中国企業の米国特許取得件数は、2016年から2017年かけて28%増加した。イノベーションの拡大は、中国政府の戦略の一部でもある。

国別リストで米日韓独に次ぐ存在へ

中国企業がアメリカで特許を取得する件数は年々増えており、ここ10年足らずで10倍にも達している。世界第2位の経済圏である中国をシリコンバレーにとっての製造工場から、研究開発のパワーハウスに変貌させようする中国政府の戦略が成功しつつある兆しと言える。
フェアビュー・リサーチLLCの一部門であるIFIクレイムス・パテント・サービスが1月9日付けで公開したレポートによると、中国の発明家たちは2017年に1万1241件に上る米国特許を取得した。これは前年同期と比べて28%増だ。
これにより中国は、特許取得者の国別リストで初めてトップ5に躍り出た。つまり、アメリカ、日本、韓国、ドイツには劣るものの、台湾よりは上位に付けたということだ。
アメリカで特許の申請と取得を目指す中国企業の手助けをしているスターン・ケスラー法律事務所(在ワシントンDC)のドン・フェザーストン弁護士によると、こうした特許申請を行っているのは、主にエレクトロニクス分野の変貌を目指す実績ある企業とスタートアップの両方だという。
「中国企業はアメリカで新製品を発売し、アメリカで自社製品を輸入し、アメリカにセールスオフィスを置いて自分たちの製品を市場に送り出すことを望んでいる」と、フェザーストン弁護士は述べた。「彼らは市場競争力を持ちたいのだ」
特許の数は、不完全ではあるものの、ある企業ないしは国がどれほどイノベーティブであるかを反映した指標になる。
特許があれば堂々と権利を主張できるが、それ以上に重要なこととして、競争の激しい市場で企業を守ってくれる。アメリカで特許を取得することは、その企業が独自の製品を世界最大の市場で販売するという意志の表明だ。

10年間にわたるイノベーション戦略

中国政府の官僚は、ここ10年間にわたってイノベーションにプライオリティを置いてきた。そのために、まずは中国国内での特許件数を延ばす(それが中国企業であれ、外国の組織であれ)ことと、世界的な舞台で競争できる事業を構築することが重視されてきた。
中国の国家知識産権局(SIPO)は、2016年に130万件の特許申請を受け付けた。世界知的所有権機関(WIPO)のレポートによると、これはアメリカ、日本、韓国、欧州の申請件数の合計をも上回る数字だ。
ただ、米国特許全体に占める割合では、中国はまだ他国に大きく遅れをとっている。IFIによると、米国特許商標庁は2017年に32万3件の特許を付与したが、そのうち中国企業の特許は3.5%だった。
それでもなお「中国の伸び率は注目に値する」とIFIのシニアアナリスト、ラリー・キャディは語る。
これまで主に外国企業向けの製品の組み立て役にすぎなかった中国のエレクトロニクス製造者は、近年になって独自の技術と自社ブランド製品の開発を始めている。
コンピューターやTVディスプレイで知られる中国のBOEテクノロジーグループ(京東方科技集団)は特許数が63%も増え、IFIのトップ50特許取得者のリストの21位に入った。同社の順位はすでに日本のセイコーエプソンよりも上位にあり、ゼネラルエレクトリックと比べても特許の数の差は200件以下だ。
BOEの知的所有権マネジメントセンターを率いるリ・シングオ技術担当副社長は「科学とテクノロジーのイノベーションにおいて、アメリカは世界的な強い影響力を持っている」と述べる。「中国企業はグローバリゼーションの文脈のなかで、ハイテクイノベーションと国際的競争力の両面で著しい進歩を示してきた」

3D処理、機械学習、ドローン分野に急速な伸び

BOEは次世代の有機発光ダイオード画面テクノロジーの研究を進め、その方面に投資を行っている。同社が望んでいるのは、アップルなどに新世代の高解像度ディスプレイを供給することだ。
いっぽう、中国で最大の電気通信機器メーカーであるファーウェイテクノロジーズ(華為技術)は、1474件の米国特許を取得した。これはBOEより61件多く、前述のリストでは20位となっている。同社が初めてトップ50に入ったのは、2014年のことだった。
また、LED製造者のシンセン・チャイナスター・オプトエレクトロニクス・テクノロジーは特許取得件数が一気に25%も増加し、IFIのリストの45位にランクされた。もちろん、すべての中国企業が増加傾向にあるわけではなく、たとえばZETは取得件数が16%ほど減少している。
特許の取得がもっとも盛んな領域は、デジタルデータ処理とその伝送(いずれもIBMの牙城)、半導体、無線通信といったハイテク分野だ。また、急速な伸びを示している領域としては、中国企業が熱心に投資を行っている3D処理、機械学習、ドローンなどがある。
ボストンにあるウォルフ・グリーンフィールド法律事務所のジェニー・チェン特許弁護士によれば、アメリカで教育を受けた人たちが設立したスタートアップ(たとえばガンと戦う抗体などを研究しているバイオテックのスタートアップ)も、米国特許の取得に取り組んでいるという。
「そうした人々はグローバルな市場を目指しており、そのビジネスにはアメリカで特許を取ることが不可欠だ」とチェンは語る。「米国特許の保護がなければ、グローバルな市場へ進出するための投資を集めることはできないだろう」
IFIのトップ50のリストは、歴史的にはアメリカ、日本、韓国の企業が大半を占め、ヨーロッパ企業もいくつか散見されるというものだった。
このうち、韓国とドイツの企業は特許の取得件数を延ばし続けているが、日本はほぼ横ばいで、台湾は2.5%減少している。いっぽう、イギリスの発明家たちは従来より10%増の特許を取得し、カナダとスイスも4%を超える伸びを示した。
(協力)Yuan Gao, and Jing Cao
原文はこちら(英語)。
(執筆:Susan Decker記者、翻訳:水書健司/ガリレオ、写真:simon2579/iStock)
©2018 Bloomberg News
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM