[東京 2日 ロイター] - ゆうちょ銀行<7182.T>の預入限度額の緩和を巡る議論について、決着が今年秋以降にずれ込む公算が大きくなってきた。郵政民営化委員会と金融庁の見解対立が続いていたところに、限度額緩和に積極的な野田聖子総務相のスキャンダルが浮上。自民党総裁選後の内閣改造で総務相が交代するか見極めるまで、結論に至るのは難しいとの見方が強まっている。

<影を落とす野田氏のスキャンダル>

「野田総務相はもはや『死に体』だ。交代するまで、限度額の議論は動かないのではないか」――。ある郵政関係者はこう漏らした。

郵政相経験者でもある野田氏は、ゆうちょ銀の限度額を巡る議論を主導してきた。郵政民営化委員会が3年に1回行う郵政事業の検証に、重要な検証項目として限度額の扱いが入ったのも、野田氏の意向が働いたとみられている。国会会期中に民営化委に結論を出すように求めてもきた。

しかし、野田氏の事務所関係者が、金融庁調査の対象である仮想通貨関連会社の関係者を同席させた上で事務所に同庁担当者を呼び、説明させていた問題が限度額の議論も直撃。

9月の自民党総裁選では、安倍晋三首相の3選が有力な情勢だが、関係者の関心は、3選後に予想される内閣改造での野田氏の去就だ。

ある関係者は「政令改正を担う総務省と金融庁が折り合うとしても、民営化委の報告書、政令改正というプロセスの途中で総務相が交代するのは避けたいところだ」と本音を明かす。

<金融庁「早期に結論」の真意は>

7月31日に開かれた「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(会長=野田毅・元自治相)の役員会には、日本郵政<6178.T>の長門正貢社長、郵政民営化委の事務局、総務省、金融庁の幹部らが出席。出席者によると、金融庁の栗田照久監督局長から、限度額について早期に結論を出すとの発言があった。

限度額緩和を求める自民党の中には、強硬に反対していた金融庁の森信親前長官の退任で、同庁が態度を変えるのではないかとの期待もある。一方で「すぐに金融庁が態度を変えるのは難しいのではないか」(議員)との声も漏れる。

実際、金融庁のある幹部は「地域の利用者のために何が望ましいのか、民営化委の議論が尽くされていない」と話しており、早期の決着に動き出す気配はない。

郵政民営化委の岩田一政委員長が「できる限り早期に見解を取りまとめたい」と述べた5月から、すでに2カ月が経過。民営化委と金融庁の対立に加えて、総務相人事を巡る不透明感が、さらに議論の停滞を招いている。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)