(Bloomberg) -- みずほ銀行は国公立大学の学生寮を投資対象とするファンドの設立を計画している。日本政府が留学生の受け入れ増加を目標に掲げる中、学生寮の整備拡大が欠かせず、投資対象として期待できるという。不動産投資で新たな市場拡大につながる可能性がある。

みずほ銀行の不動産ファイナンス営業部の高田修次長は、国公立大学の学生寮整備のためのファンドについて「2020年3月期までに100億円の出資金を集めたい」とし、ローンも合わせ「200億円程度を学生寮整備で運用を目指す」と述べた。出資のうちみずほ銀行が15%出し、残りは丸紅、東京建物と共同出資する方向で計画を進めている。既に国立大学約50校に提案、10校程度と具体的に話を進めているという。

同ファンドは大学から土地を借りて建物を建設。大学は地代を得る一方、ファンドから学生寮を一括で借りて学生に転貸する仕組み。運営は管理会社に委託する。ファンドは大学から賃料収入を得ることができ、運用リターンは「5%以上を考えている」という。みずほフィナンシャルグループの資料によると、17年度第1四半期の国内預貸金利回差は0.87%にとどまっている。

日本学生支援機構の調べでは、日本への外国人留学生数は約24万人(16年5月現在)と、前年比15%増加した。このうち留学生用宿舎の入居者数は約5万人弱にとどまっている。政府は30年をめどに30万人の留学生受け入れを目指しており、宿舎整備が急務になっている。

高田氏は、「国内の学生数は右肩下がりは間違いない。学生数を維持しようとしたら留学生を呼んでくるしかないということになるだろう」と述べ、学生寮市場は拡大するとの見方を示した。同ファンドを活用すれば、大学としては費用負担なしに学生寮が整備可能なうえ、学生が支払う家賃も月3万-8万円台と比較的安く設定できるという。

公的不動産の有効活用

みずほ銀が国公立大学に関わる投資を計画する背景には、地方創生の一環としての公的不動産の有効活用への取り組みがある。国交省の推計によると日本の不動産約2400兆円のうち国と地方公共団体の所有分は約570兆円で全体の24%を占める。4月には国立大学法人法が改正されて、大学は教育研究の向上に充てるため第三者に土地を貸し付けるなど資産の有効活用が可能となり、ファンド組成の追い風になっている。

このほかにも国の後押しで民間事業者と連携して、リート市場を通じた公的不動産の証券化も出てきた。東京都が老朽化した都営住宅の建て替えを三井不動産などの投資家と行い、一部を三井不の私募リートに売却した例がある。

高田次長は、今回のファンドについて「運用開始から5年程度で出口として私募または上場リートの組成を考えている」と述べた。世界的な低金利環境を背景に海外のソブリンウェルスファンドや国内私立大学などから出資の関心もあり、「場合によってはいくつかのファンドを作るというのもある」と述べた。

海外企業も日本の学生寮ビジネスに関心を持っており、米スターアジアグループと不動産投資事業会社のGSAは、都内の文京区で学生寮の開発に着手している。

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