「鷹の祭典」以来の勝負手。3・3、福岡で前代未聞の企画が実現

2018/2/10
「これは世界初の企画になると思います」
福岡ソフトバンクホークスのテナント課の大山隆太課長は満面の笑みで胸を張った。
来たる3月3日、ヤフオクドームで行われるオープン戦で、なんと前代未聞の「スタジアムグルメ食べ放題」という夢のような企画が実施されるのだ。
この日はホークスの今季オープン戦の開幕戦(阪神タイガース戦)にあたる。チームはこの2日前に宮崎春季キャンプを打ち上げる予定で、地元福岡での「2018年型ホークス」を初お披露目する試合となる。
宮崎での春季キャンプには連日多くのファンが訪れている
この一戦を、球団では初めて「シーズンスタートデー」と銘打って開催することになった。
「今シーズンの新しいフードメニュー、シート、演出を体感していただく」とのコンセプトに基づいており、食べ放題は目玉企画の一つだ。
その他、この日限り全席自由(一部座席を除く)となっており、クッションシートのバックネット裏席やソファシートをはじめ、貴賓室「スーパーボックス」(一部のみ)や「ビュッフェ付き5・6階ビクトリーウィング」といった普段なかなか観戦機会のないゾーンから、応援で盛り上がる外野席まで、あらゆる座席での観戦が可能になっている。
「2種類のソファシートへと全面リニューアルした『タカガールシート』や、クッション性がすぐれた『コンフォートシート』も今季から新たに登場しますので、ぜひお試しいただきたいと思っております」(広報企画部・鈴木直雅部長)
快適に観戦できるコンフォートシート
また、新メンバーを加えたオフィシャルダンス&パフォーマンスチーム「ハニーズ」や昨年の2.4倍の大きさになった迫力満点のスカイスクリーンビジョン(バックネット裏後方・2016年5月の連載で紹介)もこの日が初お披露目となる。

約100種類のメニューが食べ放題

今年は、ホークス球団にとって特別な意味を持つ1年だ。
球団創設80周年のメモリアルイヤー。この試合で、選手たちは記念の特別ユニフォームを着用して試合に臨む。
「その大事な年がスタートするにあたり、歴史あるホークスを支えていただいたファンの方々への感謝の気持ちをこめた企画を実施したいと思い、私の担当部門では世界初と思われるスタジアムグルメ食べ放題企画を発案しました」(以下コメントは大山課長)
肝心のチケット代金は、2500円(一部座席、グルメ・ドリンク類を除く。クラブホークス会員は2300円)となっている。通常のオープン戦ではバックネット裏の「<みずほ>プレミアムシート」が1枚4900円となっており、そのエリアの座席を確保できれば、それだけで十分お得になる。
ただ、やはり興味を引かれるのは食べ放題だ。メニューは主力商品を中心に「数を絞りました」と言うものの、それでも約100種類(全メニューは約300種類)。通常1000円を超える商品も多く出そろうとのことで、3つも食べられれば「勝った気分」になれるはず。
松田選手のスタミナステーキ丼
味玉チャーシューめん
和田弁当

食べ放題企画の「勝算」

一方でホークス球団として採算度外視かといえば、そうではない。
勝算あっての挑戦である。
「チケットはオープン戦としては過去に例を見ない売れ行きとなっております」
この試合は、優待券や回数券などの対象試合から外れている。オープン戦としては破格の扱いである。
本来、日本シリーズや優勝争いの試合とは全く関係のない時期。チケットを買ってもらうのに苦心することは容易に想像できる。
大山課長は言う。
「スポーツビジネス界には『エスキモーに氷を売る』(ジョン・スポールストラ著)というバイブル本があります。このバイブルは価値のないものをどのように売るかということを考えるマーケティング手法を教えてくれました」
「ホークスでそれを取り入れた代表例が『鷹の祭典』です。7月のオールスター明け。時期としては学校が夏休みに入ったばかりの頃でしたが、導入以前は全試合満員になることなどありませんでした。それが来場者全員にレプリカユニフォームを配布する手法でスタジアムを連日満員にすることを実現しました。この手法はプロ野球各球団ならびにJリーグなどにも波及し、スポーツビジネス界の1つの成功をもたらしたと思います」
「しかし、『鷹の祭典』が誕生して14年。次なる施策をなかなか誕生させることができずにいました。そして、今年、スタジアム食べ放題という新たな取り組みに挑戦することになりました。オープン戦ではありますが、チケットを完売にすることが狙いです」
また、食べ放題を実施することで、持ち込みをする来場者は大幅に減り、今後の抑止力への効果も期待できる。
運営面では客列整理などのオペレーション面も『鷹の祭典』級の対策を整えて当日に臨む構えだ。
「今まで食べたことのないメニューにぜひ挑戦してもらいたいですし、試合当日はもちろんのこと、今からどのお店で、何を、どのタイミングで食べるのかというシミュレーションも楽しんでいただきたいです」(食べ放題メニューの詳細などは2月下旬に球団から発表予定)
食べ放題がプロスポーツビジネス界に新風を巻き起こすのか。「3・3」は注目の一戦となる。
(写真:©SoftBank HAWKS)