[16日 ロイター] - <為替> ドルが下落。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長による経済・金融政策に関する半期に一度の議会証言を17、18日に控え、ポジションを調整する動きが出た。

アナリストによると、パウエル議長は緩やかなペースでの引き締め政策が適切との見解を再表明する公算が大きい。ただ、通商問題に関し何らかの警戒感が示唆されれば、リスク選好の動きは後退する可能性がある。

テンパス・コンサルティングのジョン・ドイル氏は、パウエル議長はお膳立て通りに行動するタイプとし、「2日間の証言の内容は概ね一致することが予想され、明確な手掛かりを示したり、口を滑らせるようなことはないだろう」と述べた。また、パウエル議長が貿易摩擦や、それに伴う金利見通しへの影響などについて発言するか注目するとした。

終盤の取引で、主要通貨6指数に対するドル指数<.DXY>は続落し94.526。

朝方発表された6月の米小売売上高統計を受け、ドルは下げ幅を縮小する場面もあった。小売売上高は前月比0.5%増と、底堅く伸び、市場予想と一致した。

その他、低調な中国国内総生産(GDP)統計など悪材料も出たものの、世界のリスク選好度は高まった。

<債券> 米小売統計が好調だったことを受け国債利回りが上昇。2年債利回りが一時約10年ぶりの高水準を付け、長短金利差は一時2007年7月以来の水準に縮小した。

6月の小売売上高は前月比0.5%増。自動車を含む幅広い項目で販売が増え、第2・四半期も経済成長は堅調に継続したとの見方が裏付けられた。

市場関係者は、小売統計が堅調だったことを受け米中貿易摩擦を巡る懸念が相殺され、安全資産としての米国債に対する需要が低減したと指摘した。

夏相場で商いが細る中、10年債<US10YT=RR>利回りは一時は約1週間ぶりの高水準を付けた。

2年債<US2YT=RR>利回りは約2bp上昇の2.603%。一時は08年8月以来の水準まで上昇した。

今週は米FRBのパウエル議長が17日と18日に議会証言を行う。アナリストは、パウエル議長は議会証言で米経済に対する自信を表明し、緩やかな利上げを継続していくとのFRBの姿勢を再確認すると予想している。

CMEグループのフェドウオッチによると、先物市場は約60%の確率でFRBが年内あと2回の利上げを実施しフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を2.25─2.50%に引き上げるとの見通しを織り込んでいる。

この日は朝方の取引で2年債と10年債の利回り格差<US2US10=TWEB>は23.40bpと、2007年7月以来の水準に縮小した。終盤の取引では25.30bpと、前営業日から約1bp拡大した水準にある。

<株式> S&P総合500種指数<.SPX>とハイテク株主体のナスダック総合指数<.IXIC>が小幅安。原油価格の値下がりでエネルギー株に売りが出た。一方、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)<BAC.N>の好決算を手掛かりに銀行株は上昇した。

動画配信大手ネットフリックス<NFLX.O>は1.2%高で終了したが、引け後に発表した決算で、契約者数が予想を下回ったことから、株価は12%超下落した。

エネルギー株指数は1.2%安となり、下げが特に目立った。エクソンモービル<XOM.N>は1.0%、シェブロン<CVX.N>は0.9%、それぞれ下落。マイクロソフト<MSFT.O>も0.5%下げ、株価指数を圧迫した。

S&P金融<.SPSY>は1.8%上昇。アナリスト予想を上回る決算を発表したバンク・オブ・アメリカ<BAC.N>は4.3%高となった。

17日に決算を発表するゴールドマン・サックス<GS.N>は2.2%上昇して終了した。

キングスビュー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏は、今週は決算を発表する企業が増え、17─18日にはパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言も予定されていることから、様子見ムードが強まるとの見方を示した。

米特殊金属メーカーのアーコニック<ARNC.N>は10.5%高。プライベートエクイティ(PE)から買収の打診があったとの報道が材料視された。

<金先物> 小幅続落。米FRBによる利上げペースの加速観測などに圧迫された。中心限月8月限は清算値で2017年7月中旬以来約1年ぶりの安値を更新した。

きょう発表された小売売上高も含めて最近の米経済指標が総じて好調な内容であることから、FRBによる利上げペースが加速するとの観測が広がる中、金には下押し圧力がかかった。FRB議長の議会証言を控えて様子見ムードも強かった。

<米原油先物> 大幅反落。供給逼迫懸念が後退するなか売り込まれ、中心限月ベースで6月21日以来約3週間ぶりの安値を付けた。

リビア国営石油(NOC)が先週、不可抗力条項などで閉鎖していた4つの石油輸出港と2つの油田での操業を再開。また、ロシアのノバク・エネルギー相は13日、原油供給不足で世界市場に影響が及んだ場合には、他の主要産油国とともに増産する可能性があると表明した。これを受けて、供給逼迫懸念が後退、利益確定の売りなどもかさむ形で下げ足を速めた。

米ウォール・ストリート・ジャーナルが13日、トランプ米政権が石油供給不安による原油価格の高騰を抑える選択肢として、戦略石油備蓄(SPR)の放出を検討していると報じたことも、原油売りに拍車を掛けた。中国の国内総生産(GDP)が減速し、景気や需要に警戒感が広がったことも、原油の下押し要因になったもよう。