[東京 2日 ロイター] - NTT<9432.T>は2日、米ラスベガス市で事件・事故を迅速に検知したり、予測したりする「公共安全ソリューション」の実証実験を開始すると発表した。米デル・テクノロジーズ<DVMT.N>と組んで、情報通信技術(ICT)を活用したスマートシティ化を後押しする。

ラスベガスに訪問中の澤田純副社長はロイターの電話取材に対して「すでにいろいろな自治体と話し始めている」と述べ、他都市への展開に意欲を示した。

実証実験はラスベガス市のダウンタウンエリアで9月に開始する。街中に複数のセンサーを配置し、人・車の動きや音などを常時監視。センサーに近い場所(エッジ)にマイクロデータセンターを置くことで、事件・事故などを迅速に把握できる仕組みを構築する。例えば銃声を検知したら、自動的に当局に通知する。

システム構築にはクラウドやネットワーク、ユーザーのデータセンター(コア)などを一元管理する「コグニティブ・ファウンデーション」と呼ばれる仕組みを活用する。マルチベンダーに対応したことで、ユーザーが保有している機器がそのまま使えるほか、帯域を有効利用するために必要な情報だけをコアに転送できるのが特徴だ。

澤田副社長は「通常はゲートウェイやサーバー、ネットワークなどはバラバラなので、それぞれセットアップしないといけないが、これはその場にあるものを使ってシステムを立ち上げるイメージ。フレキシブルに全てを統合できるコンセプトは初めてだ」と語った。

センサーで集めた情報に、交流サイト(SNS)などの情報を加え、人工知能(AI)で分析、事態の深刻度や事件性の有無などについて予測する機能も提供する。

約2カ月間の実証実験を経て、世界の都市向けに商用サービスを始める予定。澤田副社長は「ラスベガスは公共安全だけでなく、娯楽、教育、医療などさまざまな分野のスマート化を目指しており、一緒にやりたいと言っている」と述べ、公共安全分野以外での協業にも意欲を示した。

「ターゲットは人の集まるところ。ショッピングモールやイベントなどに使えるほか、工場の中や建設現場など常に状況把握が必要なところにも活用できる」(澤田副社長)。

<海外は機能集約も>

国内通信市場が伸び悩む中、NTTは海外事業を強化しており、2018年3月期は売上高196億ドル(約2兆1500億円)、営業利益12億ドル(約1300億円)を見込んでいる。

2015年5月に公表した中期計画では同期に売上高220億ドル、営業利益15億ドルを計画していたが、達成は困難になったとして昨年11月に見通しを下方修正した。

澤田副社長は海外事業について 「いままで人が辞めたりするのを嫌って、あまり構造改革をしてこなかった。重複している部分もあるので、それぞれの機能で集約するようなこともやっていかないといけない」と指摘。「単に売るだけでは利益は出ないので、自分のIP(知的財産)を強化することで粗利を拡大する」と語った。

(志田義寧)