農業流通を変えた、スーパーに産直コーナーを作った企業

2017/12/17
和歌山県北部、紀の川市。1年を通して温暖な気候に恵まれたこの地域は、ミカンとカキの生産が盛んだ。取材に訪れた11月は、まさに、果物の出荷がピークをむかえていた。
細い道の先の一角に、収穫物を満載した農家の車が次々と集まってくる場所があった。
「スイミングスクール」の外見の建物。ここに農作物を満載した車が集まってくる
その建物の正面を見ると、「カツラギスイミングスクール」の文字。トラックはその横のでこぼこ道を走り、奥へと進んで行く。ついていってみると、そこには農作物が集まる集荷場があった。かつてスイミングスクールだったところにコンクリートを流し、プールを埋めて作った場所なのだという。
ここが、農作物の新たな流通網を作る農業ベンチャー、農業総合研究所が2009年、初めて作った集荷場だ。現在、ここに登録している農家は約1000軒。農家は農作物をここまで自ら運んできて、行き先別に仕分けしてから、主に関西のスーパーマーケット向けに出荷している。
農協が圧倒的な力を持つ農作物の流通。そこに、農家が売値や売り先も決められる仕組みを設けて、急成長を遂げているのが農業総合研究所だ。及川智正社長が会社を立ち上げ、この紀の川市の集荷場から事業をスタートした。
建物の内部は農作物の集荷場。多くの農家が慌ただしく作業していた
全国の集荷場を通じた農作物の商流は、現在、取扱総額が年間70億円を超えるまでに拡大している。農業総合研究所は昨年6月、東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場した。
圧倒的な物量を誇る農協を介した流通に対し、新たな商流はなぜ農家に、そして消費者に受け入れられたのか。
和歌山県から生まれた新しい農の流れを取材した。