【10分動画付】ピッチで自動車業界をBEYOND

2017/12/12

約50社の応募を勝ち抜いた5組が登壇

東京ビッグサイトで開催された東京モーターショー2017。NewsPicksがプロデュースする6日間連続のトークライブ「THE MEET UP」。その最終日となった11月4日(土)は、ピッチコンテストが開催された。
期間中最多となる11万人の来場者でにぎわう会場のなか、コンテスト会場となったステージも満員御礼。約50社の応募から予選を勝ち抜いた5組のスタートアップ経営者が、「クルマを『BEYOND』する新しいアイデア」というテーマでしのぎを削った。
審査員を務めたのは、デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社の斎藤祐馬氏、メディアアーティストの落合陽一氏、WHILL, Inc CEOの杉江理氏、そして、NewsPicks編集長の佐々木紀彦。
また、メーカー審査員としてトヨタ自動車山本昭雄氏、日産自動車柳信秀氏、本田技研工業(ホンダ)伊藤潔氏、三菱ふそうトラックバス隅田洋二氏が列席。現場からの意見を交え、鋭い質問でピッチを盛り上げた。

株式会社Nextremer

トップバッターとして登場したのは、株式会社Nextremer CEOの向井永浩氏。自動運転×音声対話をテーマに開発した、自然言語処理を得意とする対話型インターフェイス「minarai」を提案した。
タブレットやデジタルサイネージなど何にでも搭載可能で、対話が破綻したときはオペレーターがサポートする機能も備えるminarai。クルマに搭載することで、通常運転時のサポートはもちろん緊急時のケアも可能になると力説した。
ホンダの伊藤氏は「向井さんがおっしゃった未来のクルマというのは、L4、L5レベルの自動運転もできて、対話を通じて乗っているお客様とインターフェイスを図ることもできるということですけども、その先にそのクルマには何があるのでしょうか? 運転、対話さらにその先に何ができないといけないのでしょうか」と質問。
向井氏は「やはり、クルマの移動する喜びというものを提供し続けたい。抽象的な答えですけど、移動って楽しいじゃないですか。やはりそこを提供し続けたいですね」と答え、共感を得た。

株式会社FutureStandard

続いて登壇したのは株式会社Future Standard代表取締役の鳥海哲史氏。
アメリカで起きた世界初の自動運転による死亡事故の原因が「画像認識」にあったことを引き合いに出し、安価で手軽な映像解析特化プラットフォーム「SCORER」を紹介。自動運転に必要なインフラの早期整備を訴え、「このままだと日本は自動運転後進国になってしまう」と警鐘を鳴らした。
三菱ふそうの隅田氏は「メーカーとしてジレンマを抱えているのが、国内特有のシステムを使うと、グローバル社会での競争力を失ってしまうという点。御社のシステムではグローバル展開も含めてどういう工夫をされているのか」と、ガラパゴス化を懸念。
鳥海氏は、「すでにタイとインドにはお仕事をいただいています。そういったところになぜ刺さったのかと言うと、『とにかく気軽に使いたい』という点です。アジアの人たちは非常にせっかちなのでそういった時、(システムを)組み合わせられるというところにメリットを感じています。あとは、低コスト。アジアでは日本以上の低コストが求められるので、そこがマッチしていると考えています」と、実績をアピールした。

Global Mobility Service株式会社

3番目に登場したのはGlobal Mobility Service株式会社CEOの中島徳至氏。
東南アジアの国々の自動車ローン審査の“非”通過率の高さゆえ、クルマを買いたくても買えない人が多くいることに着目。フィンテックとIoTの組み合わせによってこの問題を解決する仕組みを、既にあげている実績とともに解説し、説得力あるプレゼンテーションを展開した。
トヨタ山本氏は「すばらしいです。ただ、こういうビジネスモデルはすぐマネをされると思うんですね。このIoT車載機を作ってしまえばいいので。差別化についてはどのようにお考えでしょうか?」と質問。
中島氏は「IoT車載機自体を、模造が困難なデバイスとして開発しているのはもちろんですが、その上でいわゆる模造ということに対して、どういう対策ができるかというと、やっぱりサービスなんですね。サービスと技術をセットにして初めてお客様に満足していただけるものになる。フィリピンでは、最大手の通信会社や電力会社が私どものインフラに加わってくださっていますが、こういった、ものを作って終わりではない部分が、そのまま競合の参入障壁になってくるんじゃないかと思っています」と既に現地大手とも取引があることを引き合いに回答した。

株式会社ATELIER OPA

4番目に登場したのは株式会社ATELIER OPA 創業者の鈴木敏彦氏。
建築家でデザイナーという、今回の登壇者のなかでは異質な立場の鈴木氏が提案したのは、「一坪の完全自動運転電気自動車 TSUBO CAR」というコンセプト。
文字どおり「一坪」サイズのこのクルマは、普段は自宅と一体化しておりひとつの「部屋」として使うことができるため、本人が歩いて移動せずともシームレスにクルマ移動できることが特徴だ。究極のバリアフリーを実現する斬新な提案に会場中から驚きの声があがった。
NewsPicks佐々木が「先ほど、建築の一部がクルマとして動くTSUBO CARの普及を考える場合、社会と都市の構造から見直さなければいけないというお話がありましたけれども、これから一番都市で見直さなければいけないところはどこだと思われますか?」とより広い視野での見解を問うと、鈴木氏は「自動車について考えると、やはり弱者ですね。弱者の定義の中には高齢者や身体障碍者だけではなく、子どもだったり運転免許を持ってない人。そういう人でも、モビリティの恩恵を受けられる社会構造が求められるのではないでしょうか」と答えた。

Hmcomm株式会社

トリを務めたのはHmcomm株式会社CEOの三本幸司氏。「キーボードレスな社会創造」をテーマにするHmcomm社の代表として提案したのは、異音検知と会話モニタリングに特化した音のIoTプラットフォームだ。エンジンの異音や悪路走行の音はもちろん、あくびの音から眠気を検知して居眠り運転に対する警告を出す、会話の盛り上がりに合わせて音楽を変えるなど、クルマを道具からパートナーへと昇華させることができると力強く語った。
落合氏は「ちょっと気になってるのは、音声認識システムをクルマの中に入れるとすると、マイクの配置問題とか、結構泥臭い問題が個別の車種に対してとかデバイスに対して発生するんですけど、そういうソフトウェアで解決できない問題はどう解決していこうとお考えですか?」と、実用化を想定し具体的に質問する。
三本氏は「今はAmazonさんやGoogleさんがAIスピーカーを出すなどして、どんどんいいものが安く手に入るようになっている時代です。例えば天井にマイクを配置して音を拾うとか、そういったことはできるのではないかと思います」と、普及によるコストダウン予想を展開。落合氏は「なるほど。それは御社というよりクルマメーカーの課題であるということですね」と、納得した様子で応答した。

優勝はフィンテック×IoTのGMS

五者五様。AIや自動運転、音声認識にITC、EVと、このTHE MEET UPでも幾度となく出たキーワードに絡む斬新なビジネスアイデアが飛び交い、メーカー審査員からも実用化を前提とした具体的な質問が途切れることなく飛んだ。
予定を30分過ぎるほどの盛り上がりのなか優勝を手にしたのは、未開拓市場にチャレンジする意義とビジネスインパクトの大きさを力強く語ったGlobal Mobility Serviceの中島徳至氏。
中島氏は「大変光栄に思う。起業して4年、だまって付いてきてくれた社員と、支えてくれる関係者のみなさんに感謝をしたい。今後もひとつの事業にとらわれず、社会のためになにができるかを考え続ける会社でありたい」と喜びを語った。
審査後、落合氏は「ピッチコンテストの審査をするとき、事業を推進するうえでもっとも『遅く』なる部分、ネックになる部分がどこかを見るようにしている。新興国×ファイナンスという非常に困難なことを、泥臭くやったうえで、すでに結果も出しているという点を評価させていただいた」と解説。
6日間におよぶTHE MEET UPは、満場の拍手で締めくくられた。
登壇者と審査員の全員で記念撮影
進行を務めたデロイトトーマツベンチャーサポート株式会社の斎藤祐馬氏とフリーアナウンサーの白石小百合氏
(執筆:今井雄紀 撮影:飯本貴子 編集:久川桃子)
NewsPicksでは、優勝したGlobal Mobility Serviceを今後もウォッチして、活躍をリポートする予定です。