正文社長の時代にコンサルタントとして担当したのがきっかけ。当時のことは今でも鮮明に覚えています。
コンサルで関わる企業はたいてい「自分たちは変わらないままで、事業を伸ばせる方法を考えてください」という姿勢が多いのですが、一休は違いました。
真面目に一生懸命働く人が多く、サービスに関する知識も深い。多くの社員が「変わりたい」と切実に思っているのがひしひしと伝わり、「これは伸びるな」という直観がありました。
その後、ヤフーのM&Aがあり、私が副社長から代表取締役になったのですが、去りゆく社員もいたり、残ってくれた社員もいたり──。
さまざまな葛藤とトライ&エラーを経て今ここに至るのですが、つらくても楽しいと思えるマインドの源流は、さかのぼると20代、30代の経験が大きかったように思います。
私は20代後半にスタンフォード大学大学院のコンピューターサイエンス学科で学んでいたのですが、当時は優秀なだけでなく、とにかくコミュニケーション能力の高い人が多いことに驚きました。
しかもスタンフォード特有なのか「できないことなんてない!」って思っている自信満々なヤツばかりで。それにものすごくポジティブなのです。
スタンフォード大学大学院修士課程修了時の榊氏。2年間、コンピューターサイエンスを学んだ
たとえば、生徒100人の授業でトップ3が発表されたとしましょう。トップ3以外の97 人は全員、「自分は4位だ」って思っていますから(笑)。
授業は想像を絶するくらい大変でした。「来週までに『eBay』のサイトを作れ」と宿題が出たり、データベースの授業では「マイオラクルを作れ」という課題が出されたり。通信の授業ではFTTPじゃなくて、自分のプロトコルを作らされました。

つらくても楽しいのは、仕事が好きだから

その後、しばらくしてボストン コンサルティング グループ(BCG)で働くことになるのですが、最初の2年半は苦労の連続でした。それは単純に私の能力がなかったからだと思います。結果の出せない自分に「俺、終わってるな……」と絶望しました。
たとえば、社内でディスカッションしていると上司から突然「お前、黙っててくれる?」「雑音だから黙っておけ」と言われたり。自分が呼ばれないミーティングが設定されてたり……ということもありました。
BCG時代の榊氏。ギリギリの状態まで追い詰められていた
そうした状況が2年半続き、ある日、自分が作った資料をクライアントがいたく褒めてくださって、「あれ? 俺、できるようになっちゃった?」みたいな感じのブレークスルーがありました。
浮き沈みはありましたけど、ただひとつ言えるのは、結果が出せない時代でも、とにかく私は自分のやっている仕事が好きだったということ。
本当に楽しかったんですよ。与えられるテーマも好きでしたし、それが創出する価値も大きかった。クライアントが解決したいと思っている論点を的確に捉え、提案する。ものすごく楽しい壮大なクイズを、いつも頂いている気持ちでやっていましたね。
唯一つらいと思ったのは睡眠時間が取れなかったこと。夜中3時にオフィスを出るのはザラで、朝9時前には出勤する──そんな生活でしたから。慢性的に睡眠不足のような状態でした。
さすがに今、こういう経験は一休ではしていませんが(笑)、これから一休の仲間になってほしい人は、つらい時でもその状況を楽しめる、ポジティブな人の方がいいと思っています。

圧倒的成長を遂げ、活躍できる人のポイント

一休はオンラインの予約市場において「高級」をキーワードにした非常にユニークなポジションにいます。
「こころに贅沢な体験をお客様に提供する」というのが、一休がやりたいこと。
エグゼクティブの方にお会いすると「一休、使ってます」ってよく言われます。でも私たちのサービスがどれくらいのお客様の数に使われているかというと、せいぜい数百万人程度ですが、その数百万人の方たちが、ものすごく頻繁に利用してくださっている。
あるお客様からは、「会社の昼休みに一休サイトを見ていることが、すでに私の旅行の始まりなんです」と言われて感激したことがあります。
これが一休というサービスの価値だと思っていますし、こうしたお客様の想いを実現するには、その想いを成し遂げるために努力やチャレンジをいとわないスタッフの力が重要なんです。
一休で力を発揮して活躍している人をひと言で言うと、ユーザーファーストな人。すなわち「お客様のサービスを良くすることに力を尽くせる人」です。
実はユーザーファーストに行動するということは、当たり前のように聞こえますが、非常に難易度の高いことです。上司に評価されることや、目標設定シートの数字を達成することばかり考えていたらユーザーファーストはできない。
組織の中ではなく、ユーザーに対して自分がどういう価値を提供できるのかを求道できる方が圧倒的に成長しますし、活躍しています。

20代でも「役員の右腕」になれる理由

一休の組織は、年齢や学歴などは関係ありません。20代、30代でも「役員の右腕」的な責任ある立場になることはよくあります。
なぜなら、年齢やポジションを気にせず、言ったことだけをベースにディスカッションができるカルチャーがあるから。
その場で何を言うかのみに着目したヒエラルキーの作り方っていうのは、コンサルファーム出身の私にとって一番心地良いやり方です。
シンプルに、お客様にいいサービスを提供したいので、有益なディスカッションができる方であれば、年齢問わず最前線に立つことができます。
今の若者は、持っている能力が素晴らしい。データサイエンティストの才能があるばかりか、コミュニケーション能力も持ち合わせている人も多い。私の学生時代でいえば、コーディングができて優秀な人はどちらかというと合コンが苦手で内向的な方が多かったから。
今はプログラミングもできるし、合コンも強いといったコミュニケーションが得意な若手が結構いますよね。合コンはコミュニケーション能力のベースなので、ビジネスに対する感度も高かったりする。
今、私の周りにはデータサイエンティスト、マーケティングができる人、ストラテジックができる若手を配置していますが、みんな20代です。
実際にCHROの植村弘子氏(中央)の右腕として活躍している井上尚也氏(左)。営業推進部の最前線で活躍する平玄太氏。ともに26歳だ
社員の採用においてよく「ビジネスの素養は必要か」という問いがあるんですけど、私は「あったらいいかもね」ぐらいに考えています。ただ、あるかないかは確かめます。その方法として、面接の場でケーススタディを出します。
たとえば、リアルなうちのビジネス状況をお見せして、「新規顧客の売り上げがこうなって、リピーターの売り上げがこの場合は、あなたならどういうふうに事業を成長させるの?」など。
事業に目が向いている若手は、実務の経験がなくてもいい反応しますよ。
前職のBCGでも、元南極の探検隊、元アナウンサー志望、元医者など、ある分野に精通しようと努力してきた方を多く採用していました。
結果的にその分野で自己実現できなかったとしても、努力して成し遂げようとしてきた事実や情熱はいろんな局面で生かされます。
余計なプライドを捨てて、自分で「失敗しちゃったんです」と明るく言える人は、実はすごくポジティブな人間だと思います。
高い予算を掲げて、越えられない人間と、低い予算を掲げて悠々と越える人間はどっちがカッコイイのか。
失敗者はある意味高い壁に向かった証拠でもあり、越えられなかった現実を誠実に受け止めた人でもある。ましてや他人に「自分は失敗者です」と堂々と言えることは本当に素晴らしいことです。
そういうチャレンジ精神のある方が一休にジョインしてくれたらうれしいですね。
(編集・構成:奈良岡崇子 取材:浦澤修 撮影:大畑陽子 デザイン:九喜洋介)