[ニューヨーク 12日 ロイター] - 経済の先行きに対する信頼感が維持されているため、米国株が現在の調整局面から全面的な弱気相場にまで陥る公算は乏しい──。株式ストラテジストなどの専門家は、過去のケースからこうした結論が導き出されると話している。

S&P総合500種が8日に1月26日につけた過去最高値から10.2%下落したため、株式市場は正式な調整局面に入った。その後2営業日で大きく反発し、12日時点で最高値からの下落率は7.6%まで縮小。ストラテジストによると、今後株安の流れが再燃する可能性は無視できないとはいえ、下落率が20%に達する弱気相場到来の予兆は見当たらない。

LPLファイナンシャルのシニア市場ストラテジスト、ライアン・デトリック氏は「経済がこれほど強いときに、弱気相場が始まるとは予想されない。景気後退に見舞われずに弱気相場になった例は滅多に見られない」と話した。

ゴールドマン・サックスの調査では、1976年以降で景気後退ではない局面で最低10%の株価調整が起きたケースは計11回あったが、その後弱気相場に突入したのは1987年の1回だけだった。

足元で2660前後のS&P総合500種が2300を割り込むことを意味する弱気相場について、ゴールドマンの株式ストラテジストチームは調査ノートで「景気後退を伴わずに発生しそうにないことは歴史が示している」と述べた。

景気後退は振り返ってみないと判断できないものの、米経済は依然として順調に推移していることが各種指標からうかがえる。

例えばS&P総合500種構成銘柄の今年の増益率は、トムソン・ロイター・エスティメーツがまとめた予想で18.8%となっており、年初時点の12%から切り上がった。デトリック氏は「先のことなど分からないが、企業利益が最大限のペースで拡大しているという事実だけでも、今後12カ月で景気後退がやってくる確率が非常に小さい(ことが示されている)というのがわれわれの意見だ」と説明した。

もう1つ景気後退の重要な手掛かりとなる米国債のイールドカーブも警戒信号は発していない、とチャールズ・シュワブのチーフ・グローバル投資ストラテジスト、ジェフリー・クライントップ氏は指摘する。

米10年債利回りは3カ月物短期国債利回りを128ベーシスポイント(bp)上回っており、その差は昨年末の102bpから拡大。こうしたスティープ化は、経済の強さの表れとみなされる。反対にフラット化や長短利回りの逆転は、景気後退の兆しと受け止められる。

株価が最高値から10%下落するまでわずか13営業日と非常に短期間だったことから、反発スピードも通常より速いかもしれない。

CFRAリサーチによると、過去70年で弱気相場にならなかった調整局面は21回あり、底値に達するまでの期間の中央値は98日、直近高値に戻るまでには84日となっている。チーフ投資ストラテジストのサム・ストボール氏は「非常に短い間に起きた調整は、普通の場合よりもより急速に底打ちして値を戻す傾向がある」と主張した。

ゴールドマンの分析に基づくと、1976年以降の景気後退以外の調整局面11回におけるS&P総合500種の下落率は15%が平均的。ただ、底値を待たずピークから10%値下がりした段階で株式の買いに動いた投資家のリターンの中央値は3カ月後、半年後、1年後それぞれ6%、12%、18%になっているという。

(Lewis Krauskopf記者)