絶えざる自己教育の道を歩む

シカゴ在住のアジャイ・パッターニは「起業家機構(Entrepreneurs' Organization:EO)」のメンバーであり、デジタルマーケティング代理店、パーフェクト・サーチ・メディアの創立者(そして同社における現在の卓球チャンピオン)だ。
いまもなお起業家精神についての継続的学習に打ち込んでいるパッターニに、どんな本を推奨するかを尋ねてみた。同氏の意見を以下で紹介しよう。
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成長の過程において、わたしは「本の虫」タイプではなかった。子どものころに本を読まなかったのは、スポーツが得意だったり、他の趣味に熱中したりしていたからだろう。
20代になると、友人たちは「まともな本を1冊も読破せずにロースクールを卒業した人間は、世界で君が初めてだよ」と言ってわたしをからかった。わたしはその主張を肯定も否定もしない。
その後、オーディオブックと出会ったときの驚きが、新しい世界を切り拓き、わたしは起業家として絶えざる自己教育の道を歩むことができた。
オーディブルにおける私のアカウントは、起業家精神、関係の構築、あるいは自己実現に関するトピックでいっぱいだ。わたしはこうしたテーマが、白ワインの次に大好きなのだ。
この私的な起業家向けブッククラブを始めるにあたって、自分がおおいに啓発された7冊の本と、それらがなぜ私に強い影響を及ぼしたかを記したリストを作成してみた。
1.『人を動かす』(原題:How to Win Friends and Influence People)デール・カーネギー著(邦訳:創元社)
わたしが高校を卒業したとき、父がお祝いにこの本をくれた。正直に打ち明けると、これを読んだのはつい最近のことだ。
カーネギーは、心からにっこり微笑むとか率直な称賛と感謝を表現するといった、人間関係を築くためのシンプルな方法をくわしく解説している。
わたしは、人々と密接に協力し、しっかりした人脈を築いてきた自分自身の経験が、そうした人間関係スキルの獲得に役立ったことに感謝している。
だが、それをあらためて本で読むことには、計り知れないほどの価値があった。人のつながりが持つ影響力に新たな光を当てているだけでなく、信頼のおける行動の重要性を再確認させてくれるからだ。
ところどころに、やや時代遅れな部分はあるものの、それでもなお読む価値のある古典のひとつだ。
こんな人にお勧め すべての人。
2.『ザッポス伝説』(原題:Delivering Happiness)トニー・シェイ著(邦訳:ダイヤモンド社)
ザッポスのトニー・シェイCEOは、この本で一躍有名になった。企業文化のエキスパートであるシェイは、ザッポスの成長とその過程で体験したいくつかの失敗、そしてどのようにして売上10億ドル以上を稼ぐまでに会社を育て上げたかを詳述している。
ところどころ少々退屈なところはあるが、組織における文化や職場における文化の重要性に関心のある人なら、誰でも一読に値することは間違いない。
こんな人にお勧め 人事や、従業員の雇用、会社の設立に関与する人、あるいは企業文化に強い関心を持つ人。
3.『Street Smarts: An All-Purpose Toolkit for Entrepreneurs』(ストリート・スマート:起業家のための万能ツールキット)ノーム・ブロツキー、ボー・バーリンガム共著(未邦訳)
この本に示された起業家精神に関する現代的な視点は、きわめて役に立ち、斬新で興味深い。
他の多くの本は、できるだけ速く会社を成長させ、その市場価値を高めることに焦点を当てたあと、起業家をさらにリッチにするための出口戦略を説明していく。だが、この本はそうしたレシピとは一線を画している。
この本は、「偉大な企業」を築くというただひとつの目的のために持続可能なブランドを構築することについて、さまざまな教訓を与えてくれる。持続可能なビジネスを育てたいという熱い思いを持つ人にとっては必読の書だ。
わたしが筆者から学んだひとつのユニークな視点は、世の中には歩合制を採らない、たった2人のセールスチームで満足するビジネスや、急速な成長を目指して事業を拡大しようとはしないビジネスがあるということだ。
現代のビジネス環境において、そんな例はまず聞いたことがない。「よくもそんな提言ができるものだ、バカも休み休み言え!」と一蹴されるのがオチだろう。
こんな人にお勧め すでに確立された組織のリーダー。
4.『あなたのチームは、機能していますか?』(原題:The Five Dysfuctions of a Team)パトリック・レンシオーニ著(邦訳:翔泳社)
わたしは、この著者の講演を聞くというすばらしい機会を得たことがある。レンシオーニは、わたしの知る限りもっとも魅力的な講演家のひとりだ。その著書も、読者を失望させることはない。
この本は、読む者の思考を刺激するエピソードに満ちている。著者が成功を収めるチームを築くために用いた「柱」には、どれも真実味がある。
ほとんどすべての成功したリーダーは、成功は優れたチームのおかげと認めているし、認めようとしない人も本当はそうすべきだ。どんな企業であっても、その核となるのは共有されたビジョンや目的を達成するために団結する人々のグループなのだ。
こんな人にお勧め すべての人。チームワークは何よりも重要なのだから。
5.『ビジョナリーカンパニー 2 飛躍の法則』(原題:Good to Great: Why Some Companies Make the Leap and Others Don't)ジェームス.C.コリンズ著(邦訳:日経BP社)
この本は、普通の成功を収めたあとで並外れた成功への変革の時期を経験した一連の企業について調べている。コリンズは数多くのファクターを用いて、そうした企業の変遷を評価した。それらのひとつひとつを知るのは、とても興味深い。
この本では、ウォルグリーン、クローガー、キンバリークラークなどの偉大な企業から学んだ価値ある教訓が詳説されている。それらはいずれも定評のある公開企業であり、急速な成長を試みたスタートアップは含まれていない。それにはそれだけの理由があるのだ。
こんな人にお勧め 社史マニア、および博識な(または博学になりたい)起業家。
6.『チャレンジャー・セールス・モデル:成約に直結させる「指導」「適応」「支配」』(原題:The Challenger Sale)マシュー・ディクソン、ブレント・アダムソン共著(邦訳:海と月社)
コンサルタント会社CEB(コーポレート・エグゼクティブ・ボード)で営業部門のリーダーを務める2人の著者は、さまざまな性格の何千人という営業職を対象に大規模な研究を行った。
2人の著者は、営業の成功につながる可能性がもっとも高い、ひとつの人物像を特定した。それが「チャレンジャー型」の人物だ。全体としてはやや退屈な本だが、そのコンセプトには信じられないほどの価値があり、どんなビジネスにも簡単に応用できる。
この本は、自分が営業職としてはどのタイプかを知り(わたしは「関係指向型」らしい)、それぞれのタイプに固有の弱点を知るのに役立つ。この発見によって、わたし自身の営業能力は確かに改善された。
こんな人にお勧め 営業に関わる人。
7.『若返る人─50歳のまま、80歳、それ以上を迎える方法』(原題:Younger Next Year)クリス・クロウリー著(邦訳:エクスナレッジ)
ロースクール時代からの友人たちは、「年ごとに若返る」(Younger Next Year)というタイトルが、わたしの人としての成熟度を言い表しているとジョークを言う。だが、マジメな話、この本は80歳代になっても健康で幸せな人生を送るためのガイドだ。
想定されている読者層は50歳代、60歳代の人々で、わたし自身はまだその層には入らないが、その内容はきわめて有益なものだ。この本は、わたしの現在の健康や食事に関する選択を、長期的にもっとも良いと思われるものにしていくのに役立った。
ボーナスとして、30歳代でこの本を読んだわたしは、どうやら自分が長生きしそうだと安心することもできた。わたしのライフスタイルは、すでにこの本が推奨している事柄の多くを反映しているからだ。白ワインをやめられないことを別とすればだが──。
こんな人にお勧め 長く充実した人生を送りたいと望んでいる人。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Entrepreneurs' Organization、翻訳:水書健司/ガリレオ、写真:RomoloTavani/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.