[16日 ロイター] - 米株式市場は最近の相場急落の半分以上を取り戻し、トレーダーの間では警戒感が急速に薄れている。しかし異例の「べたなぎ相場」が続いた昨年の再現は見込めず、投資家は頻繁な相場変動に慣れる必要がありそうだ。

株式相場のボラティリティ(変動率)の動きを示すVIX指数<.VIX>は昨年の平均が11と歴史的な低さだったが、今年2月6日に50.30と2年半ぶりの水準に上昇。その後17.6に下がったものの、昨年11月に付けた過去最低の8.56を大幅に上回ったままだ。

チャールズ・シュワブのランディ・フレデリック副社長(トレーディング・デリバティブ担当)は「不安感は大幅に後退したとはいえ、相場が調整前の安心し切った状態に戻ったわけではない」と指摘。VIXは先物から判断して今後2、3カ月のうちに15程度まで低下しそうだが、すぐにでも再び10に下がる兆しはないという。

MKMパートナーズのデリバティブストラテジスト、ジム・ストラッガー氏も「今回の相場急落は高ボラティリティ時代の前触れだ」と話す。

ストラテジストによると、ボラティリティが上がれば、株式相場が1%動いたこの2週間が当たり前の状態になるという。

チャールズ・シュワブのフレデリック氏によると、S&P総合500種指数が2744の場合、VIXが15ならば1日当たりの同指数の変動幅は21.54ポイント、変動率は0.8%に相当する。

S&P500種の変動率が1%を超えた日は、昨年は全体で8営業日しかなったが、今年は既に2月だけで8営業日に達している。

「債券王」と呼ばれるジェフリー・ガンドラック氏やヘッジファンドを運営するダグラス・カス氏などの著名投資家も米株式市場は今後緊張が高まると警鐘を鳴らす。

もっとも、ボラティリティが高まると株式市場は強気相場が必ず終わりを迎えるというわけではない。VIXの年間平均が最も高かった1999年、2003年、2009年はいずれもS&P500種が20%もしくはそれ以上も上昇した。

過去数年間でみると、ボラティリティが高まって売りが強まると値ごろ感からの買いが入った。最近もVIXの低位安定に賭ける金融商品に再び資金が流入している。

しかし今回はこれまでと少し様相が異なるかもしれない。米連邦準備理事会(FRB)はバランスシートを縮小し、政策金利を引き上げている。

さらに企業業績の行方も注目材料だ。インベスコ・パワーシェアーズのシニアストラテジスト、ニック・カリバス氏は、企業業績が落ち込み始め、それが加速すれば、市場のボラティリティは増すとみている。カリバス氏は相場下落のリスクをある程度抑えるためボラティリティが低い金融商品を検討するよう顧客にアドバイスしているという。

(Saqib Iqbal Ahmed記者)