【鈴木大輔】監督交代時、選手に求められる「透明性」

2018/4/27
スペイン2部のヒムナスティック・デ・タラゴナに加入して3シーズン、約2年半が経とうとしていますが、その間に監督交代が5回ありました。
2回指揮を執った監督も含め、5人の監督のもとでプレーしてきました。2年半で5回の監督交代は多いと思いますし、チームが軌道に乗れていなかった証拠でもあります。
しかし数試合結果が出なければすぐに監督が交代し、選手も半年で相当な数が入れ替わる。スペイン2部は1部から出場機会を求めてくる選手がいたり、若い選手に経験を積ませるために国内外から優秀な若手を連れてきたりと、選手を固定できず、監督としてはチーム作りが難しい印象です。
自分自身、正直こんなに監督が交代するとは思ってもいませんでした。本当に厳しい世界なのだなあと痛感しています。
監督が代わった時、ほぼ毎回と言っていいほど試合から外されました。ベンチに入れなかったことも数多くあります。
新しい監督からしてみたら、最初の数試合は準備期間が短い中で戦術を浸透させなければならず、言葉が完璧ではないというところから来る戦術理解度の懸念があったのだろうと思います。実際、チームメートは積極的に新しい監督とコミュニケーションを取っていました。
それでも最終的には全ての監督のもとで出場を重ね、信頼を勝ち取ることができました。多くの監督交代を経験することで、どうして全ての監督にうまく適応できたのだろうと考えた時に、自分なりに2つの大事なことに気づきました。
監督交代によるチームの変化
監督にはそれぞれ性格や、試合までのルーティン、練習時間、体重や体脂肪のコントロール、戦術、起用する選手など様々な特徴があり、監督が代わるたびにチームに大きな変化があります。
スペインでは、日本よりもそれぞれの監督に色があるのを感じます。自分の中でも「あの監督はこういうサッカーを好んでいて、選手に対してこのようにアプローチしていたな」と説明できる監督が多いです。
このように監督には様々なタイプが存在し、それぞれによって選手に求められることも変わってきます。その影響により選手は、プレーだけでなく、私生活においても変化があります。
鈴木(右)はロンドン五輪にU-23日本代表として出場して活躍。代表チームでも当然、監督の戦い方に応じた適応力が求められる
自分のポジションであるセンターバックを通して、サッカーのプレーについて説明します。
例えばボールを保持することを好み、攻撃的なサッカーをする監督のもとでは、攻撃の第一歩として“相手のプレッシャーを外すパス出し”や、“相手の守備にズレを生じさせるために敵陣に侵入するドリブル”が求められます。
しかし守備的なサッカーを好み、負けないサッカーを志向する監督のもとでは、中央でのミスからショートカウンターをくらい失点する確率を少しでも下げるために、ボールをサイドや敵陣裏のスペースに素早く送ることが求められます。
守備の例で言うと、前線からのプレッシングにより相手ゴールに近い位置でボールを奪って早く攻める、いわゆる「縦に速いサッカー」では、前線のプレッシングを効果的なものにするために、DF陣も勇気を持ってラインを高く設定することが求められます。
このように、各ポジションに細かい違いが多々あります。
「変化を恐れず学び続けよう」
チーム全体の守備のやり方としては、とにかく目の前の相手についてマークをはっきりさせる「マンツーマン」なのか、それぞれが危険なスペースを埋めて守る「ゾーン」なのか、もしくは併用なのかなど、監督によって異なります。
自分が5人の監督に適応し、信頼を勝ち取っていく中で感じたのは、変化を恐れず常に透明でいるのが大事だということです。
プロのレベルになると選手同士の実力差はほとんどなく、「自分のプレーを出しやすいスタイルのサッカー」が各選手にあります。そのスタイルの監督に出会えるかどうかが、活躍する上での大きな鍵になると思います。
しかし、基本的に選手は監督のスタイルをコントロールすることはできませんし、長いキャリアの中でずっと同じ監督のもとでプレーすることは不可能に近いです。
であれば、監督のスタイルに自分を適応させていくしかありません。
これは選手なら、誰でも頭では理解していると思いますが、実践できない選手は意外にたくさんいるように思います。自分のプレースタイルから出来上がったサッカー観や、キャリアの中で大きく影響を受けた指導者のやり方に固執してしまい、新しい監督のやり方に適応するのに時間がかかってしまうのです。
「あの監督の時はこうだった。前のやり方のほうが自分に合っていた」という思いは、必ずプレーに出ます。
プレー中だけではなく、ピッチ外での細かい変化に対する愚痴や不満も度が過ぎると、少なからずチームに悪影響を及ぼすと思っています。
自分は「変化を恐れず常に学び続けよう。疑う前に信じてやってみよう」と、常に透明でいることに努めてきました。いい意味で「自分の型」を持たなかったことが良かったのではないかと思っています。
最も重要なのは「自分との戦い」
もう一つ大事なことが、自分の武器を持つことです。
以前のコラムにも書いたのですが、自分はスペインに来る前までは、局面の戦いにこだわってサッカーをしてきました。だからスペインに来ても、1対1の強さはアピールポイントになりました。
どれだけ新しいことを学ぶ姿勢があって適応しようとしても、それだけでは試合には出られません。試合の中で適応できているか否かが問われるため、まずは監督のやり方に完全に適応していない段階でも、試合に使ってもらう必要があります。
自分の場合、戦術理解の部分でチームメートより劣っているために、監督が代わるとまず試合から外されますが、局面に強いという魅力を持っていることで、監督は「一回使ってみよう」となると思うのです。
さらに新しい戦術を一から学ぶ姿勢を持つことによって、戦術理解の伸びしろがチームメートよりも抜きん出ているため、試合に使ってもらった時に監督に成長を感じてもらうことができ、信頼を勝ち取っていけたのではないかと分析しています。指導者とすれば、自分のやり方をどんどん吸収してくれる選手は指導しがいがあるし、もっと成長を見てみたくなると思うのです。
監督の視点から考えると、伸びしろがある選手ほど、後に強い信頼を勝ち取ると思っています。だから練習についていけず、チームの中で一人だけ求められている動きと全く違うことをして怒られていた時も、逆にチャンスだなと感じていました。
自分の武器を持ちつつも、変化を恐れず透明であり続ける。サッカーにおける監督交代だけではなく、新しい環境や組織に適応する上でも、これらは大事な要素だと思います。
環境や人が変わっても、結局、自分自身との戦いこそ最も重要です。これは誰にとっても変わらない真理だと確信しています。
(写真:AP/アフロ)