「キログラムの再定義」に役立つ新測定をアメリカ国立標準技術研究所が発表
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物質の質量はエネルギーであり、動いたり、重力場の影響で変動するのが相対性理論の帰結。一方で、物質のエネルギーは振動数に比例し、その比例定数がプランク定数になるのが量子力学の帰結。キログラム原器は重力の影響を受けるし、地球は動いているので高い精度の測定では変動する。よって、物理学的には静止質量エネルギー(物質が静止している時の質量)を用いるのがリーズナブル。
キログラムの定義をより基本的な物理量で定義し直すという議論がされています。
キログラムは7つあるSI基本単位(長さ、電流、光度、時間、温度、物質量、質量)の中で、唯一人工物である国際キログラム原器(IPK)によって定義されている単位です。
この原器(白金90%、イリジウム10%の合金)は作成された1889年以来、表面吸着や洗浄によって重量が変化してしまっていることが分かっています。その変化量は、およそ1キロ辺り50マイクログラム、つまり1億分の5(5x10^-8)の相対誤差とされており、2011年にそれ以上の精度の定義に変更することが決まっていました。
候補に上がっているのが、プランク定数による定義とアボガドロ定数による定義の二つ。2013年の提案ではプランク定数が推されていましたが、2014年の第25回国際度量衡総会(CGPM)では精度が十分でないと結論は見送られ、2018年に再び諮られることになっています。
プランク定数による定義は、アインシュタインの関係式E=mc^2=hνより、周波数がνの光子のエネルギーと等価な質量として定義されるという、若干わかりにくい定義ではありますが、アボガドロ定数とプランク定数は、厳密に繋がっているので、どちらかが決まればどちらかが決まるという関係にあります。
アボガドロ定数による定義は、ロシアの遠心分離機で28Siが99.99%の同位体比濃縮されたシリコンを、ドイツIKZでFZ法で単結晶にされ、イタリアINRIMで格子定数が計測され、オーストラリアCSIROで球体状に研磨、それを日本のNMIJで直径測定し、さらに溶かして同位体希釈分析によってモル質量を測定するという、国際プロジェクトによって示されており、およそ10億分の24の誤差とされています。
この記事は、いわゆるワット天秤によるプランク定数の測定ですが、記事中にある「10億分の13」(さっきまで「13億分の1」と誤訳されていましたが、修正されましたね)は、十分な精度といえますが、論文を見ると、「6.626 069 934(89) × 10−34 J s」とあり、値自体はIAC(日本等)、NRC(カナダ)等の結果より若干小さい値となっています。精度もさることながら、この値のゆらぎについても検証が必要でしょう。国際的な単位である7つのSI基本単位は、ほとんど明確な物理量で定義されています。
たとえば長さの単位1mの定義は、「1/299,792,458秒の間に光が真空中を伝わる距離」となります。
現在、原器が用いられているSI基本単位は重さで使用されるキログラム原器のみのようです。
(空気中に放置すれば埃が付着してわずかに重くなるし、触れば摩擦で原子が落ちて軽くなるので、扱いは大変そうです)
今回は、キログラムはプランク定数で重さを定義する方法とのことですが、プランク定数hは
E=hν(E:光のエネルギー ν:振動数)
の式から定義される定数です。
アインシュタインの相対性理論では、
E=mc^2(m:質量 c:光の速さ)
となります。
この上記の2つの式で質量m以外は定数化できるので、プランク定数さえ定義化してしまえば計算可能となります。
2018年度の国際会議では、キログラム以外の他のSI基本単位についての変更が議論されており、例えば炭素1molの重さが12gではなくなる等、私たちが高校や大学で使用していた物理量の常識が色々変わりそうです。