ジップカーの共同創業者が提唱

激しい競争を繰り広げるライドシェア業界のライバルたちが、コミュニケーションの活性化と環境志向的な交通システムの促進をめざして連携を進めている。
ジップカーの共同創業者ロビン・チェイスは、未来の交通とまもなく登場するであろう自動運転車に関して、統一的な枠組みを構築するためのイニシアチブを主導している。
大手運輸およびテック企業15社は2月1日、チェイスの提唱する「住みやすい街をつくるためのシェアード・モビリティ10原則」に従うことを約束した。
15社のなかにはウーバー、リフト、滴滴出行といった競合企業も含まれており、これらの企業が扱う旅客移動件数は合計で1日あたり7700万件にのぼる。
「私のよく言うジョークに、運輸は宇宙の中心だというものがある」とチェイスは言う。「だが実際のところ、それは真実だ。就職や通学ができるかどうか、友人と会えるかどうか。運輸こそが、その鍵を握っている。(運輸は)チャンスに通じる門なのだ」
住みやすい街をつくるためのシェアード・モビリティ10原則は、学者、調査関係者、都市および運輸関連組織とともにチェイスが考案したものだ。2017年10月に初めて発表されたこの原則では、企業、自治体、NGOの目標を連携させるための一連のルールが定められている。
ウーバー、リフト、ジップカー、モチベート、オッフォ(ofo)、ビア(Via)など、この原則に従うことを表明した15社は「車よりも人を優先させる」「公正な利用者負担金を維持する」「データを開示して共有する」などのルールを守ることになる。

データ共有の理由は「自衛本能」

交通や利用者に関する情報を都市や自治体の関係機関と共有することについては、言うまでもなく利点があり、ウーバーとリフトはすでにそうしている。
企業にとっての利点とは、自社の有用性を利用して規制当局の後押しを得ることだ。新市場への参入であれ、自社に有利なかたちでの法の制定であれ、さらなる目標へ邁進するための手段だ。
だが、ライバル企業同士が貴重なデータを共有し合うに至ったのは、いったいどういうわけなのだろうか──。
その答えは、自衛本能だ。
2016年の数字によれば、アメリカの全世帯の87%が1台以上の自動車を所有している。この圧倒的な数字は、ほとんどのアメリカ人にとってもっともよく使う交通手段がいまだに自家用車であることを示している。
自動車の所有期間の95%は駐車された状態にあることが実証されているにもかかわらず、自家用車優位の状況は変わっていない。
企業が連携せざるをえないもうひとつの理由は、チェイスの主導する連合にすでに世界中の大都市が加わっているという点にある。
ウーバーやリフトはこれまでに、有望な市場から締め出しを食らった経験がある(ウーバーは2017年9月にロンドンでの営業免許を取り消されている)。こうした配車サービス企業にとって、大都市が参加していることはまちがいなく魅力的なインセンティブになるだろう。

自動運転車の実用化競争

もちろん、自動運転車の実用化競争も考慮するべきだろう。シェアード・モビリティ原則の第10条では、こう定められている。「密集した都市部では、自動運転車はカーシェアリングでのみ走らせるべきだという主張を支持する」
自動運転車については、リフトが「オープン・プラットフォーム」ですでに前進を見せている。同社は希望者に自動運転車を配車するサービスの実現に向け、大手自動車メーカーやヌートノミー、グーグル傘下のウェイモといった自動化関連のテック企業と5件の提携契約を結び、大きな注目を集めている。
ウーバーも1年ほど前から、ピッツバーグやサンフランシスコなどの都市で自動運転技術の試験を行っている。
忘れてはならない重要なポイントは、これがスタート地点にすぎないことだとチェイスは言う。シェアード・モビリティ原則は都市や企業、非営利組織に対して、適切な規則と取り締まりシステムを備えた基盤を提供するためのものだ。
今後はさらに、より多くの関係者を説得し、仲間に引き入れることも求められる。たとえば、フォードやゼネラルモーターズなどの自動車メーカーと連携する必要があるだろう。
また、参加を表明した企業が原則を必ず守るという保証もない。とはいえ、おそらくは守るだろう。そもそも、こう語ったのはヘンリー・フォードではなかっただろうか。「団結は始まりであり、団結を維持することは前進だ。協力こそが成功なのだ」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Guadalupe Gonzalez/Editorial assistant、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:aetb/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.