最も成功している人々はたいてい、よく働き、適切な習慣を毎日実践している。また多くの場合、自己をより良くするために本を読んでいる。もしあなたも自分を高めるために本を読みたいのであれば、ビジネスリーダーたちが推薦する32冊から選んでみてはいかがだろうか。

ビジネスリーダーが推薦する、自分を高めるための32冊(前編)
17.『Finding My Virginity』(自分のヴァージニティを見つける)リチャード・ブランソン(未邦訳)
「私がこの本を愛している理由は、彼がヴァージンを立ち上げるためにどれだけ苦労したか、夢をかなえるにはどれだけリーダーとしての勇気が必要かを語っているところだ」
──ケリー・クック:シアーズ、Kマートの最高マーケティングおよびデジタル責任者
18.『夜と霧』ビクトール・E・フランクル(邦訳:みすず書房)
「ビクトール・フランクルはホロコーストを生き抜き、生涯を人助けに捧げた。彼は優れた神経科医、精神科医で、作家としても卓越していた。史上最悪の残虐行為の一つに遭遇しながら、彼は決して愛を失わなかった。
(この本は)逆境を乗り越えるための力強い洞察に満ちている。とくに、次の言葉が印象的だ。『刺激と反応の間には空白があり、われわれは選択の権限を与えられている』
私は創業者、リーダー、がんを3度克服した人間として、何度も制御不能な状況に置かれた。その状況を意識し、自分選択の自由があると思い出すことで、私は耐え抜く強さを手に入れた。私のキャリアは、私の選択によって定義されてきた。戦い、耐えるという選択によって、すべてが一変した」
──ジル・ジョンソン:ニューヨークを拠点に、生き抜いた人々を祝福し、団結させ、たたえるためのジュエリーをつくるオー(Awe)の創業者兼クリエイティブ・ディレクター
19.『ザ・トヨタウェイ』ジェフリー・ライカー(邦訳:日経BP社)
「私はファーマーズ・ドッグ(The Farmer's Dog)を立ち上げてすぐに(この本を)読んだ。この本は、完璧なプロセスなど存在しないこと、つねに改善の余地があることを教えてくれた。つまり、現状に甘んじてはいけない、現状に満足してはいけないということだ」
──ブレット・ポドルスキー:ニューヨークを拠点にペットフードを直販するファーマーズ・ドッグの共同創業者。『Forbes』が選ぶ「30歳以下の起業家30人」一人。
20.『起業家はどこで選択を誤るのか──スタートアップが必ず陥る9つのジレンマ』ノーム・ワッサーマン(邦訳:英治出版)
「スタートアップについて考えているすべての人に(この本を)おすすめしたい。テーマは組織行動と起業家精神で、実例に基づいた内容となっている。
企業の共同創業者兼CEOとしてすでに直面していたジレンマと、将来的に直面するであろうジレンマを提示してくれた。さらに、何が間違っているかを思い出させてくれ、いくつかのことが起きた理由を説明してくれた。
われわれはCEO、共同創業者、創業者として、日々いくつものジレンマに直面している。この本は、疑問の答えと問題の解決に必要な知識を与えてくれる」
──プリモシュ・ぜレンセク:Bluetoothトラッカー関連の多国籍テクノロジー企業チポロ(Chipolo)の共同創業者兼CEO
21.『戦争と平和』レフ・トルストイ(邦訳:岩波文庫 他
「動機は感情から生じ、感情は刺激によってもたらされる。世界遺産ともいえる文学作品には、人間や文化に関する普遍的な洞察が含まれている。この物語では(軍隊の文脈を中心に)繰り返し登場する考え方が、最高の計画や準備も低い士気によって台無しになり得るというものだ。
これはそのままビジネスに当てはめることができる。私はこの本を読み、制御不能なことが起きても冷静でいられるようになった。また、自分が関わるすべての人をよく知り、尊重したいという気持ちが強くなった」
──アラップ・バラット:エンタープライズ向けIoTプラットフォームを提供するインフィスウィフト(infiswift)のCEO兼CCO
22.『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説──アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』トニー・シェイ(邦訳:ダイヤモンド社)
「この本は、リーダーとして既成概念にとらわれず物事を考える手助けをしてくれる。幸せを基準に文化を構築するだけでなく、その文化を積極的かつ効果的なやり方で届けるということだ。
この本は、周りの人たちの幸せを第一に考えれば、自分自身の幸せも考えられるようになると強調している。これを社内の共通認識にしたことで、何より顧客の体験を最優先できるようになった。
当社の本質的価値は、カスタマーサービス部門だけでなく、全従業員が『最高の体験』を提供することだ。社内文化を構築したい人、その哲学をサービスに投影したい人には、必読書として強くおすすめする」
──スニーラ・マドハニ:定額支払いのテクノロジーソリューションを提供するファットマーチャント(Fattmerchant)の創業者兼CEO
23.『SHOE DOG(シュードッグ)』フィル・ナイト(邦訳:東洋経済新報社)
「情熱をビジネスにすることは決して容易ではない。そして、そうした過程を経た人たちほど、起業家としての現実を教えてもらうときの適任者はいない。(この本は)すでに成功した起業家と駆け出しの事業主の両方に対して、会社を立ち上げることがいかに難しいかを教えてくれる。
ナイキの創業者フィル・ナイトは数回にわたって破綻の危機を経験し、最終的に大衆市場で成功を収めた。心を揺さぶるビジネス書はないと思っていたが、彼らが苦境に陥った場面で、私の心臓は確かに高鳴った。
まさに今、浮き沈みを経験している起業家、苦境を切り抜けようと奮闘している起業家、忙し過ぎて成功を祝うこともできない起業家たちのなかで、今も父親から父親らしい助言を求めている人はぜひこの本を読んでもらいたい」
──ジェームズ・ミセリ:先端技術を導入したラクロス用品を製造するエポック・ラクロス/C6コンポジッツ(Epoch Lacrosse/C6 Composites)のCEO
24.『1分間顧客サービス──熱狂的ファンをつくる3つの秘訣』ケン・ブランチャード、シェルダン・ボウルズ(邦訳:ダイヤモンド社 )
「どの業界に属しているにしても、カスタマーサービスの重要性という共通テーマを持つさまざまな企業に応用できる本だ。
優れたカスタマーサービスとは何かを深く考察し、社会全体が平均的、さらには平均以下のサービスに慣れてしまったと指摘している。そのためわれわれは、上質なサービスを受けると面食らってしまうほどだ。
私は事業主として、この本を読むことをすべての同僚に義務づけている。カスタマーサービスについて深く学び、成長に役立ててもらうためだ。
この本は読者に、自ら熱狂的なファンとして生きるよう伝えるだけでなく、働く場所で変化を起こせば、カスタマーサービスに対する人々の見方が変わると勇気づけている』
──ダイアン・ギリン:手ごろな価格でぜいたくなメディカルスパを提供しているクチュール・メッド・スパ(Couture Med Spa)の共同オーナー兼アドバンスト・ナース・プラクティショナー
25.『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』リチャード・アダムズ(邦訳:評論社)
「少し古い本だが、私は10代のときに読んだペーパーバックを今も持っている。この本は、ウサギの群れが災害を回避するために住みかを捨て、危険を冒して新しい住みかを探すという素晴らしい物語だ。
しかし同時に、対照的なスタイルを持つ2匹のリーダーの物語でもある。1匹目のリーダーは恐怖によって支配する。彼は従う者たちの声を聞かず、自分のことばかり考えている。もう1匹のリーダーは正反対だ。彼女は皆の話をよく聞き、ほかのウサギたちを気遣い、個々の長所や貢献を理解したうえでそれを生かしている。
私は両タイプのリーダーと働いたことがある。私が知っている最高のリーダーたちは厳しく、要求は多いが、明確なビジョンを持つ。そして、周囲の才能を最大限に活用すれば、より良い成果を上げられると理解しており、周囲の話をよく聞く。彼らは敬意を生み出し、チーム内の壁を取り除く。本当のチームをつくるためだ」
──ジム・ロジャーズ:バーベキュー・リブ専門店「トニーローマ」の親会社ローマコープ(Romacorp)のCMO
26.『なぜみんなスターバックスに行きたがるのか?』スコット・ベドベリー(邦訳:講談社)
「この本は、ブランドが守るべき基本について論じている。まず、ブランドは生き物だ。スコットが述べている通り、『人がブランドに命を与える。そして、すべての良いブランドには、長期的に育ててくれる良い親が必要だ』
われわれの差別化要因は、単なる商品やサービス以上の存在であることだ。われわれは、小さなタッチポイントと体験の集合体だ。私はスコットから直接このことを教わった。
12年前、彼が「アウトバック・ステーキハウス」のコンサルタントを務めていたときのことだ。私は「フィットライフ・フーズ」(Fitlife Foods)を立ち上げる前、そこで働いていた。
そして今、私はリーダーとして、ブランドはわれわれのビジネス手法であると考えている。つまり、小売りフロアのウェルネスコーチから調理センターの料理人、人事部門のリーダーまで、全員がブランドの責任者だということだ。
チームメンバーや顧客とのやりとりはすべて、ブランドの意思表示だ。だから、全員を教育、強化、育成している」
──デイビッド・オスターウェイル:自然素材のみを使用した食事を提供するライフスタイルブランド「フィットライフ・フーズ」の創業者
27.『The New Rules for Marketing and PR』(マーケティングとPRのための新しいルール)デイビッド・スコット(未邦訳)
「私は初めてこの本を読んだとき、『これだ』と直感した。スコットは、マーケティングとPRの変化、なかでもソーシャルメディアや直接的なカスタマーエンゲージメントが果たす重要な役割を明示している。
とくに、消費者と売り手の新たな関係についての説明は秀逸だ。この新しいパラダイムはグローバル企業だけでなく、すでに確立された企業やスタートアップ、地域密着型の企業、NPOにとっても重要だ」
──バッサム・コチェイチェ:農産物の鮮度を長く保つ環境志向のバッグを製造するスワッグUSA(The Swag USA)のマネージングディレクター
28.『図解リーン・スタートアップ成長戦略』アッシュ・マウリャ(邦訳:日経BP社)
「ビジネスを始めたい人、既存のビジネスを拡大したい人におすすめの本。事業開発の方法論と成功事例が1冊にまとめられている。
この本に書かれている概念(スループット会計、制約条件の理論、ビジネスモデル、構築/計測/学習)は、企業の成功に不可欠なものだ。製品をつくる企業から、顧客価値を生む企業へと発想を変えてくれる素晴らしい本だ。
アッシュはまた、顧客価値の創造に実験という科学的な手法が必要である理由を的確に説明している」
──マシュー・ポルスタイン:配送状況、不在、返金請求を追跡するためのソフトウェアを提供するレイトシップメント(LateShipment)の共同創業者。また、ソフトボールとバスケットボールに特化したスポーツ用品会社リップイット(Rip-It)の社長兼共同創業者
29.『1分間マネジャー──何を示し、どう褒め、どう叱るか!』ケネス・ブランチャード、スペンサー・ジョンソン(邦訳:ダイヤモンド社)
「マネージメントやリーダーシップをテーマにした本のなかでは一番のお気に入り。古い本だが、時代を超越したメッセージを伝えている。
リーダーとしてのキャリアを始めたばかりの人や、現在のポジションで苦労している人が土台を築くのにぴったりの一冊だ。あらゆるレベル、あらゆる時点のリーダーに応用できる理論が書かれている。
私の好きな一節は私にとって最高の瞬間は、人のために使っている時間』。お気に入りの教訓は人の優れた行いをきちんと見ることで、人が最大限の能力を発揮できるよう手助けする』だ」
──ランディー・スチュワート:米国北東部で輸送流通サービスを展開するA・デュール・パイル(A. Duie Pyle)のCOO
30.『パリ・ロンドン放浪記』ジョージ・オーウェル(邦訳:岩波文庫)
「私が初めてジョージ・オーウェルの作品に触れたのは、有名な『動物農場』(邦訳:角川書店)と『1984年』(邦訳:角川書店)だった。私は、彼のウィット(「スペイン内戦の『礼節』」=the "civility" of the Spanish Civil Warといった表現など)を楽しみ、政治、経済、社会学を織り交ぜた解説に心を奪われた。
この本は1920年代後半、彼が放浪生活を送っていたときの回顧録だ。当時のヨーロッパは、ついでに言えば米国も、創造的な金融政策による好景気に沸いており、その後、世界恐慌が訪れた。好景気による資産インフレによって貧富の差は広がり、労働者の生活水準は低下した。
オーウェルは、抑圧された貧困層の人間性や精神を見事にとらえている。1929年、浪費は頂点に達したが、現代人のわれわれから見れば、じつは衰退期に入っており、世界恐慌と第二次世界大戦が間近に迫っていた。
とくに心に残っている一節がある。『100フラン持っているときは、臆病になり、すぐパニックに陥る。3フランしか持っていないときは、細かいことなど気にしない。3フランでは明日まで食べることしかできないため、それ以上考えることができないのだ』
振り返ってみると(この本は)私が行動経済学と労働者階級の苦難について研究するきっかけとなった」
──マイク・ダフィー:政府機関や公益事業者がより個人に寄り添い、素早く対応するための技術を提供するシティーベース(CityBase)のCEO
31.『Private Parts』ハワード・スターン(未邦訳)
「大学の1学期目に父親からもらった本で、今もお気に入りの一つだ。何よりスターンは私に、1つの視点を育て、共有することの価値を教えてくれた。
ビジネスの世界では、自分の仕事に不可欠な事柄であるにもかかわらず、自分の視点を持たない人があまりに多い。
仕事に関連する事柄について意見を述べる機会に恵まれたら、あなたはチームのメンバーに対して自分の意見を伝えなければならない。結局、正しいかどうかの問題ではなく、貢献しているかどうかの問題だ。意見を述べることで、会話を交わした人たちとより深く理解し合うことができる」
──P・J・ワーズフォールド:ぴったり合う靴を探すためのAIプラットフォームを提供するフッチー(FTSY)の製品責任者
32.『幸福優位7つの法則──仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論』ショーン・エイカー(邦訳:徳間書店)
「この本は、1つのシンプルな前提に立っている。心の柔軟性は、正しい養分を与え、正しい行動によって訓練すれば、自分のために生かすことができるという前提だ。
起業家のほとんどがそうであるように、私はつねに永遠の楽観主義者だと思っているが、どれだけ単純な内容であっても、良い物事だけに集中することで、いつも人生の明るい面に目を向けるよう心を訓練できた。
多くの場合、純粋な意思が成功と失敗を分ける。そのため、悲観的になることなく、心を鍛え、解決策を見つけるぞという意思を強化すれば、より良い結果になる可能性が高まる」
──トレイシー・ウィードマイヤー:小売業・製造業向けバーチャルリアリティー(VR)ソリューションを世界展開するインコンテクスト・ソリューションズ(InContext Solutions)のCTO
原文はこちら(英語)。
(執筆:Christina DesMarais/Contributor, Inc.com、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:Vimvertigo/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.