[25日 ロイター] - トランプ米大統領が、セッションズ司法長官を解任するとの観測が広がっている。米大統領選干渉疑惑「ロシアゲート」捜査へのセッションズ氏の対応に不満を募らせ、批判を浴びせているからだ。

ただ、もしこうした批判の先にトランプ氏の最終的な目的としてロシアゲートを捜査するモラー特別検察官を退任に追い込むことがあり、それを実行しようとするならば、政治的にも法的にも大きな論争を巻き起こす、と一部政治家や法律専門家は警告している。

無所属のアンガス・キング上院議員は25日のCNNテレビで、トランプ氏が特にモラー特別検察官の捜査に打撃を与える狙いでセッションズ氏を忠誠心の高い別の人物とすげ替えようとしても、上院はそれを許さないだろうと語った。

トランプ氏は記者会見でセッションズ氏の去就について質問されると「時間がたてば分かる」と意味深な発言を行った。これに先立ちツイッターでは、セッションズ氏を「弱い」「くよくよしている」などと表現していた。

しかし、上院共和党トップのマコネル院内総務は25日、セッションズ氏が「立派に職務を果たしている」と擁護。同党のシェルビー上院議員も、セッションズ氏は大統領の弁護士ではなく、米国の司法長官だと強調した。

こうした状況下で、トランプ氏が今後、司法長官更迭や「モラー降ろし」の挙に出ようとした場合に起きるさまざまな問題について以下にまとめた。

◎モラー氏を解任できる根拠は

司法省の規則では、特別検察官を解任できるのは「不正行為、職務放棄、無能、利益相反および解任に相当するだけの事由」がある場合に限られている。

◎捜査を「魔女狩り」とするトランプ氏の主張はモラー氏解任の相当な事由に該当するか。

おそらくはそうならない。これまでこうした文脈で相当な事由の解釈を示した裁判所の判例はゼロだ。モラー氏の評価は高く、権限逸脱の気配もない、とオバマ前政権で大統領法律顧問を務めたサバンナ・ロースクールのアンドルー・ライト教授は話している。

ライト氏によると、モラー氏の捜査チームのメンバーが大統領選挙で民主党に献金していたことも利益相反には当たらないという。

◎トランプ氏はモラー氏を直接解任できるか。

ほとんど不可能だろう。司法省のルールでは特別検察官を解任できるのは、司法長官か司法長官代行のみ。セッションズ氏はロシアゲート捜査に関与しないと表明しているため、モラー氏の任命権者となったローゼンスタイン司法副長官だけが、モラー氏を辞めさせる権限も有する。

ただ何人かの憲法専門家は、トランプ氏が法的にモラー氏を直接解任できるかもしれないとの見方を示した。バージニア・ロースクールのサイクリシュナ・パラカシュ氏は、こうした特別検察官人事の規則が、憲法で定められた行政機関幹部に対する大統領の任免権を侵害するとの解釈も可能だとみている。

◎トランプ氏がセッションズ氏を解任するかセッションズ氏が自主的に辞任した場合、モラー氏の首切りに動いてくれるような新長官をお手盛りで起用できるか。

通常は、大統領が司法長官を指名した後、上院の承認を受ける必要がある。上院は、新長官候補がモラー氏を解任する意図があるかどうかを承認公聴会で問い詰める公算が大きい、とパラカシュ氏は予想する。

同氏は「上院は候補者にホワイトハウスから独立した立場を取ると約束させたがるだろう」と述べた。

◎トランプ氏がこのほかにモラー氏を解任してくれそうな司法長官を指名する方法は。

トランプ氏は、1998年に制定された連邦政府職員の空席補充に関する改正法に基づき、暫定的な司法長官を選ぶことはできるが、対象は以前に上院の承認を得ている人物に限られる。この法律は、職員の死亡や辞任、その他の職務遂行が不能になったことで生じた空席を埋めるためだけに使われる。

コーネル・ロースクールのジョシュ・シャフェッツ教授(憲法学)は、トランプ氏がこの法律を根拠にセッションズ氏を更迭しようとすれば、裁判所が行き過ぎた法の適用と判断するかもしれないと話した。

◎上院休会中の司法長官交代は。

トランプ氏は、8月11日からの上院の夏季休会中にセッションズ氏を更迭する可能性がある。テキサス法科大学院のスティーブン・ブラデック教授(憲法学)は、大統領にはそうした権限が認められていると説明している。

2014年の最高裁判決では、休会期間が10日未満の場合、大統領は独断人事ができない。そして、上院の日程を決めるのは多数派の与党・共和党だ。上院民主党トップのシューマー院内総務は25日、休会中の司法長官交代人事を阻止するためあらゆる手段を尽くすと表明した。

◎モラー氏が解任された場合、同氏は法廷に異議を申し立てられるか。

はっきりしない。ブラデック氏によると、特別検察官に関する規則にはこの問題に対応する項目が存在しないからだ。