社会にインパクトを与えながら“100年後の世界を良くする会社”を創出し続けたい。そんなミッションを掲げながら、中堅・ベンチャー企業への支援を続ける株式会社リブ・コンサルティングには、様々なキャリアを経た個性豊かな人材が集まっている。その求心力の正体をさぐるべく、大企業勤務のエリートという華々しいキャリアを捨ててまでも、同社を選んだ2人の若手コンサルタントにインタビュー。キャリアの変遷や現在の仕事に対する想い、そして未来について熱く語ってもらった。

大胆なキャリア変革を決断した瞬間

――お二人とも、前職ではいわゆる、超大手有名企業に在籍されていましたよね。それで、どうして今、中小企業の支援に情熱を注いでいるのですか。
切通 私の前職は化粧品会社の資生堂で、百貨店チャネルを担当し、営業職とマーケティング職に従事していました。誤解をしていただきたくないのですが、仕事の不満など微塵も感じたことはなかったです。むしろやりがいばかりを感じていたというか、同期の中でも資生堂愛がかなり強い方だったと思います。今でも前職時代の先輩や同期と連絡を取ったり、食事に行ったりしています。それが東日本大震災の日、あの悲惨な映像を見たときに、すべてが変わりました。
震災直後、当初から計画していた旅行で沖縄に滞在していて、テレビから流れてくる悲惨な映像をみていた時に、“私はこんなところで何をやっているんだろう”と、罪悪感を覚えてしまいました。“何かできることはないだろうか”と考え、5月のGWに思い立って人生初めての現地ボランティアに参加しました。ご家族で経営されている小さな工場に伺って、がれきの撤去などをお手伝いしました。
お昼休みにわざわざ用意をしてくださったおにぎりをごちそうになっているときに、社長さんが涙ながらに言うのです、「若い皆さんが、日本を元気にしてください」と。苦境に立たされた中小企業の社長さんの一言の重さはすごくリアルに伝わってきたのですが、当時の自分は、その言葉の真意を正しく理解できてはいませんでした。
“日本を元気にするってどういうことだろう?”“そもそも中小企業って?”という疑問が頭をよぎりました。これまで大企業に在籍し、大きな会社ばかりを相手に仕事をしていた自分は、目の前の社長さんの言うことを実感として受けとめ切れていなかったのだと思います。
それでも、何か自分にできることはないだろうか?何かチカラになれないだろうか?と考えました。そして、まずはほとんど知らなかった中小企業の現状をもっと知ろうと、中小企業診断士の資格取得を目指しました。勉強をはじめてみると、世の中の会社の99.7%が中小企業だという事実を目の当たりにします。そこで、自分の中で、“日本を元気にする=中小企業を元気にする”という解に至りました。
切通 英樹 株式会社リブ・コンサルティング モビリティインダストリ2008年明治大学 商学部卒業後、株式会社 資生堂に入社。デパートチャネル営業、グローバルブランドSHISEIDO国内マーケティングを担当。2016年に早稲田大学大学院 MBA取得後、リブ・コンサルティング参画。自動車業界を中心に、大企業や中小・ベンチャー企業の戦略策定から実行支援まで幅広くコンサルティング業務に従事。
松尾 私は新卒で大手総合広告代理店に入社しました。“広告業界で働きたい”というより、BtoBビジネスの世界で真剣勝負がしたくて選択したという、少し変わった動機を持っていたものですから、TVCMよりもマーケティング戦略を企画しているほうが好きなタイプの人材になっていました。
2010年頃から、広告業界そのものがWEB広告の隆盛と共に大きな変革期を迎える中で、私の所属していた代理店もマーケティング・マネジメントの必要性を謳い、様々なチャレンジを仕掛けていた時期にあたります。個人としても旧来型の代理店ビジネスモデルの限界をクライアントに向き合う中で痛感する中で、しかし実態として目指したい姿と実務との乖離は大きくなる一方でした。
結局、自分がやりたい仕事は全体の1~2割で、残りは王道であるメディアバイイングや広告制作という、そのジレンマみたいなものを感じていた時に、ちょうど、縁あって若手政治家の話を聞く機会を得ました。同世代の人間でもある彼は、すでに2020年以降の日本をどうするか?という目線を持っていました。その中で、広告代理店に期待するあるべき姿について言及していた姿に感銘と衝撃を受けました。
私はこれまで、目の前のお客様の顕在化した課題を解決することをマーケティングと捉え、その仕事が好きで情熱を注いできたのですが、彼は日本の未来、その先の価値をどう描くか?ということをマーケティング目線で考えていました。今のままでは、広告マンとしてはある程度の成果を挙げることができるかもしれないけれど、果たしてその政治家が示唆するような役割、すなわち“日本を背負えるマーケター”になれるのか?そういった疑問を感じるようになっていました。
松尾 大輔 株式会社リブ・コンサルティング コンサルティング事業本部早稲田大学卒業後、大手総合広告代理店に入社。精密機器・トイレタリー・化粧品・不動産業界を中心に30以上の商品・サービスにおけるマーケティング・コミュニケーションの戦略策定・実行マネジメントに関わる。その後、株式会社リブ・コンサルティングに入社。現在、マーケティング&セールスグループにて、企業の成長ステージに応じたマーケティング・セールス領域のコンサルティングを担当している。

大企業の看板を下ろすことができた理由

――それぞれに気づきを得たお二人は、その後、いかにしてリブ・コンサルティングという会社に出会うことになったのでしょうか。
切通 被災地のボランティア体験から中小企業のコンサルティングに興味を持つようになったのですが、実務経験はあるものの、アカデミックな要素も必要だろうと仕事をしながら早稲田の大学院に進学することにしました。今でも私が一番尊敬する恩師のゼミでは徹底した現場主義を掲げていて、そこで中小企業の経営者へのインタビューを多く経験しました。もっとも印象的だったのは福岡県の中堅企業の社長との対話です。話す内容がものすごくリアルで興味深かったです。
これまでつきあっていた大企業の人は、もちろん全員ではないですが、“上辺だけ”みたいなところがありました。しかし、その経営者との間ではもっとリアルで生々しい、本質的な部分での会話が交わされました。中小企業経営の最前線のヒリヒリ感みたいなものを受け止めました。
“現場感”が圧倒的に強いのです。中小企業の役に立つためには、この現場感が大切だし、そこを理解できなければ、何もチカラになれないと、そう理解しました。そんな想いを持っているときにエージェントが紹介してくれたのが、リブ・コンサルティングでした。
松尾 私自身は転職活動をしたわけでなく、ディレクターになるタイミングを迎え、2割程度を占めるにすぎなかった、やりたい仕事を、“どうやって増やせるのだろうか?”ということばかりを考えていました。課題感が強まったときに、ヘッドハントが入ったのですが、これが人生における分岐点なのだろうと受け止め、代理店に残るという選択肢も含めて、しっかり向き合って考えることにしました。
エージェントから、いくつかの企業が提示されたのですが、そのひとつにリブ・コンサルティングがありました。“100年後の世界を良くする会社を増やす”ことを真剣に考えている、ミッション・ドリブンのコンサルファームがあると聞き、その“100年後”というキーワードが、例の若手政治家の言葉とリンクしました。
この会社はもしかしたら、これからの日本を作っていく旗振り役になるかもしれない。そのように直感し、まずは話を聞いてみようと思いました。私が考えるマーケティングがコンサルファームでどれだけ実現できるのかという不安はあって、その疑問を率直に人事担当役員にぶつけてみたのです。
すると、私の考えをいっさい否定することなく、むしろ“目指したい姿に到達するためには、広告代理店という枠組みでは不自由ではないか”と鋭い指摘が入りました。それで私は、ものすごく楽になれたのです。そうか、と。結局、自分が考えていた制約・制限はすごくシンプルなもので、大手総合広告代理店という看板を下ろすだけで済むのだとわかりました。
――お二人とも大企業の看板を下ろしたわけですが、それって怖くなかったのですか?
切通 私の場合は、コンサルタントという道を選んだ時点で、すでに一人で戦う決意をしていたので、大企業の看板を下ろすことに何の抵抗もありませんでした。もうコンサルタントになる前から、“生涯コンサル!”と決めていたので。
結局、中小企業の現実を目の当たりにしたときに、大企業でやっているマーケティングって、世の中に必要なのかな?って思ってしまったのです。これって、本当に日本を元気にできているのか?自分じゃなくてもいいのではないか?って。そういった疑問がわいてきてしまいました。ですので、次のキャリアとして、大きなコンサルティング会社を選択する必要はなく、やりたいことがやれる場所を選ぼうと思いました。
松尾 私の場合は、もう広告代理店の看板が逆に足かせになっていたんだと思います。広告代理店にいると、どこまでいっても広告業界の人なんですよね。色々と相談に乗っていても結局、“そこから先はいいですよ。広告代理店さんの領域ではないでしょう?”という話になる。自分のやりたい仕事を増やしていくためには、結局、この枠から飛び出していくしかないという判断でした。
リブは、この範疇やメソッドに従って仕事をしろとは一切言わなかった。むしろ本当にやりたいことをとことんやり抜けばいいんじゃないの?と言ってくれた。やりたいことをやるためには看板でも立場でもなく、その環境こそが大事だということがわかりました。

求めていたのはリアル。決めたのは覚悟

――それぞれの想いを持って入社されたお二人ですが、入社してから、もっとも印象に残っているプロジェクトについてご紹介いただけますか。
切通 入社して、ちょうど一年後に担当させていただくことになったライザップさんとのプロジェクトが非常に印象に残っています。代表の関にサポートをしてもらいつつ、プロジェクトリーダーとして新規事業のゴルフスタジオビジネスをさらに成長させていくためのコンサルティングをしました。当社の教育制度のひとつである“タレントサポートプログラム”の一環で、私のメンターである代表の関から「やってみないか」と提案をしてもらったのがきっかけでした。もちろん、プレッシャーは大きかったですが、何よりも、絶対にプロジェクトを成功させて、自身の成長機会にもしたいという思いが先に立ちました。
ライザップさんは、圧倒的なスピード感で成長しているため、解決すべき前向きな課題が多数あります。それを役員、事業部長、現場メンバーとともに一緒に解決し、事業を構築していくという絶対に失敗のできないプロジェクトでした。事業部長もすべてを賭けて情熱を持って取り組んでいましたし、現場のトレーナーも元々勤めていた会社をやめて、ここに飛び込んできた方も多かったです。全員が真剣勝負というか、各々にリスクを背負って取り組んでいるというリアルを体感しながら、私も全力でプロジェクトを遂行しました。結果、当初掲げていた目標を達成することができました。
松尾 転職してまだ経験が浅いときにアカウントになったクライアントが、私にとって一番思い入れのある企業となっています。そこは建設業界のITプラットフォームを提供し、2ケタ成長を続けているイキオイのある会社です。社員数もこの1,2年で100人を超えてくる段階で、新たに中期経営計画の策定が必要となり、私たちがサポートさせていただくことになりました。
代理店時代にも、事業の中期戦略の策定をサポートする経験はありましたが、当時は、顕在化した課題に対して、商品企画や広告キャンペーンといった、いわばクライアントの外側から解決策を提示するにとどまっていました。ところが、コンサル会社には、決まりきった手法がないのですね。言い換えれば、何をやってもいい。そのときに、制約のない怖さを初めて知りました。しかも自分が打った施策は全部、自分に返ってきます。
外側からではなく、その会社の中に入って、組織の中身を根本から変えていく必要がありましたし、まさにそのスタイルはリブの強みとも合致していました。事業リーダーのようなスタンスで相手の内部に入り込んで、私よりも若い事業責任者と、それこそ二人三脚で、何時間もセッションしたり、時には彼のメンターになったりしながら、目の前の課題に切り込んでいきました。入り込めば入り込むほど、相手の覚悟の置き方がリアルに伝わってきます。
そういった覚悟は、大企業相手ではあまり出会わないものでした。ちょっと失敗したから来期の予算が減りますよ、くらいで済む。個人の課題ではなく会社の、かつマーケティングの表向きの課題しかとらえていませんから、たとえモノが売れなかったり、認知度が上げられずにマーケットを獲得できなくても、“来期がんばろう”で済んでしまうこともあります。
ところが私たちが向き合う中小、ベンチャー、成長企業の現場はまったく違います。覚悟が違う。リアルなんですよ。会社としてというより、個人として切迫しています。経営者はもちろん、ご一緒した若い事業部長だって相当の覚悟を持って臨んでいます。本当に助けてほしいと思っているし、アドバイスをほしがっています。その現場には、私たちの存在意義が強烈にあるのです。
――そのリアルの反動としての怖さ、みたいなものは感じませんか。
松尾 その怖さがある種、この仕事の一番の面白さではないかと思っています。前職とはあきらかに時間の密度が違う。その場、その瞬間に自分で判断しなくてはなりませんから、スピード感も決断力も求められます。深堀しながら、猛スピードで突き進んでいくので、常にストレッチがかかっているような状態です。確かに“怖さ”と表現もできますが、同時にこれが、今まで自分が求めていた緊張感でもあると。望んでいたところだなとも思います。
切通 私の場合、苦労と面白さのギャップこそが仕事のやりがいだと思っていて、難題に直面しもがき苦しんだ分だけ、成功した時、その反動としての喜びも大きくなります。その状況から目を背けるような人では勤まらない仕事かもしれません。なぜなら相手の経営者も私以上に相当の覚悟をもって臨んでいるのですから、それを全力で受け止めないと成立しません。
松尾 看板がないということは、自由ではありますが、その分、自分たちで責任を負わなくてはなりません。リブは最終的に、自分が何をするかという意志を貫ける会社でもあります。貫くための覚悟を辛さと呼ぶかについては議論がありますが、その覚悟を背負えば背負うほどリターンが大きくなるのは実感としてあります。

理想の未来を築いていくための条件

――今後のお二人のビジョンを、最後にお聞かせいただきたい。
切通 入社して2年半、リブって面白いことに、毎年色々な色に変わっていくんですよね。コアなカラーというのは当然あって、そこに新たな人財やクライアントとの出会いを通じて新たな色が加わっていきます。今後もきっと変化を続けると思いますから、そこに自分の色をどんどんと加えていきたいですね。将来的には新規事業の立ち上げを目指しています。
松尾 私は前職の時から一貫して変わらず、マーケティングのマネジメント領域において、日本の社会に対して旗を振っていける人間になることを目指しています。“100年後の世界を良くする会社を増やす”という理念の中で、私が所属するチームが世界一のマーケティング支援組織になれると確信していますし、この分野において日本のトップ、あるいは世界のトップランナーになるのは広告代理店ではなく、そこをリブが走れるのではないかと思っています。
日本は諸外国に比べて、CMOを中心に組織的にマーケティングに取り組んでいる会社もまだまだ少ないという現状があります。世界一のマーケティング支援会社になること=今の日本社会に不足しているマーケティングドリブンな組織が増えるということになるはずなので、マーケティング組織を増やす支援をしていくことが、100年後をよくする会社を増やすことなのではないかと。それが文化として浸透するまでがんばっていきたいですね。
切通 リブが今持っている価値をもっと世の中に広めたいです。広めていける人間に自分もなりたいし、そういう人財にもどんどん入ってきてほしいです。そして、世の中の中小企業の支援を通じて、日本を元気にします。
ですので、共通の価値観さえ揃っていれば、色々な個性と武器を持つ人がいて良いと思います。実際に毎月、本当に様々なキャリアを持つ人がリブの門を叩いてきます。大企業のリーダー人財はもちろん、国際NGOでウガンダの教育支援していた人から市役所に勤務していた人まで、本当にバリエーションが幅広いんですよね。みんなそれぞれの看板を下ろしてリブにジョインしています。当然覚悟を持ってきています。
その求心力の正体は何か?リブには、“これが型だから、これがメソッドだから身につけて”と言う指示がほぼないのです。限りなく自由で、限りなくチカラを発揮できる。そこに自分自身の可能性をみんなが見いだせているのではないかと思います。
(インタビュー・文:伊藤秋廣[エーアイプロダクション]、写真:岡部敏明)