(Bloomberg) -- 任天堂が家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」と段ボールを組み合わせて遊ぶ「ニンテンドーラボ」を20日発売した。工作好きな子供など新規顧客層の開拓が狙いで、昨春発売したスイッチの販売を後押できるかが焦点。明治時代に花札製造で成長した同社が紙で新たな勝負に出る。

「ラボ」の最大の特徴は自ら工作した段ボールの部品がスイッチのコントローラーと連携し、ユーザーが身振りなどをゲームの画面に反映、体感もできること。コントローラーに内蔵された傾きを検知するジャイロセンサーや、物体の動きを捉える赤外線カメラ、細かな振動を再現する部品などの技術を駆使している。

2017年3月3日に発売され、販売好調なスイッチだが、課題は若年層の開拓にあった。任天堂が同年10月に開示した米国でのスイッチ購入者調査によると、家庭内で最も購入意欲が高かったのは20代から30代で全体の63%。15歳以下は同10%にとどまっていた。

そこで投入するのがラボだ。ジェフリーズ証券のアツール・ゴヤール氏は、ラボの発売は「スイッチ劇場第2幕」であり、「若い世代開拓の始まりでコアゲーマーからの転換」を意味すると分析した。

株価はヒット織り込みへ

16年6月に1万3360円の年間安値を付けた任天堂の株価は、スイッチの販売好調などを背景に上昇基調を強め、今年1月24日の取引時間中に4万9980円と5万円目前まで迫った。しかし、米国株の高値波乱なども背景に、ここ1、2カ月は4万5000円前後でもみ合っている。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役は、ラボは大ヒットするとみており、「今の株価にはこれがほとんど織り込まれておらず、販売好調が伝わるに連れ、株価の一段高もあり得る」と予想。岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストは、ロボットキットと連動する新たなソフト投入などに注目する。

セットで売れるか鍵に

東京都在住の奥山琴路さん(40)は、小学5年生の息子は「ロボットのように動くのとかが面白そう」と関心を示し、「次の誕生日プレゼントはスイッチと考えていた私自身もラボに興味がある」という。 ただ、段ボール製で「男の子が乱雑に扱っても壊れないのか。すぐ飽きちゃいそう」と不安も見せる。

ラボの希望小売価格は、ピアノなど5種類の工作が楽しめる「バラエティーキット」が6980円(税抜き)、「ロボットキット」が7980円(同)。スイッチ本体は2万9980円(同)。ラボをきっかけにスイッチデビューするには約4万円が必要だ。ジェフリーズのゴヤール氏は「任天堂がセットでの購入を説得できるかが鍵になる」とみている。

証券アナリストなど専門家4人による今期のラボの販売数予想は300万-1000万台。マッコーリーグループは、今期のラボからの売り上げ総利益を40億円と予想。ラボ単体での収益インパクトは小さい。

「ウィーパターン」再来も

米国モーニングスターの伊藤和典アナリストは、ラボは任天堂のヒット商品である「Wii(ウィー)Fit」や「Wii Sports」のように「幅広い顧客をひきつける商品になる」と予想。ウィーが健康志向の高いライトユーザーの需要を取り込んだようにスイッチもラボの登場で子供を中心にユーザー層が急拡大すると見通す。

スイッチの17年12月までの世界累計販売台数は1486万台。君島達己社長は1月末の会見で、今期(19年3月期)は年間2000万台を目指す考えを示し、累計販売1億台超のウィー(06年発売)を超える可能性を指摘した。モーニングスターの伊藤氏は子供やライトユーザーへの広がりで1億1000万台を超えると推計する。

中学3年生と小学5年生の男児を持つ東京都在住の鈴木純子氏さん(45)は、長男は「何ができるか分からない割に値段が高すぎる。面白そうじゃないので調べる気にもならないと話している」という。「ゲームが好きな子は物足りなさを感じるようだ」と指摘した。

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