[ワシントン 10日 ロイター] - トランプ米大統領が11日に行う処方箋薬の価格抑制に関する演説について、医薬業界関係者らは、大統領がかつて「好き勝手している」と批判した製薬会社にとって痛手となる政策はほとんど打ち出されないと見込む。

政権高官らは記者団に、演説では製薬会社による高い価格設定や消費者の負担増、メディケア(高齢者向け公的医療保険)対象者のための薬価交渉への障壁が取り上げられる見通しだと明らかにした。

トランプ大統領の薬価に関する提案について説明を受けた医薬業界筋は、医療制度に対する影響は比較的控えめになると見込んでいる。大統領はまた、外国政府が処方箋薬に支払う価格が米国よりも低いことを批判するとみられる。

大統領は、2016年大統領選の選挙戦で提唱していた薬価引き下げ策をすでに断念している。メディケア対象者のために政府が薬価を製薬会社と直接交渉できるようにすることが過去の提案に含まれていた。

トランプ氏が考えを変えた背景には、製薬業界の強力なロビー団体が説得したとの指摘がある。同団体による首都ワシントンでの支出は昨年、30%拡大したと報告されている。また、アザール厚生長官は米製薬大手イーライリリー<LLY.N>の元幹部だ。

スイス製薬大手ノバルティス<NOVN.S>は今週、トランプ氏の顧問弁護士マイケル・コーエン氏のコンサルタント会社に120万ドルを支払ったと認めた。違法な行為との指摘はないが、この開示によって製薬会社が政府への影響力をどのように得ているかを巡り疑問が生じた。

消費者保護団体「パブリック・シチズン」の関係者は、ノバルティスの例は「トランプ政権をむしばむ医薬業界の影響力の度合い」を示していると強調。「政権が今後示す提案はやや限定的なものになると考えるのが妥当」と指摘した。

政権当局者らによると、大統領が打ち出す政策には、保険会社や価格交渉を仲介する薬剤給付管理(PBM)会社が製薬会社から受け取るリベート(割戻金)の一部を消費者の自己負担低下に役立てるよう義務付けることや、後発医薬品(ジェネリック)やバイオ後続薬(バイオシミラー)の普及促進策が含まれる見通し。ジェネリック品を低所得層の高齢者に無料で提供する案も示される見込み。

ただ、アザール長官を含む厚生省高官らはここ1週間、トランプ大統領がより大胆な政策に踏み切る可能性を示唆しており、市場はこれまで報じられた案よりも踏み込んだ内容になることを警戒している。

製薬会社は処方箋薬の高い価格設定は革新的な新薬開発の資金確保に必要だと主張する。ただ、批判が高まる中、一部の製薬会社は自主的に年間の値上げ率に上限を導入した。