【Amazonビジネス】日本企業を変える、法人向けECの可能性

2018/2/26
ビジネス購買も、Amazonで──。「Amazonビジネス」は、企業や飲食店、工場、大学など幅広い法人や個人事業主に対し、数億種類もの商品を販売するビジネス特化の購買サイトだ。昨年9月の日本版スタートから約半年が経ち、今、どのような手応えを感じているのか? アマゾンジャパンAmazonビジネス事業本部の星健一氏を訪ね、"EC界のパイオニア"が急ピッチで取り組む、ビジネス購買・調達革命の展望を聞いた。

日本だけのオリジナル機能も

──Amazonビジネスの日本向けサービス開始は昨年9月、米国でのスタートから約2年の期間がありました。
星:米国では2015年4月にサービスを始め、初年度売り上げ10億ドル以上を計上、17年時点で登録が100万社を超えました。これまでAmazonが提供してきた「品揃え」「価格」「利便性」を踏襲しながら、大企業だけでなく中小企業、個人事業主などすべてのビジネスの購買に特化し、様々な規模のお客様からご支持いただいています。
日本でも多くのお客様にご利用いただけるだろうという確信は早い時期から持っていましたが、Amazonは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」をミッションにしています。日本のお客様に本当にご満足いただくためには海外のサービスをそのまま持ってくるだけではダメだ、と。独自サーベイやデータ検証を十分に重ね、日本に合わせたカスタマイズに取り組み、2017年9月のサービス開始に至りました。
──日本に合わせたカスタマイズとは?
日本には独自の商習慣があります。例えば、そのひとつが月次の請求書払い。海外企業ではクレジットカードで商品を購入することが多いですが、日本には「月末締め、翌月末払い」という習慣が根強くあり、これは世界でも非常に珍しいものです。日本のビジネスニーズに応えるため、日本でのサービス開始に合わせて請求書払いの機能を開発しました。
また、購買時に見積書を稟議(りんぎ)に回す必要がある企業も多いため、見積もりデータをPDFで作成し印刷できる機能も加えました。サイトではAmazonを含む複数の販売事業者が同一商品を販売しており、価格を比較することができるので、相見積もりの手間を省くことも可能です。

紙の請求書、本当に必要?

──Amazonは古い慣習に切り込み、業界を大きく変えてきた企業のイメージが強いですが、今回は日本のしきたりに合わせた点が多いのでしょうか?
国民性の違いは多少ありますが、BtoCのショッピング体験においては各国のお客様の行動にあまり違いはありません。しかし、ビジネスでは商習慣が国によって大きく異なるため、ビジネス購買特有のニーズに対応する必要はあると考えています。
一方で、トラディショナルな手法を100%取り込んでしまうと、お客様の利便性を大きく高めるという変革は起こせません。お客様にメリットがないと感じるものは、意志をもって導入しないという判断もしました。
例えば、紙の請求書を希望される企業は多いですが、利便性やコスト削減を考えた場合に本当にそれが必要でしょうか? データやPDFがあれば問題ないと考え、あえて導入していません。

数億種類の商品を揃え、あらゆる規模・業態に対応

──コンシューマー向けサービスと違うのは、ほかにどんな点ですか?
Amazonビジネスでも品揃えは非常に重視しています。現在は数億種類を揃え、法人限定の商品も多数あります。
製造業であれば工業用・生産ライン用の部品、飲食店であれば厨房(ちゅうぼう)用の調理器具、大学の研究室であれば研究用の資材や測定器……、ありとあらゆる規模・業態のお客様のニーズにお応えできるよう常に商品の拡充を進めています。
Amazonは、地球上で最も豊富な品揃えの実現を目指しています。そして、その品揃えはAmazonが仕入れて在庫を持ち販売する直販ビジネスと、販売事業者様にAmazonで販売していただく出品ビジネスの両輪で成り立っています。
Amazonビジネスでも、お客様が必要とされる商品を提供するために直販ビジネスの品揃えを強化することに加え、Amazonに出品していただくサプライヤーの開拓を続けています。
しかし正直、まだ難しいこともあります。なぜなら、Amazonは“コンシューマー向けサイト”としての認知が高いため、建築資材や住宅設備の工具などを扱うサプライヤーが「Amazonで売ろう」という発想になりにくい。
展示会への出展や全国での営業活動によって「Amazonに出品してください」と、Amazonビジネスの認知を広げる地道な取り組みも行っています。

Amazonが販売事業者に提供する価値

──サプライヤーからの反響は?
非常に好意的な反応をいただいています。こういった業界専門の販売事業者様は、中小企業や町の工務店などが多く、自社の周辺エリアを商圏とされている場合がほとんどですが、当然、皆様には商圏を広げたい、ビジネスを拡大したいという思いがある。
しかし、もし福岡を拠点にする会社が東京で販売するとなると、東京に事務所を構え、人を雇って……と本当に大変です。これがAmazonに出品していただくと、福岡から10km、20km、30kmといった範囲ではなく、日本全国、世界をも販売対象にできる。
「今日、建築資材をAmazonで売りはじめました。明日、買う人がたくさんいます」と、すぐにはならないかもしれませんが、Amazonビジネスをご利用いただくお客様が増え、またサプライヤーである販売事業者様が増加することで、両者のニーズが相互に高まり、より利便性の高いサービスの実現につながるものと考えています。
Amazonには先行したアメリカやヨーロッパでの成功事例があります。成功のセオリーを日本に展開しながら、日本のお客様の要望を取り入れることで、お客様の購買・調達の効率化に貢献できればと思っています。
──法人価格や数量割引もAmazonビジネスの魅力のひとつです。
従来のBtoBの世界では、「今回は100個買うので10%ディスカウントしてほしい」といった販売先の営業マンとの交渉が必要でした。これではビジネスのスピードを効率的に高めることは難しいですよね。
Amazonビジネスの利点のひとつとして、購入数に合わせた割引率をサイトで見られることが挙げられます。すべてのお客様に同じ価格を提示し、公平に比較していただけることの価値は大きいと考えています。

経理を毎月襲う、数千枚の領収書からの解放

──サービス開始から5カ月、現状をどう見ていますか?
おかげさまでお客様の登録数も順調に伸び、非常に良いスタートダッシュが切れたと手応えを感じています。
なかでも、大きな反響をいただいたのが大学です。国内に800校ほどあると言われている大学のうち、すでに数百校にご登録いただいています。ここまでの反響は、正直まったく想定していませんでした。
ある大学では数千社のサプライヤーとお付き合いがあり、教授や職員の立て替え払いの精算も含めると、毎月、経理には数千枚の請求書が届き、数千回の支払いが発生するそうです。
これらすべてを1つにすることは難しいですが、ある程度、Amazonビジネスに集約していただくことで煩雑な手間が削減できるでしょう。
Amazonビジネスの請求書払いの場合、どれだけ多くの販売事業者様から商品を購入されても、月末の請求書は1件で済みます。これがどれほどラクか。企業の購買担当の方でなくともすぐにご理解いただけると思います。
また、飲食業など多店舗をチェーン展開する企業にも好評ですね。1つのアカウントの下に、グループやユーザーをいくつでも作れるので承認プロセスの管理も容易です。
これまでは各支店の備品購入を一元管理することが難しかった企業でも、Amazonビジネスの活用によって、本部で購入履歴の管理や分析ができるようになり、コスト削減が可能になりました。

Amazonがビジネスの架け橋になる

──ビジネスユーザー向けの購買サービスは日本でもすでに多くの企業が展開しています。
Amazonビジネスは独自のサービスを展開していると思っています。まず、対象にするお客様が1つのセグメントではないということ。それから、品揃えもオフィスサプライといった1分野だけでなく、キッチン用品、自動車部品、MRO商材、理美容向け商品など、ありとあらゆるものを扱っています。
また、特徴である豊富な品揃え、これを実現しているのはAmazonの出品ビジネスです。Amazonで購買する法人・個人事業主のお客様には豊富な品揃えや利便性を、Amazonに出品する販売事業者様にはビジネスの拡大機会を提供することで、双方のビジネスの架け橋としても貢献したいと考えています。
──購買データを生かした、企業へのコンサルティングの可能性も感じます。
はい。お客様に対してはソリューション営業も必要だと思っています。プロフェッショナルサービスと呼んでいる部門では、購買システムのAmazonビジネスとの連携だけではなく、購買効率を高めるための方法など、お客様が必要とされる様々な価値を提供していきたい。
こうしたソリューションは企業、飲食店、教育機関など業種・業態に応じて異なると思っています。例えば、すでにアメリカでは多くの政府公共機関がAmazonビジネスを導入しており、そのニーズに応じた利便性を提供しています。
先日、シアトルで地方自治体の方とお会いした際にも「Amazonビジネスで、利便性が向上し、コスト削減ができた」という声をいただきました。
それぞれの業種・業態のニーズを把握し、ソリューションを提供することで、サービスを強化していく方向性はあると思っています。

効率化が企業の成長を後押しする

仮に企業が調達に10億円使っている場合、10%削減できれば1億円のコスト削減になります。それほど購買は重要です。購買が効率化できれば、そのリソースを営業や商品開発、さらには海外拠点への再投資といった企業のさらなる成長に必要な分野に回すことができ、好循環が生まれていくでしょう。
投資コストがゼロですぐに始められ、オンラインで設定ができ、多くの品揃えがあり、利便性が高くて……と、お客様にとってAmazonビジネスを使わない理由はないと思います。
あらゆる企業・個人事業主の皆様に、ぜひ一度、気軽に使ってみていただければうれしいです。これからも、もっともっとお客様の利便性を改善していく所存ですので、ご期待ください。
BtoBビジネスの成長可能性はBtoCビジネスとは比べられないほどに大きい。大きな目標にはなりますが、AmazonのBtoCビジネスを超えられるように、この事業を成長させていきたいと考えています。
(聞き手:久川桃子 構成:尾越まり恵 撮影:竹井俊晴 デザイン:九喜洋介 編集:樫本倫子)