さよならキログラム原器、単位の改革がやってくる 2018年、単位の定義は基礎物理定数の時代へ
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改訂の方針自体は、2011年の第24回CGPMで決まっていたので、今年行われているのは、各国が測定したhの値から最も確からしい値を確定したという作業です。来年に正式にSI単位として採用される予定です。
CODATAによる値確定の論文
http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1681-7575/aa950a/pdf
プランク定数と質量は、相対論と光電効果から、mの静止質量をもつ物質と等価なエネルギーを持つ光子の周波数νをmc^2/hと表現出来ることで繋がっています。
厳密なプランク定数を測定するには、キッブルバランス法(かつてワットバランス法と呼ばれた)という方法と、X線結晶密度法というアボガドロ定数N_Aの測定を使うものとがあり、後者には日本のAISTも大きく貢献しています。
N_Aとhは、電子と陽子のモル質量比M_e/M_pの関係から、リュードベリ定数R_∞と微細構造定数αを使って、N_A=cM_eα^2/2R_∞h という厳密な関係式が成り立ちます。
AISTの測定結果で得られた精度は、キログラム換算で24μgで、キログラム原器の質量安定性の55μgを凌いではいますが、日本が持つキログラム原器と国際基準となるIPKの誤差は10μg程度なので、キログラム原器の精度もなかなかのものです。原器の不確かさは、ハンガリーやスペインの原器の逸脱が激しいことから推測するに、扱う人間側の不確かさに依るものかなという気もします。
それにしても、10月23日はアボガドロ定数が6.02x10^23にちなんで決まっている「化学の日」。どうせなら10月23日の発表にしてくれたら良いのに。
キログラム原器については、ノルウェーの2015年の映画作品
『1001グラム ハカリしれない愛のこと』
https://www.youtube.com/watch?v=BXdMgQCWR0c
に詳しく描かれています。ハカリ知れない"人生の重荷"について、ニーチェやパルメニデスが言うように「軽い」方がよいのか、ベートーヴェンが“Es Muss Sein!”(そうでなければならない!)と言ったように「重さ」が重要なのか。
重さと軽さのテーゼについては、ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」もお勧めです。