[ニューヨーク 21日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、ドル指数が約1年ぶりの水準に低下した。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が前日、ユーロ高について懸念を表明しなかったことに加え、トランプ米政権の政策運営に対する懸念が払しょくされていないことが重しとなった。

主要6通貨に対するドル指数<.DXY>は一時93.854と、昨年6月以来の水準に低下。終盤の取引では約0.5%低下の93.885となっている。

ユーロ/ドル<EUR=>は一時1.1682ドルと、約2年ぶりの高値を更新。終盤の取引では0.4%高の1.1674ドル。ドル/円<JPY=>は一時111.02円と、約4週間ぶりの安値を付けた。

ドラギ総裁は前日、金融情勢はおおむね支援的であるとの認識を表明。ユーロの上昇は「一定の注目を集めた」としながらも、ユーロ高は問題であるとの認識を示すことはなく、直接的な口先介入もなかった。

ドラギ総裁がユーロ高に懸念を示さなかったことで、市場ではECBは年内にテーパリング(緩和措置の段階的な縮小)に着手する軌道から外れていないとの観測が拡大。オアンダ(トロント)の首席外為ストラテジスト、ディーン・ポップルウェル氏は、「ドラギ総裁がユーロ高に対して踏み込んだ発言をしなかったことは、ユーロ買いを進めたい投資家に対するゴーサインとなった」としている。

ユーロは週初からは対ドルで1.8%の上昇となる見込み。上昇は2週間連続となる。ドル指数は週初から1.3%低下の見通し。低下は2週間連続。

このほか、トランプ米大統領とロシアとの不透明な関係を巡る疑惑の捜査でトランプ政権が進める景気浮揚策の実施が阻害されるとの懸念がドルの重しになっている。

クレディ・スイス(ニューヨーク)の外為ストラテジスト、アルバイス・マリノ氏は、「議会上院が医療保険制度改革(オバマケア)見直しで身動きがとれない状況となるなかで、トランプ氏とロシアとの癒着を巡る疑惑の捜査が同氏の事業にも及んでいることがドル相場を一段と押し下げる要因になっている」と述べた。

この日はドルは対スイスフラン<CHF=>でも下落し、0.9440フランと、約1年ぶりの安値を付けた。

(表はロイターデータに基づいています)