「渋谷から世界を熱狂させる」メンズファッション・ピッカー石川涼さん

2017/8/26
NewsPicksでご活躍中のピッカーさんをご紹介する連載、今回から数回に渡って「ファッション」をテーマにお届けします。
この連載では、すでにピッカーとして知られている方をご紹介することが多いですが、「たまには新しい人も紹介してほしい」とのコメントをいただきました。そこで今回は、今年からNewsPicksを使い始めた石川涼さんにご登場いただきます。

石川さんはメンズファッションブランドの「VANQUISH」「#FR2」を創設したクリエイターで、起業家でもあります。
ツイッターやアメブロ、LINEブログ、そしてインスタグラムを駆使し、国内のみならず海外でも、若い世代から支持されている石川さんの目に、NewsPicksはどう写っているのでしょうか?
そんな疑問を胸にオフィスにお邪魔し、ほかのSNSとの違い、NewsPicksの海外進出についてもアドバイスをいただいてきました。
「洋服屋がいない」からNPを始めた
──石川さんのコメントを初めてNewsPicksで発見したのは、2017年初頭でした。ファッション業界のピッカーさんはそう多くはないので、なぜご利用くださっているのかと意外でした。使い始めたきっかけは?
堀江貴文さん片桐孝憲さんに、「NewsPicksってサービスがあるんだよ」と教えてもらったんです。
試しに覗いてみたら、洋服屋さんっぽい人が少ないようだったので、会員登録しました。
もともと僕は、同業者とつるむのが苦手なんです。
業種や世代が異なる人に、自分の言葉が発信できたら面白いなと。
──石川さんはさまざまなSNSで発信されています。それらと使い比べてみて、NewsPicksにどんな違いを感じますか?
SNSは、我々のビジネスに大きな影響を及ぼす存在なので、それぞれどんなものか理解しようと、なるべく自分でも使うようにしています。
ツイッターやインスタグラムでは、若い世代のフォロワーが多いですね。
NewsPicksではまだ、僕のコメントが読まれているという実感はありませんが、僕よりも上の世代の“大人たち”とつながれそうだな、と。
──NewsPicksでコメントするときに、気をつけていることは。
コメント欄を読んでいると、カタカナや横文字が多めで、難しい言葉を使っている人が多い印象です。
でも、業界用語や専門用語を駆使して説明して、伝わるんだろうか。
自分の言葉が誰に届くのか、探りながらやっているので、僕自身はなるべく分かりやすい言葉を使うようにしています。
それから、なるべく本音を書こうと思っています。
NewsPicksに集まっている、人生経験を重ねてこられたビジネスパーソンに、「そんな本音、言っちゃっていいの?」と面白がってもらえたら嬉しいですね。
石川 涼 (いしかわ りょう)
デザイナー・起業家。24歳でアパレルブランドを立ち上げ、「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」をはじめ、10代・20代の男性に人気のブランドを手がける。株式会社せーの代表取締役。
売るところまでがクリエイティブ
──そもそも、20代前半からファッションのお仕事を?
高校時代に地元の静岡で、販売員のアルバイトをしたのが始まりです。
「話の面白い奴がいる」って、わりと人気があったんですよ(笑)。
どうせなら東京でやってみようかと、20歳のときに上京しました。
アパレルの会社に就職して、企画生産・営業の仕事を4年ほど経験し、24歳のときに独立して、今年で18年になります。
──2004年に立ち上げられたブランド「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」で一躍有名になられました。
独立当初は、他社ブランドの商品を製造する、いわゆるOEMをやっていました。
不景気になって、クライアントの売上が落ち込むと、下請けには仕事が来なくなります。クライアントに左右されない、事業の柱を作らないとまずいぞ、と思って立ち上げたのが、ヴァンキッシュでした。
──若い世代に絶大な人気を誇るブランドに育ったわけですが、ほかと何が違ったのでしょうか。
自分のブランドを立ち上げるとき、僕は「絶対に売れなきゃ嫌だ」と思ったんです。
皆さんからすれば当たり前のことかもしれませんが、この発想って、ファッション業界では珍しいんです。
20世紀の洋服屋って、カッコつけてる人が多かったんですよ。
むしろ、大量に売れることを“ダサい”と捉える風潮があって。
でも、僕はずっと、カッコつけてて売れないほうがダサいし、「売るところまでがクリエイティブだ」と言い続けてきました。
──具体的には、どんなことをなさったんですか?
当時は、いわゆるギャル男がブームで、彼らが買い物する店に行って観察したり、そのコミュニティにいる男の子たちと話したり、中に入り込んで研究しました。
そこで分かったのは「彼らのために作られた服がない」ということ。
たとえば、彼らが好むデザインのスーツを買おうとすると、20万円払ってアルマーニを買うしか選択肢がなかった。
シャープなデザインで、かつ安価なスーツを作れば売れるのではないか。
彼らの間で流行していた、海外のブランドロゴの付いたアンダーウェアだって、日本でちゃんとオシャレな男性用下着として作れば売れるに違いない。
そんな仮説を立てて商品を作ったところ、1年目からドーンと売れました。
立ち上げからほどなくして、渋谷109メンズから出店のお誘いをいただいたのも、実績があったからです。
VANQUISHのスカジャン。渋谷生まれのブランドとして、「SHIBUYA」の文字やハチ公をモチーフにした刺繍入りで、海外にもファンが多い。
「アパレルの終わり」を予感し世界へ
──ヴァンキッシュを成功させた10年前と比べてみて、今は何が変わりましたか?
一言で言うと、ネットの力が強くなりましたね。
ヴァンキッシュを作ったときは、雑誌がまだ影響力のある時代だったんです。
コミュニティから支持され、読まれている雑誌で、「このブランドがカッコいいんだよ」と紹介されれば、彼らに知ってもらうことができた。
つまり、何が「カッコいい」か、読者を誘導することができたんです。
今はもう、その手は通用しません。
簡単に見破られ、興ざめされてしまう時代です。
──変化の中でも売れ続けるために、取り組んでいることは。
2010年から、海外戦略に本腰を入れています。
まず、ヴァンキッシュを「東京コレクション」に出してみました。
当時の東京コレクションは、“パリコレの日本版”のような敷居の高いイメージ。僕らのようなブランドが登場するのは、異例だったんですよ。
その狙いは、海外との取引を増やすことです。
世界的に服が売れなくなるとしても、「隣の人と同じものを着たくない」という理由で服にお金をかける人が数パーセントはいるだろう、とも思いました。
つまり、売上を伸ばすためには、日本だけではなく、海外にも目を向けて、世界中の数パーセントを取りに行くしかない。
1億人から75億人を相手にするビジネスに、切り替えればいいんです。
また、うちのブランドでは、アジアや米国、ヨーロッパにも卸先がありますが、自分たちから海外に出ていかなくても、売れる方法があります。
訪日外国人が5年連続で過去最高を更新していて、今年は3000万人を超えるのではないかと言われています。
おそらく、ネットを通じて日本に興味を持ってくれる人は増えている。
言葉に頼らない、本質的に価値のあるビジネスができれば、世界のどこでも展開できる。そう捉えることだってできるんです。
──石川さんのブランドは、香港やタイ、そして中国から、米国、ヨーロッパにも展開されています。
NewsPicksも世界進出の第一歩として、米国版を作ることを発表しました。そんな我々に、海外で成功する秘訣を教えてください。
そうだなあ……(スマホでNewsPicksを操作しながら)。
NewsPicksは、もっとシンプルにしたほうがいいですよ。
画面がゴチャゴチャしすぎているし、用語も分かりにくい。
──サービスやブランドを磨くために、石川さんが最も力を入れるところは?
徹底的にユーザーを見ることですね。
僕は最近、渋谷でカレー屋を始めてみたのですが、時間があれば一日中お店の外に座って、お客さんを見ています。
店の前まで来て、看板を見て、入店する人もいれば他へ行ってしまう人もいる。
この差は何なのか、ひたすら見て、想像するんです。
「入っていった店には、ランチのセットメニューがあってサラダを付けているな」とか。「無料で大盛りを頼めるのか」とか。
こうした差を見て、打ち手を考えるんです。
そして俯瞰的にも把握するために、売上の推移といったデータも見ます。
看板やメニューも、毎日少しずつチューニングする。
世に出してみて、反応を見ながら、日々改善する。この繰り返しです。
写真でコミュニケーションする世界
──2015年には「#FR2」というブランドを立ち上げられました。
「ウサギのカメラマン・#FR2が着る服のブランド」という設定になっています。これはいったい、どんな狙いが?
2010年にFacebook、そしてインスタグラムと、みんなが写真を投稿しているのを見て「写真中心にコミュニケーションする世界」が広がっていることに驚愕しました。
たとえ10万円のジャケットを着ていても、写真からだけでは、その質の良さが識別しにくいですよね。
SNSがコミュニケーションの中心になる時代では、10万のジャケットを買わずに1万円のものを買い、残った9万円で旅行したり、おしゃれな店で食事したほうが、満足感が高いじゃないですか。
日本だけではなく世界的に、洋服屋さんが不要になる時代がきた、と危機感を持ちました。
アパレルはもう、何か用途と紐付いていないと、売れないんですよ。
キャンプに行くための服、ヨガをする服。
服とセットで、使い方を提案しないといけない。
ただ単に着る服だったら、ファストファッションで十分ですから。
なるべく多くの方に興味持ってもらうには、どんな使い方を提案すればいいか。
そう考えて、「写真だ」と思ったんです。
世界中の人が、毎日スマホで何十枚も写真を撮るようになる。彼らのための服として位置づけよう、と。
──「カメラマンのブランド」が生まれたんですね。
2010年からライカを使いはじめ、インスタグラムに写真を投稿しはじめました。
インスタグラムでは、本当に写真中心のコミュニケーションが成り立っている。言葉の壁を超えて投稿が広がるので、どこの国の人にも届けられます。
──原宿にある#FR2のショップで、店員さんから「来店者の8割近くが海外から訪ねてきている」と聞いて驚きました。
東京でもかなり外国人比率の高い店かもしれません。
広告費はまったくかけていません。皆さんインスタグラムを見て、うちの店を訪ねてくれます。
たとえば今日も、アジアの若手ラッパーが、#FR2のTシャツを着て撮った写真をアップしてくれていました。
今までで一番反響が大きかったのは、ファン・ビンビンですね。
中国のトップ女優で、彼女には1億人のフォロワーがいるんです。
そんな彼女が、空港でパパラッチされた写真で着ていたのが、うちのTシャツでした。
──彼らに使ってもらうために、意識したことは。
「この人に使ってもらうために何ができるか?」って発想は、本末転倒ですよ。
よく誤解されるんですが、僕のブランドで「うちの商品を着てください」ってお願いしたことは一度もないです。
誰に使ってもらうかは、着る人自身が決めること。お金払って無理やり着てもらっても、見破られますから。
そもそも自分たちの作るものを、いかに面白くできるか。
その試行錯誤に全力を注ぐべきなんじゃないかな。
──最後に、石川さんが今後チャレンジしたいことを教えてください。
何かを創造する過程が楽しいし、好きなんですよ。

作ったものが、みんなから愛されたり、「また面白いことやってるね」って言ってもらったり。
そもそも僕は、富士山の麓にある田舎町から出てきて、何も持っていなかった。
だから失うことは怖くないです。
そして今は、僕たちがつくったものに熱狂してくれる人が、世界中にいる。
やっぱりそこに、夢があります。
服作ることしかやってきてないし、市況は悪くなっていくでしょうけど、もう少しここで僕は、戦えるんじゃないかと思ってます。