[18日 ロイター] - ホワイトハウスのサンダース報道官は18日、トランプ大統領が「数日中」に連邦準備理事会(FRB)次期議長人事について発表すると表明した。

候補に挙がっているイエレン氏(続投)、パウエルFRB理事、コーン国家経済会議(NEC)委員長、ウォーシュ元FRB理事、テイラー・スタンフォード大教授5人の横顔は以下の通り。

●テイラー・スタンフォード大学フーヴァー研究所主席研究員(70)

経歴: 2001年から2005年にかけて、ジョージ・W・ブッシュ政権で財務次官(国際問題担当)を務める。カーター政権、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員。

学歴: スタンフォード大の経済学博士号。

政策姿勢: 経済指標を基に機械的に政策金利を決める「テイラー・ルール」を提唱。金融政策の決定を「予測可能、透明、説明可能」にするため、ルールに基づく政策運営に移行すべきだと感じている。

「金融政策の戦略の基本を理解することが非常に重要だ。連邦公開市場委員会(FOMC)に対し、金融政策の戦略の選定と説明を義務づけ、選定した戦略を透明な形で公表する金融政策のルールと比較させるべきだ」と述べている。

候補者としての強み: 経験豊富な経済学者で、1990年代に発表したシンプルかつエレガントなテイラー・ルールは、政策金利の決定方法を巡る議論を一変させた。

FRBの裁量権が大きすぎると感じている共和党の有力議員が支持。

テイラー・ルールに対して幅広い支持が集まっているわけではないが、中銀関係者の間では著名な存在。

弱み: トランプ大統領が学術界の人材の採用に難色を示す可能性。

これまで総意と状況判断を重視してきたFRBと衝突する可能性。

テイラー氏が大胆な改革を提唱して、現行の政策の枠組みが一変すれば、市場が混乱する恐れ。

●コーンNEC委員長(57歳)

経歴: 2006年から17年にかけてゴールドマン・サックスに勤務し、最高執行責任者(COO)などを務めた。

学歴: アメリカン大のビジネス学士号。

政策姿勢: FRBの政策が、他国の中央銀行の通貨安政策によって「制約」されていると述べたことがある。

候補者としての強み: FRBがバランスシートの縮小に向かう中、実務家としての知識が生かせる。

トランプ政権で重要な役割を担い、ホワイトハウスと共和党議員の信任が厚い。

弱み: 経済学を正式に学んでいない。

議会上院での承認手続きでは、ゴールドマンでの長年の経歴と2億6000万ドルを超える個人資産が反感を買う可能性がある。

トランプ大統領の白人優越主義的発言を批判した。

●パウエルFRB理事(64歳)

経歴: 弁護士にして投資銀行家。1997年から2005年まで投資会社カーライル・グループのパートナー。ジョージ・W・ブッシュ政権下で財務省高官。2012年から現職。

学歴: プリンストン大の政治学士号。ジョージタウン大法学士。

政策姿勢: イエレン議長と歩調を合わせて緩やかな利上げを支持し、反対票を投じたことはない。ドッド・フランク法(金融規制改革法)の一部緩和を提唱し、銀行の自己勘定取引を制限するボルカー・ルールの修正方法について発言したこともある。

候補者としての強み: 当たり障りのない人選で、イエレン氏と交代しつつも政策の継続性を保てる。

現FRB理事の中で唯一の共和党員であり、経済を回復に導く一助となった実績があり、超党派の支持が得られそう。

金融市場と金融規制に通じる。

弱み: わざわざイエレン氏と交代させても、FRBの政策はあまり変わらない。

正式な経済学よりも金融市場や金融規制に詳しく、FRBの理事兼金融規制担当副議長となるランダル・クォールズ氏とかぶる部分が多すぎる。

●ウォーシュ元FRB理事(47歳)

経歴: 2006年から11年までFRB理事。02年から06年までジョージ・W・ブッシュ政権の経済顧問、モルガン・スタンレーで7年間にわたり企業合併・買収(M&A)弁護士。

学歴: スタンフォード大で公共政策学士号。ハーバード大法学士。

政策姿勢: FRBは裁量権が大きすぎると主張し、FRBが経済を微調整すべきではないとの立場。1─2%の物価上昇率を目指すべきだと考えており、実質的な物価目標の引き下げを求めている。

候補者としての強み: ウォール街で知名度が高い。

妻のジェーン・ローダー・ウォーシュさんの父親は化粧品界の大物ロン・ローダー氏で、トランプ氏の旧友。

弱み: 「低金利人間」を自称するトランプ氏からすると、タカ派過ぎる可能性がある。

米国の金融政策を刷新する必要性を唱え続けているが、イエレン議長やバーナンキ前議長のような経済学者ではない。

世界金融危機が起こった2008年に至ってもインフレに懸念を示した上、量的緩和(QE)第2弾を巡ってFRBを辞めた経緯が失点とみなされるかもしれない。

こうした経緯にもかかわらず、連邦公開市場委員会(FOMC)で反対票を投じたことは1度もなかった。

●イエレンFRB議長(71歳)

経歴: サンフランシスコ地区連銀総裁を務めた後、2010年から14年はFRB副議長。

学歴: イエール大で経済学博士号。

政策姿勢: FRB議長として、経済指標に応じた段階的な利上げを進め、緩やかなバランスシートの縮小を決めた。経済危機後の金融規制は、経済成長を犠牲にすることなく経済の安定性を高めたと主張。

候補者としての強み: FRBでの実績によって市場の信任を勝ち得、大きな混乱を招くことなく政策変更を行う手腕を示した。

米経済は成長、低失業率、株価上昇と好環境にあり、続投支持の根拠となり得る。トランプ大統領もイエレン氏が良い仕事をしていると公言した。

弱み: オバマ前大統領の置き土産というイメージを持たれかねない。

金融危機後の主要な規制を温存すべきとの考えであり、トランプ政権の規制緩和路線と摩擦を起こす可能性がある。

共和党指導部の中には、金融政策におけるFRBの裁量権を減らすべきとの考えがあるが、イエレン氏は抵抗している。

*見出しを修正しました。