(Bloomberg) -- 英バークレイズが日本拠点を再構築、投資銀行とマーケット業務で人員を増強することが分かった。120人の削減を伴った日本株の撤退から1年、体制強化で収益拡大を図る。

バークレイズ証券の木曽健太郎社長はブルームバーグ・ニュースの取材に応じ、企業の合併・買収(M&A)の助言業務を行うバンカーや金融商品を販売するセールスなど、10人強を今年度中に採用する考えを明らかにした。

これまで日本拠点を統括してきた中居英治氏は昨年6月に最高経営責任者(CEO)を退任。木曽氏は7月に社長に就任して以降、現物株業務からの撤退で減少したトップラインの増強のため、日本拠点の再構築に取り組んでいる。日本企業の積極的な海外での買収や、マイナス金利環境下でメガバンクなどが金融商品取引を活発に行っていることから、人員を増強しビジネスの獲得に努める。

木曽社長(50)は「バンキングでいい人をそろえようとしている最中」だとし、「金融機関によるアセットマネジメントやリース会社などを海外で買収する動きが旺盛」で、「着実に収益が出る」とM&A業務についての見通しを示した。今後2-3年かけて強化していくという。同氏がメディアのインタビューで話すのは代表就任以降初めて。

バークレイズ東京では現在35人のバンカーらが投資銀行業務に携わっている。木曽社長によれば、M&Aや金融法人(FIG)を担当するバンカーを5人程度増やす考えだ。また、メガバンクや大手地銀、ヘッジファンド向けにデリバティブなどを販売するセールスを5-7人程度起用するという。

オフィススペースも縮小

バークレイズは、昨年日本株業務から撤退。東京ではエクイティリサーチ、セールス、トレーディング業務に従事していた120人が6月までに退社した。同社の日本での人員数は過去2年間で約160人減少し、3月末で429人となっている。

バークレイズ証が金融庁に提出した資料によれば、2017年3月期の純損益は87億円の赤字で、過去3年間で最大となった。営業収益は18%減の394億円だった。六本木ヒルズの森タワーに入居しているバークレイズ証は一部賃貸契約を解除し、コスト削減に努めていた。

ブルームバーグ・データによれば、16年度の日本企業によるM&Aの助言ランキングでは、バークレイズは14位と、多くの国内銀行や外資系証券の後塵を拝している。アサヒグループホールディングスによる東欧5カ国のビール事業買収でアドバイザーを務めた。

ターニングポイント

バークレイズでは日本株からの撤退以降、人員増強に乗り出し30人以上が新たに入社している。10月には金融法人部長にシティグループでM&Aグループ責任者を勤めた井上健氏を、12月にはラザードからM&Aアドバイザリー部長として大塚雄三氏を起用した。

木曽氏は1989年に東京大学経済学部を卒業後、JPモルガンに入社。04年にバークレイズに移籍、約8年間にわたり欧州の中央銀行など公的セクターの資金調達とアドバイザリー業務に携わった。12年にユーロウィーク誌の「債券資本市場に最も影響を与えた25人」に選出された。

「人が足りないのは間違いない」という木曽社長。開示資料によれば、バークレイズ証の従業員数は3年間で約3割減少している。JPモルガンとバークレイズで投資銀行とマーケット業務両方の経験を持つ同氏はこう続けた。「いいアップグレードのチャンスだ」ーー。

英語記事: Barclays Is on Hiring Spree in Japan After Cash Equity Exit (1)

(第10段落に略歴を追加しました.)

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