[松本市(長野県) 5日 ロイター] - 日銀の政井貴子審議委員は5日、松本市で記者会見し、足元の物価が想定を下回って推移する中でも、物価2%目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されており、過度に悲観する必要はないと語った。金融政策運営にあたっては、量的・質的金融緩和(QQE)の導入から5年以上が経過する中で、累積的な効果と副作用を従来以上にみていく必要があるとの認識を示した。

足元の物価は、日本経済の拡大が持続しているにもかかわらず、日銀の想定を下回って推移しているが、政井氏は「総合的にみると物価上昇に向けたモメンタムは引き続き維持されており、過度に悲観する必要はない」と強調した。

理由として、資本や労働の稼働率をしめすマクロ的な需給ギャップが改善傾向を維持していることを挙げ、そのもとで物価がなかなか上がらないのは「成長期待やインフレ期待が十分に高まっていない」ことがあるとした。

それでも、人手不足感の強まりを背景に人件費が増加しているにもかかわらず、企業収益は過去最高水準を確保しているとし、「これは日本企業の労働生産性が上昇しているということであり、成長期待にもプラスに働く」と主張。「成長期待は改善傾向にある」と語った。

インフレ期待に関しては、2%程度で安定している米国でも「2%のインフレ率の軌道に戻るのに相応の時間がかかった」ことを挙げ、「長きにわたるデフレを経験した日本で時間がかかるのは仕方がない面がある」との認識を示した。

日銀の金融緩和政策のもとでインフレ期待は「少なくとも下がる方向ではない」としたが、あらためて「日本経済にとって必要なのは、インフレ期待が2%程度でアンカリングされることだ」と強調。

大規模緩和の導入から5年以上が経過する中で「累積的な効果と副作用を従来以上にみていく必要がある」と副作用への目配りに言及しつつ、日銀として「経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、持続可能な形で強力な金融緩和を息長く続けていくことが必要」との認識を示した。

国債市場で新発債の出合いがない日が増えるなど、市場機能の低下に対する懸念が強まっていることに対しては「国債市場を多面的に点検していくことが肝要」とし、「オペの運用面で必要な工夫を行うなど市場の安定に努めることが大事だ」と語った。

(伊藤純夫)