世界で大人気。ピコ太郎に日本人が学べること

2017/8/14

日本のどのセレブよりすごい

今から1年前の2016年8月25日、1本の動画がYouTubeに投稿された。
その1分の動画は、またたくまに世界に広がり、未曽有の大ブレイク。日本発の曲として多くの新記録を打ち立てた。
曲名は「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」。歌い手は、千葉県出身のシンガー・ソングライター、ピコ太郎。そして、そのピコ太郎をプロデュースしたのが、お笑い芸人の古坂大魔王である。
PPAPの公開から1年が経っても、その人気は衰えることを知らない。とくに海外での人気がすさまじい。
今年(2017年)6月3日には、サッカーのUEFAチャンピオンズリーグ決勝のスペシャルゲストとして、ウェールズのカーディフに登場。現地では、サインや写真を求めるファンが殺到した。
現場に同行した、UEFAマーケティング代理店「TEAMマーケティング」の岡部恭英氏はこう語る。
「欧州で働いていて強く感じるのですが、ピコ太郎の海外での人気が、日本ではあんまり理解されていません。ピコ太郎は、アジアでも、アメリカでもヨーロッパでも、街を歩くと、セルフィーだの、撮影だの、サインだので、歩けないくらいの人だかりができるんです。うちの子どもたちが学校の友達を連れてくると、みんな知っていますよ。ピコ太郎か、シャキーラかというぐらいの人気なんです」
その人気にあやかるのは、エンタメ・スポーツ業界だけではない。
7月17日の夜には、ついに国連デビュー。国連で行われた日本政府主催の「レセプションパーティー」に登場し、「PPAP」の新バージョン「SDGs」を披露した。
SDGsとは、国連の持続可能な開発目標の略。この一般にはわかりにくいテーマを、PPAPのリズムに乗せて、ポップに表現した。
もはや単なる「一発屋」とは言えない。「一発屋」どころか、ピコ太郎の影響力は今なお世界に広がり続けている。
では、なぜPPAPはこれほど世界でウケたのだろうか?
なぜピコ太郎は、これほど世界で愛されるのだろうか?
日本のビジネスパーソンはピコ太郎から何を学べるのだろうか?
NewsPicksは7月15日に、ピコ太郎のプロデューサーである古坂大魔王をゲストに招いてイベントを開催。前出の岡部氏がインタビュアーを務めて、「ピコ太郎が世界で愛される秘密」に迫った。

大ヒットの裏に「緻密な計算」

本特集では、全7回の記事を通して、ピコ太郎の大人気が決してまぐれ当たりではないことを解明。その裏には緻密な計算、徹底的な努力、溢れんばかりの愛があることを示していく。
第1回では、PPAPの誕生秘話を公開。
PPAPを生み出した「異ジャンルの融合」、PPAPで活かされている「お笑いの技術」、尺が1分である理由などを語る。
第2回は、なぜPPAPが世界で大ウケしたのか、を自己分析してもらう。
見た目、音、タイミング。そのすべてにいかにこだわっているか。古坂流のピコ太郎プロデュース術を解説する。
第3回は、マーケティングについてだ。
PPAPの成功は、SNSなくしてあり得ない。なぜYouTubeから始まった1本のショートビデオが、すさまじいスピードで世界に広がったのか。その裏にあったSNS戦略を語る。
第4回は、「海外で実力を発揮する方法」についてだ。
日本人は海外に出ると、日本と同じような実力を発揮できない傾向がある。それなのに、ピコ太郎はなぜ物おじせずに、海外でも大活躍できているのか。その秘密に迫る。
第5回のテーマは、「愛の大切さ」だ。
かつては「愛、愛と言うのは気持ち悪いみたいに感じていました」と言う古坂氏が、「やっぱり愛」と思うようになったのはなぜか。暴れん坊の母の思い出を引き合いに出しながら、愛について語る。
第6回は、イベント会場で出会った「16歳の天才少年」に、古坂氏がアドバイスを送る。
「とにかく、まずはなめ腐れ」と勧める理由とは? 後半では、SNSとの付き合い方についても指南する。
第7回のテーマは、ピコ太郎の次の一手だ。
「ピコ太郎で起きたようなことを、現象からシステムに変える」ために、何をもくろんでいるのか。「とにかくウケたい」「僕がやるのはあくまでゼロイチ」と言う古坂氏が、ピコ太郎の「次なる挑戦」を明かす。
(写真撮影:鈴木大喜、デザイン:星野美緒)