3万5000円チケットが争奪戦。ホークスが届けるVIPサービス

2017/12/9
憧れのホークスの選手と一緒に、高級感漂うヤフオクドームのスーパーボックスラウンジでテーブルを囲んで、美味しいデザートビュッフェに舌鼓を打ちながら楽しく歓談などの時間をすごすことができる。まさしく「プレミアム」という名にふさわしいVIPな気分を存分に楽しめるチケットがある。
その価格、3万5000円なり。
毎年11月下旬に開催される福岡ソフトバンクホークスのファンフェスティバル(以下ファンフェス)で、そのプレミアムチケットは販売されている。
これが大人気を博している。
ホークスの営業戦略部の若山鉄兵さんが「購入権利はクラブホークス(球団公式ファンクラブ)の会員様のみとさせていただいておりますが、100枚限定のチケットに今年は1200名様の応募がありました。毎年10倍以上の競争率があり、抽選販売形式となっております」とその実情を明かしてくれた。
もう一度、言う。3万5000円のチケットである。
ホークスのレギュラーシーズン公式戦で最も高額な席が内野フィールドに迫り出すように設置されているコカ・コーラシート(フィールドシート)のA席でも1万5000円だから(SS、Sは年間席のみで一般発売なし。価格は5段階の一番上のプラチナ)、かなり破格といっても過言ではない。

破格チケットの豪華内容

ちなみに今年のプレミアムチケットの詳細はこうだ。
ビュッフェには和田毅、内川聖一、柳田悠岐、本多雄一、岩嵜翔、明石健志、中村晃、今宮健太、東浜巨、千賀滉大のタイトル獲得者やワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場者ら主力級がずらりと登場する。
1つのテーブルに選手1人と基本的にファン8名ずつ。歓談時間は40分前後だ。
また、それぞれのテーブルには福岡民放各局の女子アナもしくはホークス公式戦を中継するCS局のレポーターも一緒にテーブルについてくれる。
彼女たちは話の流れが止まった時に話題を提供したり、すべてのファンが平等に選手と会話ができるように上手にコントロールしてくれたりする。じつはこの企画のキーパーソンを担っている。
そのほかにファンフェスのステージイベントを間近で観覧できるスペシャル観覧席が用意され、ファンフェス参加のホークス選手全員とのハイタッチ、2018年公式戦のペアチケット、直筆サイン入り鷹の祭典レプリカユニフォームに加えて当日の「王貞治ベースボールミュージアム」入館無料や駐車場無料の特典までついてくる。

破天荒に挑戦する社風

実際にビュッフェの現場を取材した。価格帯から年配ファンが多いかと思っていたが、若いファンも結構多い。男女比もほぼ5:5といった印象だった。
何より、購入者の満足度が非常に高かった。参加者はもちろんコアファンばかり。球場にも頻繁に通う。自分が実際に観戦したあの試合の、あのプレーを思いのままにグラウンドで躍動していた選手たちと言葉のキャッチボールができる。このような機会がなければ実現できないことなのだ。
毎年10倍以上の競争率というのもわからなくはない。このチケットをもっと用意すれば、球団の売上は上がることは間違いないが、それではサービスの質が保てないという理由で100枚限定となっているとのことだった。
「このプレミアムチケットは2013年のファンフェスから導入しました。価格については、付加価値を含めてこれで行こうという決着になりましたが、初年度はもちろん不安だらけでした。しかし、大勢のお客様に均一のファンサービスを提供することだけが、本当のファンサービスなのかという議論はありました」
「ホークスのファンフェスには毎年3万5000人前後のお客様が来場されます。我々としては皆さんに喜んでいただきたいとできる限りの努力はしていますが、来場人数と、受けられるファンサービスというのは反比例するものです。もしかしたら『もっと金額を払ってでも、より上質で濃密なファンサービス』を求めているニーズがあるのではないか。ならば最高クラスのファンサービスを実現させようと考えたのが導入のきっかけでした」(若山氏)
このようなファン感謝イベントでは入場無料という球団もある中で、まさに破天荒な挑戦だった。しかし、だからこそ、挑戦する価値はあると考えるのがホークスの社風でもある。
先日、後藤芳光球団社長と別件で話をした時の言葉が印象的だった。
「今年のホークスの選手たちは、練習の質、試合での集中力が一段と高かった。昨年の敗北を次に生かすという強い気持ちが感じられました。人間、ミスはしたくありませんが、失敗してしまうことはあります。ビジネスも同じです。成功も失敗もある。でも、無駄は一つもない。自分の経験を財産に変えていける人こそが、野球でもビジネスでも勝者になれるんです」

ライト層向けのサービス

コアファン向けの高額ビジネスを成功させる一方で、ライト層に向けた施策も2017年シーズンから新たに導入していた。それが「タカポイント」だ。
チケットの購入、ヤフオクドームへの来場・グッズ・飲食購入、会員ページでのヒーロー予想など様々なシーンでポイントが貯まり、それをチケット・グッズ・イベント参加権などに交換ができるようになった。
これはクラブホークスの有料会員にならなくても入会が可能。この1年間だけで10万人の会員を集めた。
2017年のファンフェスティバルには大勢のファンが駆けつけた
ファンはお得。そして球団側としても観客の行動特性などを管理できるシステムが構築されたことで、よりニーズのあるサービスを効率的に提供しやすくなるというメリットが生まれた。
「現在、クラブホークスの会員様が14万人ほどですので、よりライトなファン層であるタカポイント会員様をさらに増やしていきたいと考えております。ファンを増やすのは当然、球団の使命です」
「ライト層のファンの方がホークスにより興味を持っていただくきっかけになったり、様々なファンの皆様がより楽しく、快適に観戦できる環境づくりに一層取り組んでいけるための重要ツールになると思っております。今年はヤフオクドームのみの対応でしたが、来季からはファーム本拠地のタマスタ筑後でも稼働することになっています」(若山氏)
ファンフェスティバルでは選手からフードを渡してもらえる機会もある
ふと球場に行って「便利になったな」「お、わかっているじゃないか」など気づく点があれば、それはタカポイントによる効果なのかもしれない。
(写真:©SoftBank HAWKS)