【見城徹】「情報の断片」をかき集める読書に意味はない

2018/6/6
本日、NewsPicks Book『読書という荒野』が発売された。幻冬舎社長の見城徹氏が、人生を切り開いてきた「読書」について書き綴った著作だ。稀代の編集者は、どのようにして読書と向き合ってきたのか。本書から特に本質的な部分を抜粋してお届けする。

言葉が人間を人間たらしめる

人間と動物を分けるものは何か。それは「言葉を持っている」という点に尽きる。
人間は言葉で思考する。言葉を使って自らの生や死について考え、相手に想いを伝える。人を説得し、交渉し、関係を切り結ぶ。そして人生を前に進めていく。
一方、動物は言葉を持たない。本能に従って餌を食べ、交尾をし、死んでいく。彼らは生や死について考えることもない代わりに、他者と心が通じ合う喜びも感じない。
言葉を持たない人間は、たとえ人の形をしていても、動物と何ら変わりはないと僕は考える。赤ん坊は言葉を持たない。だから赤ん坊には人生や世界がない。
人間を人間たらしめるのは言葉だ。では、人間としての言葉を獲得するにはどうすればいいのか。それは、「読書」をすることにほかならない。
見城徹(けんじょう・とおる)
1950年静岡県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、廣済堂出版を経て、75年、角川書店に入社。「野性時代」副編集長、「月刊カドカワ」編集長、取締役編集部長などを歴任。93年、角川書店を退社し幻冬舎を設立。23年間で22冊ものミリオンセラーを世に送り出す。著書に『編集者という病い』『異端者の快楽』『たった一人の熱狂』などがある。

「別の世界」を経験するための読書

本には、人間社会を理解する上でのすべてが含まれている。
人間は途方もなく多様な存在で、自分では想像もできないような考えを持つ他者がいること。ゆえに、人間同士の争いは決して消滅しないこと。すべての意思決定は、人間の感情が引き起こしていること。
そのため、他者への想像力を持つことが、人生や仕事を進める上で決定的に重要なこと……。
読書で学べることに比べたら、一人の人間が一生で経験することなど高が知れている。読書をすることは、実生活では経験できない「別の世界」の経験をし、他者への想像力を磨くことを意味する。