[ハバナ 19日 ロイター] - 社会主義国キューバの国家評議会議長(元首)に就任したミゲル・ディアスカネル氏は19日の就任演説で、1959年のキューバ革命の精神は守り続けていくが、経済の一層の近代化も必要だと強調した。

ディアスカネル議長は「国民から与えられたのは、この極めて重大な時期に革命を継続せよとの負託だ」と述べた。また、2021年まで共産党トップの第1書記の座にとどまる前任のラウル・カストロ氏の功績を称え、同氏は引き続き改革のリーダー役であり、重大な決定には関わっていくと強調した。

カストロ氏は壇上で退任演説をし、リラックスしながらも引き続き影響力を誇示する姿勢を見せた。また、米トランプ大統領について「今の大統領になってからキューバと米国の関係は意図的にひっくり返され、攻撃的で脅すようなやり取りが蔓延している」と述べ、米国の貿易や移民政策を厳しく批判した。

両国は2014年にカストロ氏とオバマ前政権が国交回復で合意、キューバでは米国からの投資や観光客が増加していた。ただ、トランプ政権になってからはキューバ国営企業との商取引停止や米国人の渡航禁止を打ち出したほか、ハバナ駐在の米外交官らで謎の体調不良問題が起きたことから、関係が悪化していた。

ディアスカネル議長は、キューバの外交政策は妥協はしないものの、対等に向き合える相手であれば対話する用意はあると述べた。

米キューバ間の緊張緩和につながった極秘交渉についての共著があるウィリアム・レオグランデ氏はこの発言について「キューバ首脳は引き続き、米国との関係改善に重きを置いていることを示している。ただし、次の大統領登場を待つことになるかもしれないが」と評した。

米政府高官は、従来路線を継承するリーダーの下では、キューバ国民の自由拡大は期待できないと強調した。

ディアスカネル新議長の課題は、社会主義政策の維持と改革のバランスをどのように保ち、経済改善を求める若い世代を納得させていくかだ。

議長は、資本主義への転換はないと誓い、新体制の特徴は「経済と社会体制の近代化」だと強調したが、詳細については触れなかった。

カストロ氏の下、旧ソ連型の中央計画経済は限定的にしか改革されず、改善につながらなかったため、国民は新政権が新風を吹き込んでくれることを望んでいる。

カストロ氏は美容室やレストランなど個人営業の許可を拡大し、外国からの投資受け入れも促進。同氏は19日、引き続き改革や個人営業拡大を支持すると表明し、また議会に対しては、財政支出や債務管理に一層厳しく取り組むことを求めた。

ただ、厳しい経済状況に苦しむキューバ国民の多くは、変化よりも継続性を力説する政府に不満を抱き、元首が交代しても変化は期待できないと感じている。

ハバナを拠点に活動するジャーナリストのモニカ・リベロ氏は「ディアスカネル議長の発言の多くは過去についてのもので、現状についてはほぼ触れず、将来については皆無だった」と切り捨てた。