ビットコインの値上がりは常軌を逸していると思っているのであれば、あなたはまだ何も見えていないようだ。暗号通貨の成長はまだ始まったばかりだ。

暗号通貨は次なるゴールドラッシュ

まず、現状の概要から説明しよう。
暗号通貨の元祖ビットコインは2017年(そして、2009年の運用開始以降)、大きな話題をさらっている。2014年には『Rise and Rise of Bitcoin』という長編ドキュメンタリー映画がつくられ、トライベッカ映画祭のオフィシャルセレクションに選出された。
もしあなたが2015年に1ドルだけビットコインに投資していたら、(この記事を書いた時点で)その価値は7420ドルまで膨れ上がっているはずだ。
人々が8%の投資利益率に興奮しているこの時代、7420%はもはや常軌を逸している。
ただし、目覚しい成長を遂げているデジタル通貨はビットコインだけではない。デジタル通貨そのものがバブルを迎えているようだ。通貨トレーダーや投機家は、2017年だけで、以下のような利益を享受している。
・ クォーク(Quark):8294%
・ ファストコイン(FastCoin):1万3595%
・ アッシュ(Asch):5683%
・ メディタレニアンコイン(MediterraneanCoin):8313%
・ ノーリミットコイン(NoLimitCoin):5248%
・ マックスコイン(MaxCoin):6045%
・ ゴーレム(Golem):7477%
・ ディークレッド(Decred):1万1328%
・ ワールドコイン(WorldCoin):6792%
・ クリプトナイト(Cryptonite):7万5063%
・ インフラックスコイン(Influxcoin):5万9577%
・ ドバイコイン(DubaiCoin):82万3750%
『Rise and Rise of Bitcoin』の予告編で、ある業界専門家が最高の表現をしている。「規制がイノベーションのペースについて行くことができない」というものだ。
暗号通貨は次なるゴールドラッシュだと、多くの人が考えている。その理由はさまざまだ。
「ポケットの中に銀行を持つ」ことを喜ぶ人々もいれば、地球規模での「テクノロジーの民主化」を支持する人々もいる。米国の債務危機がばかばかしくなるほど悪化し、回復の兆しが見られないことに失望している人々もいる。
もしあなたがハイパーインフレを恐れているのであれば、暗号通貨は1つの解決策かもしれない。

最も大きなインパクトをもたらすのは

企業の創業者やベンチャーキャピタリストはすでに、2018年に向けて最も大きなインパクトをもたらすスタートアップやイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を予測している。
スタートアップの資金調達が困難になっているなかで、2017年のはじめには、暗号通貨で不動産の賃料を支払えるようにする企業やDIYの特許調査ツールを提供する企業が現れた。
筆者は、企業の創業者やベンチャーキャピタリストに取材を申し込み、2017年に最高のスタートを切り、2018年に向けて大きな成功を収めそうなスタートアップやICOを挙げてもらった。
以下では、すでにICOしている企業、2018年に向けてICOする可能性が高い企業の中から、最も注目すべき10社を紹介しよう。

1. サイフェリアム(Cypherium)

アマゾン、グーグル、マイクロソフト出身の開発者から成るチーム「サイフェリアム(Cypherium)」が、新しいブロックチェーンを開発している。特徴は、拡張性が高く、承認が不要なことだ。ガバナンスをプロトコル層とアプリケーション層に分離する「多層ガバナンス」という独自機能が採用されている。
スカイ・グオCEOは次のように述べている。「われわれが行おうとしていることをできるチームはほとんど存在しない。サイフェリアムは、拡張性の問題を解決するだけでなく、ブロックチェーン技術が主流の仲間入りを果たす助けになる、とわれわれは考えている」

2. レントベリー(Rentberry)

レントベリー(Rentberry)は、2015年の立ち上げ以降、不動産賃貸業界を革新している分散型の長期賃貸プラットフォームだ。契約から賃料の支払いまで、物件賃貸の全プロセスを自動化している。
ブロックチェーンとスマートコントラクト技術のおかげで、当事者同士で法的な契約を結ぶことができ、入居者は高い敷金(rental security deposits)を支払う必要がない。そのため、入居者と大家の両方にとって、時間と費用の節約になる。
アレックス・ルビンスキーCEOは次のように述べている。「全世界で5000億ドルの敷金が凍結資金になっている。レントベリーはこの凍結資金を解き放つ世界初のソリューションであり、同時に、アパート探しから賃料の支払いまで、全プロセスの合理化を実現する」

3. ロキ(Loci)

独自の特許調査ツール「InnVenn」で知られるテクノロジースタートアップで、ベンチャーキャピタルの出資を受けているロキ(Loci)が、プラットフォームを拡張し、ネイティブトークン「ロキコイン(LOCIcoin)」で知的財産を売買する機能を追加した。
さらに、イーサリアム(Ethereum)のブロックチェーン上で知的財産の請求範囲を投稿・公開することもできる。ロキの狙いは、特許手続きの簡略化と刷新だ。
ジョン・ワイズCEOは「アイデアを特許で保護するプロセスは複雑で、費用が掛かり、リスクも高い。しかし、ブロックチェーン技術があれば問題を解決できる。われわれのプラットフォームを使用すれば、偉大な発明家たちが自らの素晴らしいアイデアによって、これまでよりはるかに早く安全に収入を得ることができる」と説明している。

4. トリップキー(Trippki)

トリップキー(Trippki)は、ホテルと宿泊客の関係再構築を目指す分散型のトラベル・リワード・プロトコル。ブロックチェーン技術によって、トラベル・リワード・プログラムの柔軟性や汎用性を高めることができる。さまざまな方法でリワード・ポイントを獲得・使用できるようになっている。
エド・カニンガムCEOは次のように述べている。「人々はトラベル・リワード・ポイントをもっと活用したいと考えている。トリップキーは、ホテルと宿泊客の互恵関係を実現する新しいトラベル・リワード・プロトコルだ」

5. ライトメッシュ(RightMesh)

ライトメッシュ(RightMesh)は、世界の接続方法に変化をもたらすプラットフォーム兼プロトコルだ。
このネットワークでは、ブロックチェーン技術によって、イーサリアムの安全なアカウントを持つノードを特定。インターネット、データ、ストレージなどのリソースを共有するユーザーに対してトークンを与えることで、ネットワークの拡大を目指す。
ジョン・リオティアーCEOは「ライトメッシュはピアツーピアの形をとっているため、本当の意味で分散型のネットワーク兼プラットフォームだ。すでに所有しているスマートフォンやデバイスでメッシュネットワークを構築することで、人々に接続の力を与えようとしている」と話す。

6. エクスパーティー(Experty)

エクスパーティー(Experty)は、分散型のコンサルティング・プラットフォームだ。専門知識を持つ人々が、第三者の仲介なしに、その場で安全に相談料を受け取ることができる。
コンサルタントは分単位で料金を設定。エクスパーティーに掲載しているプロフィールは外部でも共有できるかたちになっており、アドバイスを求めている人はプロフィール経由でコンサルタントと連絡を取る。相談料は、ブロックチェーンのスマートコントラクト技術で自動的に支払われる。
創業者でもあるカミル・プレゼオルスキーCEOは「分散化が鍵を握る」と断言する。「専門知識の市場はすでに存在し、活発だ。そこで、ユーザーが専門家を検索できる独自の市場をつくるのではなく、専門家が今サービスを売り込んでいる場所でプロフィールを共有できる手段を提供することにした」

7. NAU

普及が進む携帯電話と位置情報データを活用し、小売店と買い物客を直接結びつける。その手段はデジタル・クーポンだ。NAUの狙いは、地元密着型の企業がアフィリエイト・プログラムによる口コミを利用できるようにすることで、費用の掛かる従来型の広告モデルを革新することだ。
ヤロスラブ・シャクラCEOは「ソーシャル、ローカル、モバイルを完全に融合し、企業と顧客を結びつけようという取り組みだ」と説明する。「つまり、まったく新しい形のデジタル・クーポンだ」

8. コインランサー(Coinlancer)

イーサリアムをベースにしたフリーランス・プラットフォーム。スマートコントラクト技術のエスクローシステムを利用している。
既存のフリーランス市場には、15~20%の高い手数料、支払いと納品に関するリスクといった欠点がある。コインランサーはこれらの問題を解決するため、調停を目的としたピアレビュー、既存市場よりはるかに低い手数料(3%)を導入した。
イアン・バイナーCEOは「フリーランス経済は活況に沸いている」と前置きしたうえで、次のように述べた。
「ギグ・エコノミーの拡大によって、フリーランス市場は6年後、年間100億ドル規模に達する可能性がある。われわれはフリーランサーが直面している問題に歯止めをかけなければならない。そして、ブロックチェーン技術こそが賢明な手段だと考えている」

9. ファンズユナイト(FansUnite)

ファンズユナイト(FansUnite)は、世界初のブロックチェーンを利用したスポーツ賭博ソリューションだ。
従来のスポーツ賭博には、価格、市場の選択、流動性、規制や制約、セキュリティーなどの問題があるが、ファンズユナイトのプラットフォームを使用すれば、こうした懸念が解消された状態でスポーツ賭博を楽しむことができる。
ダリウス・エイダミCEOは次のように述べている。
「ヴィタリック・ブテリン(19歳のときにイーサリアムを考案した人物)が『ETHWaterloo』で指摘したように、90%のスタートアップは失敗に終わる。ICOも例外ではないだろう。
多くのスタートアップが、解決の価値がある新しい問題に取り組んでいる。しかしその多くが、実証されていないトークンモデルから、持続的に利益を得られる事業へと移行するところでつまづいている」

10. ギフツ(Giftz)

ギフツ(Giftz)では、あらゆる企業に対して、自社の商品やサービスをトークン化し、インセンティブとしてエクスチェンジで販売できる仕組みを提供している。航空会社のマイルと同じ仕組みだ。
ジョン・ポークリスは「航空会社はマイルをインセンティブとして利用し、ほかの企業に売ることで、主力事業よりも大きな利益を得ている。われわれが食料品を購入したときにマイルをもらうことができるのはそのためだ」と説明している。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Bill Carmody/Founder and CEO, Trepoint、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:Chunumunu/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.