[東京 31日 ロイター] - 日銀は30─31日の金融政策決定会合で、強力な金融緩和策の持続性を強化する措置を決定した。長期金利を「ゼロ%程度」に誘導する目標自体は維持しつつ、変動幅の拡大を容認。黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、従来の倍に相当する「プラスマイナス0.2%程度」を念頭としていることを明らかにした。上場投資信託(ETF)では、東証株価指数(TOPIX)連動型の購入割合を拡大することも決めた。

同時に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、日銀は、分析期間となる2020年度までの消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しを下方修正した。物価2%目標の実現に「これまでの想定よりも時間がかかる」ため、現在の金融緩和策の長期化が避けられないことが鮮明になった。

こうした情勢を踏まえ、日銀は新たに「政策金利のフォワードガイダンス」の導入を決定。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」と明記し、物価2%の達成に向けた日銀の姿勢を強めた。ガイダンスの導入には、方向性が異なるなどとして原田泰審議委員と片岡剛士審議委員が反対した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を巡っては、長期金利に関する表現を修正した。「ゼロ%程度」に誘導する目標は変えなかったものの、長期金利は「経済・物価情勢等に応じてある程度変動しうるものとする」とし、変動幅の拡大を認める方針を新たに示した。

黒田総裁は記者会見で「ゼロ%程度」が、事実上「プラスマイナス0.1%」と解釈されていることに触れ、「非常に狭い範囲で(金利が)動いているために、時々、国債の取引が成立しないなど、国債市場の機能がやや低下している」と、現行政策がもたらす副作用を指摘。

その上で、この変動幅の「倍くらい」を念頭に置いていることを明言した。「金利水準が切り上がっていくことを想定しているわけではない」とも述べた。

長期金利目標の柔軟化は、原田委員が「政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎる」、片岡委員が「誘導目標を不明確にする」として反対に回った。

総裁はまた、低金利の長期化に伴い「将来的に金融仲介が停滞に向かうリスクはある」とした一方、「金融機関の収益を改善するために金融政策を行うことは考えていない」との認識を示した。

ETFの買い入れ手法も見直した。年間買い入れ額約6兆円のうち、「設備・人材投資に積極的に取り組む企業」を対象としたETFを除く5.7兆円で、TOPIX連動型の比率を高めた。

従来は、TOPIXの年間2.7兆円に加え、TOPIX・日経225・JPX日経400の3指数で計3兆円を買い入れていたが、それぞれ4.2兆円と1.5兆円に配分を変えた。8月6日から実施する。

不動産投資信託(J-REIT)は年間約900億円の買い入れを据え置いた。ETFと併せ、いずれも「資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買い入れ額は上下に変動しうる」との表現を加えた。

さらに、日銀当座預金のうち、一部のマイナス金利が適用される残高について「長短金利操作の実現に支障がない範囲」で、現在の平均10兆円程度から減少させる措置も決めた。8月の積み期間は5兆円程度となる見込み。

黒田総裁は、日銀が従来示していた「19年度頃」の物価目標達成が後ずれしていると認めたが、「物価上昇を遅らせてきた要因は次第に解消する」と述べ、現時点での追加緩和の必要性は否定した。

*内容を追加しました。

(梅川崇)