[ソウル/東京 3日 ロイター] - 東芝<6502.T>半導体メモリー事業の入札で優先交渉先に選ばれた企業連合に対し、韓国半導体大手SKハイニックス<000660.KS>が転換社債(CB)を通じて資金拠出するスキームを提案していることわかった。

将来的に同事業にSKハイニックスが議決権を持つ内容を含むとみられ、東芝側の説明と食い違っている可能性がある。複数の関係者がロイターの取材で明らかにした。

関係者によると、東芝子会社「東芝メモリ」の買収スキームでSKハイニックスは、米投資ファンドのべインキャピタルに対してCB引き受けを通じて資金供与するという。

東芝は先月21日、「東芝メモリ」の売却で、政府系の産業革新機構、べインキャピタル、日本政策投資銀行による企業連合を優先交渉先に選んだと発表。併せて、SKハイニックスがべインに融資する立場で同連合に関与していると説明していた。

23日の記者会見で東芝の綱川智社長は「SKハイニックスには、企業連合の1つに融資することで議決権がない」と明言。議決権がないことを根拠に、SKハイニックスに技術流出する懸念はないとの見方を示した。

しかし、SKハイニックスが一定の条件で株式に転換可能な社債であるCBを引き受けるならば、将来的に東芝メモリの議決権を持つプランを含む可能性が濃厚だ。

別の関係者によると、今回の入札に関係した経済産業省は、SKハイニックスに対してCBでなく融資による資金拠出を求めたものの、SK側はそうした要請を受け入れなかったという。

革新機構などの企業連合が提示した買収額2兆円のうち、べインが8500億円を出資し、このうちSKハイニックスが約半分の4000億円を融資するという。関係者によるとCBの引き受けはこの融資と並行してスキームに盛り込まれている。

東芝側は、企業連合と6月末までの最終合意を目指していたが、7月入りした現在も実現していない。

革新機構の志賀俊之会長は先月30日、記者団に対し「企業連合には関係者が多く、横の調整に時間がかかっている」などと、最終合意に至っていない理由を語った。

関係者によると、SKハイニックスがべインに供与する融資が近い将来に株式に転換される見通しではないという。

東芝とSKハイニックスはフラッシュメモリー市場で競合。今回のスキームにSKハイニックスが議決権を持つ可能性があると各国の競争法上の審査で判断された場合は、審査期間が長期化し、東芝が必達目標にしている来年3月末までに売却が完了しない可能性も否定できない。

SKハイニックスがCBを通じて資金拠出する案について、同社はコメントを避けた。べインからはコメントを得られていない。東芝の広報担当者は、取引に関する特定の内容には答えられないとしている。

(Se Young Lee、浜田健太郎)