「グローバル・リスク分析」2018年版
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今年のPHP総研「グローバル・リスク分析」2018年版は、光栄にも執筆者の一人として参加させて頂きました。
私が主に担当したテーマは、他の国際政治経済やテロといったテーマとは少し毛色が違ったものですが、こういった話題も取り上げて頂けることは少なからず意義があったのかなと思っています。
他のテーマも時機を得たもので、なるほどと唸らせる新たな着眼点や新情報も満載です。
PHPのリスクレポートは、いつも予想が先読みし過ぎて、「むしろ2年後くらいに当たる」という評判すらありますが、海外の有名なリスクレポートより精度が高いという人もいて、世界に出しても恥ずかしくない内容だと思います。
また、海外のリスクレポートは日本を中心にした見方にはなっていないので、このような営みがPHP総研さんによって行われていることはとても貴重だと思います。
1テーマ1ページと読みやすくなっているので、年末年始のお時間のある時ににでも、是非読んでみて下さい。本日、「グローバル・リスク分析」2018年版を発表しました。私も微力ながら参加させていただきました。
中東情勢が分刻みに変わり、その度に見通しの再検討・修正が必要で、こちらの日程も分刻みなのでもう何が何だか。。。取りまとめのPHP総研にブラック労働を強いたかもしれません。
お役に立てれば。これからの世界を予測するうえで「100年前にも同じような流れがあった」ということを知らなければならない。
「19世紀から20世紀初めにかけてのイギリスでは経済学が専門分野として確立されつつありました。なかでも支配的だったのは、自由貿易のメリットや、金本位制による国際収支の『自動調整メカニズム』を信奉する経済学でした。現在の新自由主義者たちは、金本位制についてこそは否定的ですが、自由貿易メリットや市場メカニズムへの信頼を当時の経済学から引き継いでいます。」(柴山桂太『静かなる大恐慌』)
100年前のこの動きは第一次グローバル化と呼ばれる。
第一次グローバル化がもたらした格差は二度の世界大戦によってしか是正されることはなかった。その間、世界は世界恐慌、帝国主義の加熱、ナチスの台頭そして二つの世界大戦という悲劇を経験した。
さて、現代に目を移してみると似たような状況を確認できる。1980年代に始まる新自由主義(第二次グローバル化)は、格差を拡大させ、世界に不安定をもたらした。その結果、生まれたのが、トランプ、ブレグジットに典型な反グローバル化の流れだ。グローバル化は永遠ではない。グローバル化は平和をもたらさない。その代わり、グローバル化はナショナリズムを呼び起こしたのだ。
それでは、この先の世界はどのように動いていくのだろうか。一番の危険要素が中国の台頭である。中国は2000年代に急速に経済成長、軍拡を進めた。結果、いまや世界第二位の経済大国となり、軍事大国となった。この動きは加速するだろう。そうなれば「トゥキディデスの罠」は避けられない。100年前のドイツがそうだったように。
では、希望はないのか。いや、そんなことはない。驚くべきことに第一次グローバル化は同時に処方箋も生みだしたのだ。ケインズ政策である。当時の人々は、ニューディールのような、ケインズ政策を進めることによってなんとか不況から抜け出そうとした。結局はWW2で終結することになるが、処方箋のヒントは提示してみせた。
未だに経済自由主義イデオロギーは支配的である。イデオロギーの超克は、そう簡単にはできない。ただ、やるしかない。経済自由主義を打破しない限り、国民国家は繁栄できない。歴史が提示した処方箋に、少しは目を向けてみようではないか。