DJ-英国のインフレ率が低下―中銀の目標にようやく到達
2014/01/15, ダウ・ジョーンズ
英国のインフレ率が低下し、英中銀イングランド銀行が目標とする2%にようやく到達した。インフレが最後に目標を下回ったのは2009年11月で、11年には5.2%のピークをつけるなど、ここまでの道のりは長かった。英中銀のキング前総裁は、インフレ率が目標を上回った理由について財務相に説明する書簡を9通も書かねばならなかった。
だが、カーニー現総裁にとっては、英中銀の政策姿勢を説明する上で役立つタイムリーな展開となっている。
英国のインフレ率低下は急激だった。イングランド銀行は昨年8月、インフレ率が当面は6月の2.9%という水準にとどまるとみていることを明らかにした。直近の低下は12月で、11月の2.1%から2.0%へ下がった。小売業者がクリスマス商戦で値下げしたほか、食料品価格の上昇率が大きく落ち込んだ結果だ。エコノミストの多くは現在、英ポンド高で輸入物価が下がるとともに世界的に物価上昇が抑えられるなか、英国のインフレ率は低下傾向をたどると予想している。
ただ、目標を上回っていた期間が大きな打撃となっている。インフレは目標を比較的大きく超えていた上に、賃金の伸びが極端に低い時期と重なっていた。つまり、実質賃金の締め付けは09年初めからずっと厳しかった、ということだ。インフレ低下によって締め付けはやや緩和するだろうが、直近で比較可能な10月の統計を見ると、インフレ率は賃金(賞与除く)の伸び率をまだ1.4ポイントも上回っている。しかもドイツ銀行によれば、インフレは低下しているものの、主要7カ国(G7)のなかでは依然として最も高い。
英中銀が根強い高インフレを長期にわたって看過する姿勢を見せたことで、長期期待の安定が損なわれる恐れがあるのでは、との疑問も生じている。家計のインフレ期待を示す指標の一部は徐々に上昇しているが、金融市場は無関心な様子だ。
しかし、英中銀は望ましいインフレ動向を歓迎する一方で、フォワードガイダンス(金融政策の先行きの手掛かり)の結果として自ら引き起こした頭痛を引き続き感じている。イングランド銀は8月、失業率が7%に低下するまで利上げについて検討しない方針を示した。失業率が7%へ到達するには何年もかかるとみられていたが、実際には予想をはるかに上回る速さで低下している。中銀は間もなく、次にどうするのか決めなければならないかもしれない。
インフレが目標水準まで下がり、今後数カ月も低下が予想されるため、利上げを求める圧力の源は少なくとも1つなくなる。そうなれば、政策金利がまだ当面は0.5%にとどまる理由を説明するのが容易になるだろう。
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