(Bloomberg) -- 国際通貨基金(IMF)は17日公表した世界経済見通し(WEO)で、世界経済成長率が向こう2年は2011年以来の高水準を維持すると予想した上で、力強い成長局面が終了する種は既にまかれていると警告した。

IMFは今年と来年の世界成長率予想を1月時点の予測と同じ3.9%に据え置き、米国の成長率見通しは減税実施を踏まえて上方修正した。

ただ、その先の時期については中央銀行の金融政策引き締めや米財政刺激策の縮小、中国の緩やかな景気減速の持続を背景に、悲観的見方を示した。「向こう2、3年より先については世界の成長率は鈍化する見通しだ」とし、「需給ギャップが解消されれば、大方の先進国は、人口高齢化や生産性の伸び悩みに抑えられ、危機前の平均を大きく下回る潜在成長率に戻る見込みだ」と予測した。

IMFは各国が報復的な貿易制裁に訴えれば経済成長は脱線しかねないと警告。チーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏はWEOの序文で「貿易戦争を招きかねない最初の一発はもう発射されている」と述べ、「欧州とアジアが貿易黒字の削減に向けた行動を取らず、米国の財政政策が貿易赤字を拡大させれば、対立は激化する恐れがある」と指摘した。

広範な回復

世界的には、企業の投資拡大や貿易量の回復が経済成長のけん引役で、景気が昨年拡大した国・地域は世界の3分の2に上り、10年以降で最も広範囲にわたった。ただ、こうした世界同時の景気回復基調が少なくとも短期的には多少まだら模様になる可能性を示す兆候もあり、このうち米国は減税や政府支出を追い風に弾みを付けている。

IMFは今年の米経済成長率を1月時点の予測より0.2ポイント高い2.9%に修正。来年の成長率についても3カ月前より0.2ポイント高い2.7%と予想した。この予想には昨年議会で可決の上、成立した減税と1兆3000億ドル(約139兆円)規模の包括的歳出法の恩恵などが反映されているが、22年以降は財政赤字拡大と財政刺激策の終了で成長率が予想を下回るとの見通しを示した。

ユーロ圏の18年成長率見通しは1月時点より0.2ポイント高い2.4%とした一方、来年の予想は2%に据え置いた。

中国の今年の成長率は6.6%、19年は6.4%と予想し、いずれも3カ月前の予測と同じ水準とした。中国経済は投資と製造業から、消費とサービスへのリバランスが続くが、債務増加が中期的な見通しを曇らせているとIMFは指摘した。

日本の見通しも据え置き、今年は1.2%成長、19年は0.9%成長と予測した。

原題:IMF Spots Trouble Ahead as Solid Global Growth Poised to Slow(抜粋)

: 東京 守護清恵 kshugo@bloomberg.net.

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