内装と外装を隅から隅まで確認できる

拡張現実(AR)を使うことで、消費者は家から出なくても購入を検討している自動車の運転席に座れるようになるかもしれない。
オンラインで中古車を販売する「カールヴァーナ(Carvana)」は4月17日、そうした技術を開発している「カー360(Car360)」を買収した。買収額は2200万ドルでとされている。
カー360は米実業家マーク・キューバンが出資するスタートアップで、3Dコンピュータービジョンと機械学習、AR技術を初めて自動車業界に導入した企業のひとつだ。
親会社となるカールヴァーナはオンライン専門の中古車ディーラーで、ユーザーはウェブ上で自動車の購入やローンの申し込み、下取りの手続きまで行うことができる。
自動車のネット販売自体は新しいものではない。業界紙『オートモーティブ・ニュース』は、ネットでの自動車購入は2019年には全体の10%を占めるようになると予測している。
とはいえ、コンサルティング会社アクセンチュアが2015年に実施した調査では「カーディーラーでの手続きは嫌いなので、ほかの選択肢があれば考慮する」と答えた回答者が75%いた。このことを考えると、10%という数字は低く感じられる。
ほかにも、オークションサイト「イーベイ」(eBay)などいくつかの企業が、自動車のネット販売ビジネスに乗り出している。ネットで自動車を購入するという流れは、カー360などの企業が開発している消費者が購入を検討している自動車をより詳しく「確認」できる技術によって、加速する可能性がある。
カー360のサイトは「企業が自動車のストーリーを表現・伝達する手段を変える」と謳っている。言い換えれば、購入者は自動車の内装と外装をネット上で隅から隅まで見て体験できるということだ。

「車の自動販売機」でワクワク感

アリゾナ州に本社を置くカールヴァーナは、2013年に創業された。2017年の販売台数は4万4000台で、拡大路線をひた走っている。中古車市場はきわめて細分化されていて、カールヴァーナは「個人消費者へのネット販売」最大手を目指す。
カールヴァーナで販売されている中古車の平均価格はおよそ1万8000ドル。同社サイトを通じて購入した中古車が不良品だったとしても、心配はない。7日以内なら返品可能だ。
カールヴァーナを創業した35歳のアーニー・ガルシア最高経営責任者(CEO)は、全米展開する中古車販売会社「アグリー・ダックリング(Ugly Duckling)」(2002年に「DriveTime」と改名)でインターンとして働いたことで、自動車業界での一歩を踏み出した。
彼はその後、キャリアアップしていくなかで、全米に5万件あるディーラーで構成される中古車販売業界システムの古さについて疑問を持ち続けた。カールヴァーナがセールスモデルを自動化した主な目的は、人件費と不動産コスト、広告費の削減だった。
カールヴァーナはこれまでずっと、自社独自のシステムを使って自動車を撮影していた。しかしガルシアCEOは、最新テクノロジーの専門家グループが開発を手がけたカー360の技術に圧倒されたという。
その技術の具体的な中身は今後6カ月から12カ月以内に公表されるが、3Dが導入されれば、購入者の視聴体験と購買経験ははるかに充実すると、ガルシアCEOは自信たっぷりに語る。
カールヴァーナはまた「車の自動販売機」を業界に先駆けて開発し、ディーラーに出かけていくのとは違ったワクワク感を提供している。
従来型のディーラーが中古車のネット販売と競争するためには、独創的な手法を編み出して顧客サービスを向上させなくてはならない。近い将来、自動車のフロアマットと芳香剤をサービスしたくらいでは契約にこぎつけられない日がやってくることだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Nancy A. Shenker/Founder, TheOnSwitch、翻訳:遠藤康子/ガリレオ、写真:Peshkova/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.