[19日 ロイター] - <為替> ドルや円が上昇。通商問題を巡り米中の対立が一段と深まる中、リスク回避の動きが広がった。

人民元<CNY=CFXS>はオフショア市場<CNH=D3>でドルに対し一時6.4948元と5カ月ぶりの安値を付けた。その後は6.4800元近辺で推移。貿易摩擦を巡る懸念が強まる中、株価も世界的に値下がりした。

コモンウエルスFX(ワシントン)の首席市場ストラテジスト、オマー・エジナー氏は「高リスク・高利回り通貨と比較してドルや円に対する選好が強まった」と述た。

主要6通貨に対するドル指数<.DXY>は一時95.296と昨年7月以来の高値を付けた。

貿易摩擦の深刻化で非鉄金属価格<CMCU3>が値下がりする中、豪ドル<AUD=D4>は1年ぶり安値となる0.73475ドルを付けた。カナダドル<CAD=>も1.3291カナダドルと1年ぶり安値。トランプ大統領は19日、カナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で進展がみられると指摘、合意できなければ2国間協定締結の可能性を示した。

<債券> 米中貿易摩擦が激化するとの警戒感から国債利回りが低下、10年債と30年債の利回りは約3週間ぶり、2年債利回りは約2週間ぶりの低水準を付けた。

貿易を巡る米中の対立が一段と深まったがG+エコノミクス(ロンドン)の首席エコノミスト、レナ・コミレワ氏は「市場では通商を巡る緊張の高まりの兆候が一段と意識されている」と指摘。ただ世界的なマクロ経済上の短期的な見通しは良好となっており、貿易戦争のリスクによる影響を必ずしも受けることはないとの見方も示した。

10年債<US10YT=RR>利回りは一時2.853%と3週間ぶりの水準に低下。30年債<US30YT=RR>利回りも一時2.991%と3週間ぶりの水準に低下。2年債<US2YT=RR>利回りは一時2.496%と2週間ぶりの水準に低下した。

長短金利差はこの日も拡大し、5年債と30年債の利回り格差<US5US30=TWEB>は26.90ベーシスポイント(bp)に拡大した。イールドカーブのスティープ化は3営業日連続となる。

TD証券(ニューヨーク)の金利ストラテジスト、ゲンナディー・ゴールドバーグ氏は、貿易戦争がスタグフレーションにつながり、米連邦準備理事会(FRB)の一段の利上げが阻まれる可能性があることを踏まえると、貿易戦争の懸念が出ている時は長短金利差の拡大は想定されるとしている。

朝方発表された5月の米住宅着工件数は前月比5.0%増の135万件と、2007年7月以来の高水準となった。統計が好調だったことで貿易戦争を巡る懸念がやや相殺される場面もあった。

<株式> 下落。エスカレートの兆しを示す米中貿易摩擦が市場心理を圧迫した。ダウ工業株30種は年初来の上げを失い、マイナス圏に沈んだ。

投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>は一時、約3週間ぶり高水準の14.68に上昇。その後13.35に低下した。

一部投資家の間では、貿易を巡る応酬の激化を踏まえれば、米国株の下げは他国の株安に比べて小幅にとどまったとの声も聞かれた。

大型株と比べて国内に重点を置く企業が多い小型株のラッセル2000指数<.RUT>は0.1%上昇。

配当利回りが高く、債券の代わりともみられる公益<.SPLRCU>や通信<.SPLRCL>、主要消費財<.SPLRCS>も買われた。

一方、米中貿易摩擦の影響が懸念されるボーイング<BA.N>は3.8%下落し、キャタピラー<CAT.N>は3.6%安、フェデックス<FDX.N>は2.0%安となった。

売り上げに占める中国の比率が高い半導体企業も売られた。

<金先物> 小反落。ドル高・ユーロ安の進行に伴う割高感に圧迫された。テクニカル要因の売りが出たことに加え、米連邦準備理事会(FRB)による利上げペースの加速観測も引き続き重しとなった。ただ米中貿易摩擦への懸念で質への逃避買いが入り下げ幅は限定的だった。

<米原油先物> 反落。米中間の貿易摩擦激化への警戒感などを背景に売りが先行した。欧米株が全面安となる中、投資家のリスク回避姿勢が強まったことから原油にも売りが波及する形となった。

22・23日には石油輸出国機構(OPEC)総会とOPEC加盟・非加盟国会合がウィーンで開催される予定で、現行の協調減産措置を緩和する決定が下されるのではないかとの観測が広がっていることも相場の下押し要因となった。