[東京 16日 ロイター] - 衆参両院は15日、それぞれ本会議を開き、日銀の次期総裁に黒田東彦氏を再任し、2人の副総裁に新たに若田部昌澄・早稲田大学教授と雨宮正佳・日銀理事を起用する国会同意人事案を、与党などの賛成多数で可決した。今後、内閣の任命を経て「物価2%目標の実現に向けた総仕上げ」(黒田総裁)を目指す2期目の黒田体制が正式に発足する。

正副総裁の任期は5年間。4月8日に現在の任期が満了する黒田総裁が続投するため、新副総裁となる若田部、雨宮の両氏が就任する20日が新体制の事実上のスタートとなる。黒田氏は再任の記者会見を4月9日、両副総裁は20日に就任会見を行う見込み。

<黒田総裁、任期全うなら歴代最長に>

黒田氏が次の任期を全うすれば、かつて「法王」と呼ばれた18代の一萬田尚登氏の8年6カ月を超え、最長となる。

就任直後に打ち出した大規模な量的・質的金融緩和(QQE)とその後の追加的な緩和強化策によって日本経済をデフレとは言えない状況に回復させた手腕が評価された。

安倍晋三首相は人事案提示後の国会答弁で、黒田総裁による5年間の大胆な金融緩和政策によって雇用情勢が大幅に改善したなどとし、「黒田総裁の金融政策は間違っていなかった」と評価。黒田氏に対して「引き続き物価安定目標の2%に向けてしっかりと金融政策を遂行してほしい」と要請した。

黒田氏は3月上旬に行われた国会の所信聴取で、再任された場合は「物価2%目標実現の総仕上げを果たすため、全力で取り組む」との決意を表明。5年間で成し遂げられなかった物価目標を「何としても達成する必要がある」と強調し、実現に向けて「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく」方針だ。

<副総裁、リフレ派・若田部氏とエース・雨宮氏>

副総裁に就任する若田部氏は、大規模な金融緩和によってインフレ期待を高め、緩やかな物価上昇の実現を目指す「リフレ派」の代表的な経済学者。

所信聴取では、「金融政策に限界はない」と強調し、物価目標達成に必要と判断すれば、追加緩和を辞さない姿勢を示した。

追加緩和の判断では、日銀が2019年度ごろと見込んでいる物価2%の到達時期が「どれくらい後ずれするかがポイントになる」とし、手段として現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の強化のほか、「新たな手段」も視野に入れている。

雨宮氏は、企画局担当理事として黒田総裁の金融政策運営を実務面で支え続けた。日銀のエースとして金融政策の企画・立案を担う企画畑を長く歩み、所信聴取でも「20年近くデフレとの闘いの最前線に身を置いてきた」とし、副総裁に就任すれば「積年の課題である物価の安定という使命達成のため、その総仕上げに全力を尽くす覚悟」と述べている。

金融政策運営は「効果と副作用の両方の比較が重要」と強調し、「効果と副作用の評価については、引き続き注意深く検討していく」考えだ。

正副総裁は執行部として、最高意思決定機関である政策委員会を構成する。同委員会のメンバーは総裁1人、副総裁2人のほか、審議委員6人の計9人。当面の金融政策運営の方針などを決める金融政策決定会合は年8回定例開催され、総裁が議長を務める。

(伊藤純夫)