[17日 ロイター] - <為替> ドルが主要通貨バスケットに対して上昇し1週間ぶりの高値を付けた。米連邦準備理事会(FRB)議長の後任人事を巡り、トランプ大統領がよりタカ派的な人選を行うとの見方が広がった。

トランプ氏が次期FRB議長候補にスタンフォード大教授のテイラー氏を推しているとの観測が浮上するなか、米2年債利回り<US2YT=RR>は上昇し9年ぶりの高水準をつけた。

ウエスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズ(ワシントン)のシニア市場ストラテジスト、ジョー・マニンボ氏は「テイラー氏は現職のイエレン氏よりもタカ派的と考えられる。彼が議長に就任すればFRBは一層積極的に利上げを行う可能性があり、ドルの押し上げ要因となり得る」と述べた。

主要6通貨に対するドル指数<.DXY>は0.2%高の93.488。一時93.729まで上昇した。CMEグループのFEDウオッチによると、金利先物が織り込む12月の利上げ確率は93%。

MUFG(ロンドン)の為替エコノミスト、リー・ハードマン氏は、テイラー氏が次期FRB議長に選ばれた場合、ドルは当初3-5%急騰してもおかしくないと予想した。

<債券> 長期債利回りが低下する中、2年債利回りが2008年11月以来の水準に上昇し、イールドカーブが平坦化した。アナリストの間では、長短金利差の縮小はFRBによる利上げに対する観測が高まる一方、長期インフレが上向くとの兆候が微小にとどまっていることを反映しているとの見方が出ている。

この日の取引で5年債利回りは今月6日以来の水準に上昇。一方、30年債利回りは9月27日以来の水準に低下した。これにより5年債と30年債の利回り格差は83.94ベーシスポイント(bp)と、2007年11月以来の水準に縮小。このほか、2年債と10年債の利回り格差は2016年8月以来の低水準を付けた。

前日、トランプ米大統領がFRB議長の候補の1人として、タカ派とされるスタンフォード大学のジョン・テイラー教授に好感を持ったと報じられたことで、短期債利回りの上昇が加速。

ジェフェリーズ(ニューヨーク)の短期金融市場エコノミスト、トム・シモンズ氏は、「現政権が掲げる財政政策を踏まえ、トランプ氏は比較的ハト派的な人物を選ぶと考えられてきた。こうしたなかテイラー氏が表舞台に出てきたが、同氏はただのタカ派ではなく、他の候補よりもはるかにタカ派と見なされている」と述べた。

この日発表の米経済指標では、9月の輸入物価指数が前月比0.7%上昇と1年3カ月ぶりの大幅な上昇となった。市場予想の0.5%を超えて上昇したことも短期債利回りが上向く要因となった。

<株式> ダウ工業株30種とS&P総合500種が続伸し、ダウは一時2万3000ドルの水準を初めて突破した。ユナイテッドヘルス・グループやジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の好調な決算が手掛かりとなった。

ユナイテッドヘルス<UNH.N>は5.5%高。第3・四半期利益が予想を上回ったほか、2017年度の利益見通しを上方修正したことを好感し、上場来高値を付ける場面もあった。

J&J<JNJ.N>も予想を上回る第3・四半期決算と通期業績見通しの引き上げを好感して3.4%高となった。

米医療保険制度改革法(オバマケア)を巡る短期的な応急措置について上院で超党派の合意が得られたことも、医療保険や病院経営などの銘柄を押し上げた。

一方、金融株は下落。ゴールドマン・サックス<GS.N>は第3・四半期の利益が予想を上回り、債券トレーディング収入も予想より小幅な減少にとどまったが、株価は2.6%安で引けた。

<金先物> 続落。外国為替市場でドル高・ユーロ安が先行する中、割高感などから売りが出た。中心限月12月物の清算値は前日比16.80ドル(1.29%)安の1オンス=1286.20ドルとなった。

この日の外国為替市場では未明からドル高・ユーロ安が進行、ドル建てで取引される金塊などの商品に割高感が生じたことから、金が売られた。また、利益確定の売りが出たことも相場を下押しする要因となった。

このほか、米FRBのイエレン議長が15日の講演で、「年内あと1回」の利上げを維持する考えを示唆したことに加え、次期FRB議長人事を巡りイエレン現議長よりもタカ派色が濃いとされるスタンフォード大のジョン・テイラー教授が有力候補に浮上したとの報なども、金利を生まない資産である金には売り圧力がかかっ た。

また、米労働省が朝方発表した9月の輸入物価指数が前月比0.7%上昇と、市場予想(ロイター調べ)の0.5%上昇を上回ったことも、インフレ圧力につながって追加利上げを後押しする一因になる可能性があるため、金には圧迫材料となった。金塊現物相場は午後1時46分現在、14.100ドル安の1285.050ドル。

<米原油先物> ほぼ横ばい。中東の原油供給混乱を警戒した買いが先行したものの、利食い売りなどに圧迫された。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値は前日比0.01ドル(0.02%)高の1バレル=51.88ドル。12月物は0.03ドル安の52.11ドルだった。

この日未明から午前の早い段階までは、中東の地政学的リスクを背景とした堅調地合いが継続。イラク中央政府とクルド自治政府の軍事衝突により、同国北部の油田都市キルクークなどで原油供給が混乱するのではないかとの懸念に加え、トランプ米大統領が前日にイランの核合意について「完全に打ち切られるかもしれない。非常に現実味のある可能性だ」と述べたことなどが不安視された。

しかし、その後流れは反転し、相場は52ドル台前半から一時1ドルほど急落。イラク北部の主要油田が通常通り操業を続けているとの報などが伝わり、中東問題を手掛かりとした買いはひとまず一服したもよう。一方、米エネルギー情報局(EIA)は前日公表した月間の掘削生産性リポートで、11月の国内シェールオイル生産が前月比8万1000バレル増の日量612万バレルに拡大すると予想していたことから、供給過剰感に着目した売りも再燃。ただ、午後に入ってからはじりじりと下げ幅を縮めた。

(※関連情報やアプリは画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)