【石川善樹×矢野和男】ハッピーな人は「揺らぎ」がある

2018/5/10

「フロー」をセンサーで測る

矢野 どの先生も、皆さん気さくで。一緒に共同研究をやろうか、みたいな話をいろいろして。「フロー」をセンサーで測るっていう論文も出させていただいたり。
あるいは、チクセントミハイ先生の教室で、みんなで「フロー」を測る実験をやったり。そうやっていろいろやって、それが面白い展開になりそうだったんだけど、でもなかなか、どう使うかが見えないままに、引き出しにしまってあったんですね。
石川 そうだったんですか。そういうこともやられていたんですね。
矢野 そうそう。やっていたんですよ。最初のころです。一方で、ハピネスに関するアンケートデータなんかも、いろんなところで取っていたんですね。それもみんな、いったん、引き出しで眠っていたんです。いまいち、ビジネスに使う、あるいは社会に役立てるという段階にならずに。
ところが、なんででしょうね。そのきっかけはよく分からないんですけど、ある時に、「あれはひょっとして面白かったんじゃないか?」と、はたと気付いたんです。
それこそ本を書いている途中かもしれないですね。いろいろな章立てを考えているうちに、ここに幸せの章を入れよう。一から研究し直すのは大変だけれど、そういえばあの時に取ったデータがあったな、と。それでまとめ直して。
人の幸せという概念はあいまいですよね。でも、幸せな状態というのは、客観的で、時代や文化を問わないんです。
晴れやかな気分で、物事に没頭できて、明るい未来を信じていて、美味しく食べられて、よく寝られるという。そういういい状態というのが非常に強く出ている要素が、データの中にあることに気付きまして。
まあ、そういう存在があるというのはもともと気付いてたんですけど、見つけた当時はなんか、ビジネスになるような気がしなかったんですよね。