ディープマインド、ヘルスケア進出に横たわる個人情報と倫理の問題
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医療におけるデータ取得について、二つの問題があると思います。
①存在するデータをどう取り出すか、②そもそも必要なデータが存在するのか。
①存在するデータをどう取り出すか、について、個人情報保護等の倫理面に配慮しつつデータ収集することの困難さについて書かれています。
医学研究では、前向き研究でなければ、最近はほぼ論文が受理されません。
研究計画書を作成し倫理委員会での審査を受け、患者さんに説明の上同意書をいただき、データを収集します。
データの信頼性に優れており、データの使用に倫理的な問題はありません。
しかし、この場合、得られたデータにはバイアスがかかっています。
侵襲・介入の少ない、あるいは全くない研究であっても、全ての患者さんに研究に参加いただくことはできません。
断られることもあり、医療者が研究への参加の依頼をためらうこともあります。
比較的元気で医療者の依頼に前向きに応えるタイプの患者さんから得られたデータですので、そのような患者さんにしか適用できない研究結果です。
全患者さんからデータをとり、解析すべきです。しかしこの場合、個人情報保護といった倫理面の問題が生じます。
②そもそも必要なデータが存在するのか、について記事で取り上げられておらず、一般に、この点には言及されません。
医療における2大エンドポイントは生死とQOLで、前者はハードエンドポイント(誰がどう測定しても同じ)の代表、後者はソフトエンドポイント(事前に決められた測定方法で注意深く評価しないと信頼できるデータが得られない)の代表です。
同じQOLなら長く生きる方が良く、同じ生存期間なら良いQOLが望まれ、いずれも重要なエンドポイントです。
さあデータ解析をしよう、と思って収集できるのは、生死・癌の発症・腎不全発症などのハードエンドポイントのみです。QOL、症状などのソフトエンドポイントは、診療において(少なくとも標準的な方法では)測定しないので、データが存在しません。
個人情報保護や医療従事者の抵抗感などが完全にクリアされ、どのデータにも自由にアクセスできるようになったとしても、得られるデータは、ハードエンドポイントのみです。
広く薄く、しかし標準的にソフトエンドポイントを取得しておいて将来の解析に備える、という戦略が必要と考え、研究として取り組んでいます。①個人情報保護への抵抗➁短期的なROIはマイナス③厳格なバリデーションが求められる
という3つの障壁。
これに対するクリティカルな解決は皆無に等しいが、①については、ブロックチェーン×個人からの情報取得で何とかならないものか?と考えます。
ところで、日本のヘルスケア業界はリアルワールドデータ(RWD)活用が流行っており、それに伴う企業が注目を浴びていますが、ナショナルデータベース(NDB)のような他者のデータをクレンジング・解析するだけの生業は永続的に続くわけもなく・・・
彼らはどう食っていくのかなあ。ディープマインドのつまずきは、ヘルスケア業界に進出をもくろむテクノロジー企業全体に影響を及ぼす可能性がある。。。
とありますが、むしろ今回の件を参考に今後はより慎重に対応できるので信頼感を伴った取り組みがしやすくなるんじゃないでしょうか。
改めて、これからヘルスケア分野におけるAI活用が活発化していくことを示す興味深い記事です。