エンターテインメントの世界で普及するAR、今後の展開は

2017/7/13
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
13日は、アクセンチュアの小林啓倫さんが出演。「ポケモンGO配信1年、ARゲームは伸び悩み」(The Wall Street Journal)を題材に、今後のAR市場について解説しました。

ARゲームは伸び悩む

サッシャ 今日は、「ポケモンGO配信1年、ARゲームは伸び悩み」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の小林啓倫さんです。
小林さんは、アクセンチュア勤務で、テクノロジーが社会に与える影響などについて執筆や講演活動を行っています。おはようございます。
小林 おはようございます。
サッシャ そうか、ポケモンGOの発表から1年か。今も僕の周りでやっている人はいますけれど、ARゲームは伸び悩んでいるんでしょうか?
小林 そうですね。ピックした記事は「ポケモンGOに続くARゲームが出てきていない」と指摘しています。
理由としては、ARゲームと言いながら、ARがあまり活用されていないこともあります。例えば、ポケモンGOでもARをオフにして遊ぶ方もいますよね。
また、ポケモンGOに見られるように、キャラクターのブランドの強さに依存しているために、「後が続かなくて当然だよね」としています。
さらに、ARのプラットフォーム、要はグーグルやアップルといった会社から、ARをつくりやすくする“部品”のようなものが発表されてくるので、今後はもっと別の新しいものが出てくるのではないかとされています。

アップルによる「ARKit」

サッシャ 先日、アップルがWWDC(The Apple Worldwide Developers Conference)で、今秋にアップデートするiOS11では、ARをかなり充実させると発表していますよね。
小林 まさにその話ですね。「ARKit」と呼ばれるもので、会社向けにしか公開されていないのですけれど、ARプラットフォームという形で、部品が提供されると考えていただければいいかと思います。
サッシャ ものすごく平たく言うと、ARを使ったアプリがつくりやすくなる、ということですよね。
例えば、壁に窓があって、それ用のカーテンをつくりたい。そのとき、スマホで窓を写して、その部分を指でなぞると長さが分かる。簡単に言うと、そんな機能が最初からスマホに組み込まれていると。
小林 ARの場合はVRと違って、現実とCGなどをかけ合わせなければいけないので、「現実を把握する必要」があるわけですね。
そのとき、目の前にテーブルがあるとか、壁があることを把握することは非常に難しいので、アップルがそれを可能にしてくれる部品を提供してくれると、アプリをつくる会社はそこをやらずに済んで、その先を考えられます。
それこそ、ゲームの製作もしやすくなるわけです。

ゲーム以外の展開は

サッシャ ARは拡張現実と言って、現実に対してさらにモノを足すイメージですよね。ゲーム以外では、どんな使われ方をしていますか?
小林 ARを使ったエンターテインメントという意味では、アプリの「SNOW」があります。顔を加工してくれるものです。
寺岡 あっ、写真や動画に耳とかをつけてくれるアプリですね。
小林 そうです。あれも目の前にある顔を認識して、目の位置で目を拡大したり、頭の位置に耳をつけたりしてくれています。
現実を把握してCGを足している意味で、まさにARですね。非常に面白いアプリで若い人たちが使っていて、私の娘も使っています(笑)。
サッシャ みんな使っていますよね。インスタグラムでも、SNOWのような機能が出ています。
小林 その意味では、ARはエンターテインメントの世界で普及しています。
例えば、フェイスブックの機能にも組み込まれているんですけれども、それは別の会社が開発したものです。
サッシャ 「MSQRD」ですね。そして、フェイスブックの傘下にあるのがインスタグラムなので、フェイスブックに導入されているものは、インスタグラムにも導入されることになると。
こうしたものが、一番身近な遊びの分野で使われているわけですね。
僕がたまに使うものとしては、「Google翻訳」。スマートフォンのカメラで映したテキストを認識して翻訳してくれる機能があります。
今後、ARの分野はどうなっていくのでしょうか?

市場規模は約3000億円に

小林 例えば、IKEAは自分の部屋に家具を表示させて、レイアウトを確認できるアプリを出しています。これは半分広告やマーケティングのような活動ですね。
そうしたものも含めると、どんどん市場が広がるのではないかと思います。
また、先ほどお話しされた翻訳のほか、教育分野なども可能性があると思います。
サッシャ なるほど。ARを使うことで、生活にどんでん返しが起こるようなことって、十分あり得るんですか?
小林 まさに、翻訳機能などは、ドラえもんのようなアニメの世界ですよね。
まだスマホを掲げるというアクションは必要ですけれど、眼鏡みたいなものに組み込まれれば、それをかけるとすべての英語を日本語に翻訳してくれる世界になります。
日本人が海外に行った時に語学ができなくても、現地の言葉がすべて日本語に表示される世界が実現してもおかしくないですね。
寺岡 私はカーナビについてほしいですね。右に曲がるか、左に曲がるかを間違えちゃうんですよ。「ここの信号を曲がる」と画面の中で分かれば、間違えないじゃないですか(笑)。
小林 まさに、車のフロントガラスに道を表示させるシステムが開発されています。カーナビではなくてフロントガラス上で指示が出ることが、当たり前になる世界が実現するかもしれないですね。
サッシャ 実際、高級車にはもうありますよね。
寺岡 あっ、そうなんですね。
サッシャ カーナビや速度計が表示されていて指示が出るんです。これが、どんどん一般車にもどんどん導入されていくでしょうね。
小林 普及していくと思います。
ちなみに、今AR関連の市場って、どのくらいなんでしょうか。ポケモンGOフィーバー辺りから伸びているんでしょうか?
小林 そうですね。来年の2018年には2820億円になるんじゃないかとされています。
日本国内における家庭用ゲームのハードとソフトを足した市場規模が約3000億円なので、来年には家庭用ゲーム市場と肩を並べるくらいになると予想されています。
サッシャ なるほど。どんどんARが私たちの生活に身近になっていくんですね。小林さん、どうもありがとうございました。
小林 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした小林さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
来週18日(火)は文春オンライン編集長の竹田直弘さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください