[東京 23日 ロイター] - 第48回衆院選は自民党が圧勝する結果となった。東京市場では、株価は高値もみ合い、ドル/円<JPY=EBS>は一時114円台と3カ月ぶり高値を付けたものの反落。円債利回りは上昇後に上げ幅を縮小するなど、全般に浮かれたムードはなく、慎重な値動きとなっている。

与党の圧勝で拡張的な財政政策と超金融緩和が信認されたことになるが、金融市場参加者の間で、政策期待が盛り上がっているわけではない。

日経平均株価<.N225>は前営業日比200円61銭高の2万1658円25銭で前場の取引を終えた。このまま上昇して終われば15日連続上昇となり、過去最長の続伸記録とになる。

大和住銀投信投資顧問、経済調査部長・門司総一郎氏は、選挙後の株価上昇について「背景にあるのは需給だ。与党が勝利したことで、日本株に弱気だった投資家が買い姿勢に転じた可能性がある」と指摘。

安定政権と緩和的な金融政策が継続するとの期待は、日本株の支えにはなる。だが、押し上げ要因となってきたのはむしろ良好な企業業績への期待であり、こうした相場がまだ続くと同氏は予想している。

ドルは一時114.10円と3カ月ぶり高値を付けたが、その後は113.72円まで反落し、衆院選を挟んだ上昇分の半分以上を返上した。

「衆院選の結果は材料としての『賞味期限』が短い。初期反応が落ち着けば、利益確定に押されることになるだろう」と三菱東京UFJ銀行、チーフアナリストの内田稔氏はいう。

「ドル/円相場は、選挙前から衆院選の結果予想を反映した値動きとはなっておらず、衆院選後も、第2次安倍政権発足後にみられた円安傾向に回帰するとは考えにくい」(三井住友銀行、チーフストラテジストの宇野大介氏)との声が多い。

国債現物市場では、長期・超長期ゾーンで利回りが上昇したものの、国内勢の押し目買いが入り上昇幅が縮小。10年最長期国債利回り(長期金利)<JP10YTN=JBTC>は一時1ベーシスポイント(bp)高い0.080%と10月3日以来の水準に上昇。その後は0.075%で推移した。

「拡張的な財政政策は金利上昇要因だが、安倍首相が2019年10月に消費増税を掲げている分、野党の政策に比べて金利上昇圧力が緩和されるだろう」とメリルリンチ日本証券、チーフ金利ストラテジスト・大崎秀一氏はみている。

今後のテーマとして金融市場が関心を注ぐのは、日米の中銀人事や、米国の利上げサイクルの行方だ。

大崎氏は「国債市場で来年にかけて波乱があるとすれば、日銀の金融政策だろう。来春に任期を迎える黒田日銀総裁の後任人事に絡み、日銀が異次元緩和政策の包括的検証と称して国債買い入れ年80兆円枠の変更やYCC政策の修正などに踏み切っても不思議ではない」とみている。

為替市場について三井住友銀行の宇野氏は「日米経済対話や米財務省為替報告書に垣間見える米国のドル安指向や米税制改革の行方、米政権スタッフの不協和音、米経済の実態といった米国発の材料が主要テーマになる」と予想する。

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は20日、低金利環境が続く限り「非伝統的な政策手段を発動できる体制を維持すべきだ」と主張した。[nL4N1MX00K]

市場は依然、来年の米国の利上げを巡る不透明感を払しょくできず、米長期金利やドル/円相場の重しになっている。

(金融マーケットチーム)