過去最大のコンサルタントチームはなぜ必要か

2017/10/31
アクセンチュアに今、大手のIT企業やユーザーの情報システム部門から続々と人が集まっている。とくに金融機関向け部門に——。その理由は何か。転職者の本音と採用面で攻めに転じる決断をした幹部の話から、アクセンチュアの戦略を読む。

元IBMerが語る転身の本音

──粕田さんは日本IBMからの移籍です。ITビジネスを手がける人にとって、IBMにはトップクラスの環境があると思いますが移った理由を教えてください。
粕田: 新卒で日本IBMに入社して約10年、お客さまの情報システムの中でも主にITインフラの設計・構築を手がけてきました。IBMはハードウェアからソフトウェア、そしてクラウドを中心としたサービスまでラインアップが揃っています。これは、私にとって強みでもあり、弱みでもありました。
自社製品・サービスの中身を詳しく知ることができ、その専門家が社内にいるのは強み。ですが、お客様の要望によっては、他社製品を提案したほうが最適な場合があります。それでも当然、IBM製品を提案しなければならない。それはメーカーの顔も持つがゆえの弱みだと感じていたのです。
30代になって自分の将来を考えたときに、もっと提案の幅を広げたいと思ったのです。
──IT業界でトップクラスのIBMにいると、それ以上に魅力的な職場を探すのは困難だと思います。そこでITにも強いコンサルティングファームのアクセンチュアに籍を移した、と。
粕田:転職エージェント会社に登録して、今のポストの紹介を受けた時は、社名も職種・役職も知りませんでした。最初に聞いたのは、金融業をテクノロジーによってインフラから変革できるスペシャリストを探している、と。
IBMでは主にインフラの中でもクラウドを担当していました。徐々にクラウドの利点はさまざまな業界に受け入れられていましたが、機密性の高い情報を扱っている金融業のクラウド導入は遅れているというのが私の実感です。
そんな中で、金融業もいつか大きな変化を求める、クラウド導入する機運は一気に高まると感じていて、その仕事に携われる機会があるのなら、と軽い気持ちでコンタクトを取りました。その相手がアクセンチュアで、カジュアル面談したのが、いきなりMD(マネジング・ディレクター)の新井だったのです。

日立系SIer、ユーザー「情シス」からの移籍の背景

──中村さんは日立製作所グループのSIerからキャリアをスタートして、その後、メットライフ生命保険の社内IT部門を経て、アクセンチュアに移りました。
中村:新卒で入ったのは日立ソフトウェアエンジニアリング(現日立ソリューションズ)で、「メインフレーム」という大型コンピュータで動くアプリケーションソフトの開発をしていました。
その後、メットライフに移ってアプリケーション担当として社内システムの設計・開発に携わってきました。ここでプロジェクトによっては顧客としてコンサルタントと接していて、私にとってはこの経験がコンサルタントの道を示してくれたと思っています。
中村:メットライフに移って実感したのが「ITベンダーとユーザーがわかり合うのは難しい」ことでした。テクノロジー視点でものを見るITベンダー、業務改善や成長戦略視点でITベンダーにサポートを求めるユーザー企業……。そこには深い溝があり、この溝を埋めるのがコンサルタントの役割だと知ったのです。
私はキャリア上、両方の気持ちがわかるので、両者の橋渡しをしてみたくなり、開発部門を持つアクセンチュアに決めました。プランを作るだけでなく、実装して結果を出すまで責任を持てるからです。

他社の「プロジェクトマネジャー」とは違う

──粕田さんは約1年、中村さんは約3年の間、アクセンチュアでビジネスしていますが、この間の仕事内容を教えてください。
新井:2人には、入社して直後から大規模プロジェクトで「PMO(Project Management Office)」の仕事を任せています。プロジェクト全体を横断的に見渡して推進する重要な役割です。
大規模プロジェクトに入ってもらったのには、大きく2つ理由があります。
1つは、社内で人脈を早く築いてほしかったから。多くの人材が関わる大規模プロジェクトがいいだろう、と。PMOなら各チームとの接点も多いですからね。
そしてもう1つは、マネジャーを指導できるシニア・マネジャーがいることです。比較的大きな案件でないと、シニア・マネジャーが時間を作って指導するのは困難ですから。
粕田:その配慮に助かっています。インフラメインでやってきましたから、経験があるものもありますが、当然未経験なことも多い。それを、周りのマネジャーやシニア・マネジャーが理解を示してくれて、いつも驚くほどのアドバイスをくれます。
中村:私は現在、保険会社のシステム刷新プロジェクトを任せてもらっています。大規模な業務改革を進めていて、その戦略立案と最適なシステムのデザインをつくり、大筋はプランが出来上がったので、これから実行に移していくフェーズです。
コンサルタントになりたいと思って入社したとはいえ、実は最初は相当苦労しました。ユーザーとしてコンサルタントの資料を読むのには慣れていたのに、いざ書くとなると全然思うようにいかなくて、大丈夫だろうかと当時は相当の危機感をもっていました。
ただ、粕田も言っている通り、アクセンチュアは実践の中で学べる環境が整っていて、追い込まれることはありませんでした。みんな成長意欲が高くて助け合う文化がありスピードも速い。この3年で、過去にはなかったスピードで自分が成長できたと思っています。
新井:アクセンチュアはPMOの役割を非常に重視しています。それはコンサルタントとして必要な基礎スキルが集結しているからです。
お客さまとのカウンターパートなので、さまざまなポジションや背景の方と接する必要があります。言われたとおりの動き方をしていたのでは務まらず、先を読んで計画を立てて、プロジェクトを動かしていく必要があります。
PMOは教科書で学べるものでもないので、教えるとなると難しい。実践を通して吸収してもらうしかない。だからこそ、私は実践を重視し、多少リスクがあったとしても現場に出てもらっています。
ですから、アクセンチュアのPMOは他社のコンサルティングファームにはどこにも負けないレベルにいると思っています。そのPMOでコンサルタントの基礎を身に着けた後は、テクノロジーコンサルティングとして、さらに上流のシステムプランニングや、クラウドを活用したIT構造改革など、金融機関のIT強化を支援する役割にシフトしてスキルの幅を広げていくことになります。

過去にない数の仲間を求めている

──そこまで言い切れる新井さんのPMO育成術を教えてください。
新井:アクセンチュアはPMOに限らず、徹底したレビュー文化で価値を高めています。上司はチャンスを与え続け、それを見守り続ける。教えていないことやチャレンジングな環境を用意して、その結果を共有しあい、次のステップを決める。当たり前のことなんですが、それが短いサイクルでスピーディに回り続けているから、うちのメンバーは成長が早く強いのです。
──新井さんのキャリアに話を移すと、新井さんは転職経験なし。アクセンチュア一筋ですね。
新井:社内にもお客様の中にも優秀な人が常にいてその方々と一緒に仕事ができる。私が入ってからずっと変わらない環境です。かなり刺激的ですし、やめたくてもやめられない(笑)。こうした刺激がなくなったときが去るときなのでしょうが、そんな日が来ることよりも先に私の体力がついていかなくなることが先でしょう。
私の体力の行方は別として(笑)、今私たちには仲間が足りていません。具体的な数値は言えませんが、過去にはない規模で金融サービス本部だけで採用する計画です。
私たちが求めているのは「情熱」を持つ人。欲を言えば、根本から考える「思考力」。さらに、その思考した結果を効率的に伝える「コミュニケーション力」。この3つがある人にはぜひうちに入ってほしい。年齢も関係ありません。50代で入社する人だっています。
金融業という大きな変革が必要でお客さまも真剣に取り組んでいく決意をしている中、ITベンダーでも経営コンサルティングファームでもなく、そのどちらも併せ持つアクセンチュアで金融業を一緒に変えたいと意欲を燃やす人を私たちはいつでも待っています。経営戦略とテクノロジーの両輪、それを学びながら得られる環境を提供します。
(取材:木村剛士、文:加藤学宏、写真:長谷川博一)